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だったら別れる
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パタン、と後ろ手に扉の閉まる音を聞きながら誰もいない部屋の明かりをつける。
僕とは違って部屋で待っていてはくれない恋人は今ごろ誰とどんな風に過ごしているのやら。
考えるだけで息が詰まりそうになったため、思考を振り切ってさっさとお風呂に入ることにした。
寝る用意をすませ、ベッドに横になる。
いつもだったらウォーレンの帰りを起きて待っている僕だが、今日はいろんなことがあり疲れたし待ってくれない恋人を同じように待たなくてもいい気がして目を閉じた。
意識が沈む前に浮かんだ顔は、真剣な面持ちで僕を好きだと言ってくれたカーティス様の姿だった。
***
心地よい眠りの中にいたはずなのに、突然意識を急激に引き上げられる。すぐ耳の横で名前を呼ばれ、うるさいなと思いながら目をゆっくりと開けた。
身体を揺さぶられ光に眩む目をこらすと、眉間に皺を寄せて不機嫌そうな顔のウォーレンがいた。
「ロナ、ロナ起きて」
「ん…ウォーレン、帰ってたんだ。おかえり」
「…ただいま」
「僕はもう眠たいから…先に寝るよ。ウォーレンも早く着替えて寝な」
眠気には抗えず、再びベッドに身体を預けようとしたがそれを阻むウォーレンの手。痛いな、と寝ぼけながらもはっきりと感じた。
「なんで今日は先に寝てるの?いつも起きて待っていてくれるのに」
「…パーティーで疲れてるのにこんな時間まで起きて待ってろと?」
「それは……」
自分でも鬼畜なことを言っているとようやく自覚したのか、気まずそうに目をそらす。
あまりに自分勝手な恋人の言葉に嫌気が差して、思わず深いため息が溢れた。
「僕たちは身体が資本なんだから早く寝ないと仕事に支障が出るよ。だからおやすみ」
「待って!……門番から君がカーティス王子に馬でここまで送られてきたと聞いたけど…本当なの?」
寝ている僕をわざわざ起こしたのはこれを聞くためだったか、と察した。事実なので堂々と首を縦にふる。
「うん、そうだよ。ティスに送ってもらった」
「……ティス?」
「あ、カーティス様の愛称。子供の頃から2人のときはそうやって呼んでたから。でも不敬だったね、外では気を付けるよ」
いくら恋人とはいえ国の王子を愛称で呼んでいることがバレたのはまずかったかもしれない。
口を結んだウォーレンからじわじわと怒りの雰囲が滲み出ていた。
「へぇ~…そんなにカーティス王子と仲良かったんだ」
「これからは気を付けるから許して。僕はもう本当に眠いんだ、寝かせて」
「王子とはどんなこと話したの?どのくらい一緒にいた?」
「そんなこと聞いてどうするの?もう眠いって言ってるじゃん」
「答えて。答えるまで寝かせない」
「言えないよ。王族との会話内容は本人に許可を取ってからじゃないと他言無用だし」
「言えってば」
「言わないんじゃなくて言えないんだよ。それくらい分かるでしょ?」
「ここには俺たちしかいないんだから言って」
「言わない」
「言え」
「……」
「言わないなら別れるよ?」
そう言われたとき、僕の中でずっとはりつめていた何かがプツンと糸のように切れた。カッカとマグマのようなものが全身を駆け巡る。
毎回毎回「別れる」と簡単に口に出されるのはもう疲れた。僕が絶対に別れないって言うと思っているから何度も繰り返すのなら。
「だったら別れる」
そう答えるしか、ないじゃないか。
「え………」
「じゃ、そういうことで。僕はもう寝るから電気消して。あと今日はソファで寝てね。おやすみ」
