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仲直り…?
しおりを挟む憂鬱な朝だった。今まで生きてきた中で、間違いなく一番憂鬱な朝だった。
このベッドで一人で目覚めたのは初めてだなとぼんやり思う。昨夜と言っても数時間前の出来事をはっきりと覚えていた僕は、現実逃避をして布団の中に戻りたくなった。
昨日のパーティーの疲れ、カーティス様との再会と告白及び求婚、そして睡眠を邪魔され言えもしないことの強要を受けて苛立ちが抑えきれなかった。僕は冷静ではなかったのだ。
だから別れるなんてもちろん本意じゃない。何度傷付いても苦しくても「愛してるから別れない」と言える僕でいたかった。それなのに。
「はぁ…最悪だ…」
これで本当に僕たちは別れたことになったのだろうか。僕のたった一言で、僕たちの2年半はあっけなく終わったのだろうか。いや、そんなことはないはずだ。まだきちんとウォーレンと話し合っていない。
国の法律で決められていることを無視してでも頑なに僕と王子の会話内容を知りたがった理由も分からないし、寝ぼけている時ではなく頭が冴えている時にしっかり話をするべきだ。
それに、今までずっと我慢してきたことは遅かれ早かれいつか爆発することは分かっていた。ずっと逃げてきたが、そろそろきちんとウォーレンと向き合って問題を解決させるべきだろう。
うじうじ落ち込んでいられないと考え直した僕は、頬を叩いて勢いよくベッドから降りた。寝室を出てリビングへと向かう。
ウォーレンが起きている気配はずっとしていなかったが、そっと顔だけを覗かせてウォーレンが寝たであろうソファを見ると。
額に組んだ手を押しあて、項垂れているような体勢でソファに座るウォーレンの姿があった。
「ウォーレン!?」
その異様な雰囲気に慌てて彼のそばに近寄る。僕の声にビクリと肩を震わせた彼は、ゆっくりと顔を上げた。
本来の美しい新緑のような色の瞳が今はくすみ、虚ろな目の下にはうっすらと隈がある。その顔にまさか、と動揺しながら問いかけた。
「もしかして…あれから一睡もせずずっとこうしていたの?」
さらさらのシルバーブロンドが肩から一房滑り落ちるのを横目に聞くと、ウォーレンはぎこちなく頷く。そして普段は柔らかそうなのに今は見る影もなく少しひび割れた唇を開いた。
「ロナ……ロナはもう、俺のことが嫌い…?本当に俺と、別れたい…?」
彼は深呼吸するようにゆるやかに息を吐きながら、かすれた声で喋る。その深い息の底に吸い込まれてしまうのではないかと心配になるくらい、儚げな声だった。
不謹慎かもしれないが、このとき僕は確かに喜びを感じた。ウォーレンも僕と同じく、本気で別れたいとは思っていないんだと分かったから。
「ううん、全然思ってない。本気で言ったんじゃないよ。本当にごめんね」
「ロナッ…!」
僕の答えに虚ろだった表情が途端に安堵した表情へと変わる。そして勢いよく抱き締められ、僕も大きな背中に腕を回して力を込めた。
「よ、よかった!俺のほうこそしつこかったと反省している。本当にごめんね…!愛してるよ、ロナ…」
「うん、僕も愛してる。王子との会話は許可を取ったら必ず話すから、それまで待っててくれる?」
「もちろんだよ、いくらでも待つ!君を失うかもしれないと思ったらこれまで感じたことのない恐怖で押し潰されそうだった…」
「ソファで寝てなんて言って、ここで一人にさせてしまってごめんね。これからも同じベッドで一緒に寝よう」
「うんっ、うん…!」
彫刻のように美しいと言われているウォーレンも、弱々しく子供のように縋る時があるんだと新たな一面を知れて嬉しい反面、こんなに傷付けてしまったことに申し訳なさが募る。
しかしここまでダメージを受けたのなら、僕の一言も意味があったかなと思える。もうこれで、簡単に「別れる?」なんて聞かないだろう。
「俺から一生離れないで、ロナ」
「うん、離れないよ」
「好き、好きだ、大好き」
「僕も大好きだよ」
愛の言葉を交わしあって、仲直りのキスをする。そのままカーペットの上で睦み合いそうになるも、時計を見てそんな時間はないとお互い苦笑を浮かべた。
初めての別れの危機を乗り越え、カーティス様の求婚をどうやって断ろうか、もうあの苦しみからは解放されたのだから、と。
このときは、本気で、安堵していた。
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