取り返しのつかない絶望に陥ったとでも言うよな蒼ざめた顔のウォーレンを視界から遮るように、がばりと布団を頭まで被って僕はギュッと目を瞑った。
もう何も考えたくなかった。
僕とは違って部屋で待っていてはくれない恋人は今ごろ誰とどんな風に過ごしているのやら。
考えるだけで息が詰まりそうになったため、思考を振り切ってさっさとお風呂に入ることにした。
寝る用意をすませ、ベッドに横になる。
いつもだったらウォーレンの帰りを起きて待っている僕だが、今日はいろんなことがあり疲れたし待ってくれない恋人を同じように待たなくてもいい気がして目を閉じた。
意識が沈む前に浮かんだ顔は、真剣な面持ちで僕を好きだと言ってくれたカーティス様の姿だった。
***
心地よい眠りの中にいたはずなのに、突然意識を急激に引き上げられる。すぐ耳の横で名前を呼ばれ、うるさいなと思いながら目をゆっくりと開けた。
身体を揺さぶられ光に眩む目をこらすと、眉間に皺を寄せて不機嫌そうな顔のウォーレンがいた。
「ロナ、ロナ起きて」
「ん…ウォーレン、帰ってたんだ。おかえり」
「…ただいま」
「僕はもう眠たいから…先に寝るよ。ウォーレンも早く着替えて寝な」
眠気には抗えず、再びベッドに身体を預けようとしたがそれを阻むウォーレンの手。痛いな、と寝ぼけながらもはっきりと感じた。
「なんで今日は先に寝てるの?いつも起きて待っていてくれるのに」
「…パーティーで疲れてるのにこんな時間まで起きて待ってろと?」
「それは……」
自分でも鬼畜なことを言っているとようやく自覚したのか、気まずそうに目をそらす。
あまりに自分勝手な恋人の言葉に嫌気が差して、思わず深いため息が溢れた。
「僕たちは身体が資本なんだから早く寝ないと仕事に支障が出るよ。だからおやすみ」
「待って!……門番から君がカーティス王子に馬でここまで送られてきたと聞いたけど…本当なの?」
寝ている僕をわざわざ起こしたのはこれを聞くためだったか、と察した。事実なので堂々と首を縦にふる。
「うん、そうだよ。ティスに送ってもらった」
「……ティス?」
「あ、カーティス様の愛称。子供の頃から2人のときはそうやって呼んでたから。でも不敬だったね、外では気を付けるよ」
いくら恋人とはいえ国の王子を愛称で呼んでいることがバレたのはまずかったかもしれない。
口を結んだウォーレンからじわじわと怒りの雰囲が滲み出ていた。
「へぇ~…そんなにカーティス王子と仲良かったんだ」
「これからは気を付けるから許して。僕はもう本当に眠いんだ、寝かせて」
「王子とはどんなこと話したの?どのくらい一緒にいた?」
「そんなこと聞いてどうするの?もう眠いって言ってるじゃん」
「答えて。答えるまで寝かせない」
「言えないよ。王族との会話内容は本人に許可を取ってからじゃないと他言無用だし」
「言えってば」
「言わないんじゃなくて言えないんだよ。それくらい分かるでしょ?」
「ここには俺たちしかいないんだから言って」
「言わない」
「言え」
「……」
「言わないなら別れるよ?」
そう言われたとき、僕の中でずっとはりつめていた何かがプツンと糸のように切れた。カッカとマグマのようなものが全身を駆け巡る。
毎回毎回「別れる」と簡単に口に出されるのはもう疲れた。僕が絶対に別れないって言うと思っているから何度も繰り返すのなら。
「だったら別れる」
そう答えるしか、ないじゃないか。
「え………」
「じゃ、そういうことで。僕はもう寝るから電気消して。あと今日はソファで寝てね。おやすみ」
取り返しのつかない絶望に陥ったとでも言うよな蒼ざめた顔のウォーレンを視界から遮るように、がばりと布団を頭まで被って僕はギュッと目を瞑った。
もう何も考えたくなかった。
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