【完結】恋人から試し行動され続けるけど僕の愛は揺らがない。

u

文字の大きさ
8 / 37

だったら別れる

しおりを挟む
    パタン、と後ろ手に扉の閉まる音を聞きながら誰もいない部屋の明かりをつける。
    僕とは違って部屋で待っていてはくれない恋人は今ごろ誰とどんな風に過ごしているのやら。
    考えるだけで息が詰まりそうになったため、思考を振り切ってさっさとお風呂に入ることにした。

    寝る用意をすませ、ベッドに横になる。
    いつもだったらウォーレンの帰りを起きて待っている僕だが、今日はいろんなことがあり疲れたし待ってくれない恋人を同じように待たなくてもいい気がして目を閉じた。
    意識が沈む前に浮かんだ顔は、真剣な面持ちで僕を好きだと言ってくれたカーティス様の姿だった。

***

    心地よい眠りの中にいたはずなのに、突然意識を急激に引き上げられる。すぐ耳の横で名前を呼ばれ、うるさいなと思いながら目をゆっくりと開けた。
    身体を揺さぶられ光に眩む目をこらすと、眉間に皺を寄せて不機嫌そうな顔のウォーレンがいた。

「ロナ、ロナ起きて」
「ん…ウォーレン、帰ってたんだ。おかえり」
「…ただいま」
「僕はもう眠たいから…先に寝るよ。ウォーレンも早く着替えて寝な」

    眠気には抗えず、再びベッドに身体を預けようとしたがそれを阻むウォーレンの手。痛いな、と寝ぼけながらもはっきりと感じた。

「なんで今日は先に寝てるの?いつも起きて待っていてくれるのに」
「…パーティーで疲れてるのにこんな時間まで起きて待ってろと?」
「それは……」

    自分でも鬼畜なことを言っているとようやく自覚したのか、気まずそうに目をそらす。
    あまりに自分勝手な恋人の言葉に嫌気が差して、思わず深いため息が溢れた。

「僕たちは身体が資本なんだから早く寝ないと仕事に支障が出るよ。だからおやすみ」
「待って!……門番から君がカーティス王子に馬でここまで送られてきたと聞いたけど…本当なの?」

    寝ている僕をわざわざ起こしたのはこれを聞くためだったか、と察した。事実なので堂々と首を縦にふる。

「うん、そうだよ。ティスに送ってもらった」
「……ティス?」
「あ、カーティス様の愛称。子供の頃から2人のときはそうやって呼んでたから。でも不敬だったね、外では気を付けるよ」

    いくら恋人とはいえ国の王子を愛称で呼んでいることがバレたのはまずかったかもしれない。
    口を結んだウォーレンからじわじわと怒りの雰囲が滲み出ていた。

「へぇ~…そんなにカーティス王子と仲良かったんだ」
「これからは気を付けるから許して。僕はもう本当に眠いんだ、寝かせて」
「王子とはどんなこと話したの?どのくらい一緒にいた?」
「そんなこと聞いてどうするの?もう眠いって言ってるじゃん」
「答えて。答えるまで寝かせない」
「言えないよ。王族との会話内容は本人に許可を取ってからじゃないと他言無用だし」
「言えってば」
「言わないんじゃなくて言えないんだよ。それくらい分かるでしょ?」
「ここには俺たちしかいないんだから言って」
「言わない」
「言え」
「……」
「言わないなら別れるよ?」

    そう言われたとき、僕の中でずっとはりつめていた何かがプツンと糸のように切れた。カッカとマグマのようなものが全身を駆け巡る。
    毎回毎回「別れる」と簡単に口に出されるのはもう疲れた。僕が絶対に別れないって言うと思っているから何度も繰り返すのなら。
 
「だったら別れる」

    そう答えるしか、ないじゃないか。

「え………」
「じゃ、そういうことで。僕はもう寝るから電気消して。あと今日はソファで寝てね。おやすみ」

    取り返しのつかない絶望に陥ったとでも言うよな蒼ざめた顔のウォーレンを視界から遮るように、がばりと布団を頭まで被って僕はギュッと目を瞑った。

    もう何も考えたくなかった。


しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

婚約者変更で傲慢アルファの妃になりました

雨宮里玖
BL
公爵令息のハルは突然の婚約者変更を告げられ戸惑う。親同士の約束で、ハルは第一王子のオルフェウスと婚約していた。だがオルフェウスの病気が芳しくないため王太子が第二王子のゼインに変更となり、それに伴ってハルの婚約者も変更になったのだ。 昔は一緒に仲良く遊んだはずなのに、無愛想で冷たいゼインはハルのことを嫌っている。穏やかで優しいオルフェウスから、冷酷なゼインに婚約者が変わると聞いてハルは涙する。それでも家のために役に立ちたい、王太子妃としてゼインを一途に愛し、尽くしたいと運命を受け入れる覚悟をする。 婚礼式のときからハルに冷たく傲慢な態度のゼイン。ハルは負けじと王太子妃としての役割を果たすべくゼインに迫る。初夜のとき「抱いてください」とゼインに色仕掛けをするが「お前を抱く気はない」とゼインに一蹴されてしまう——。

昔「結婚しよう」と言ってくれた幼馴染は今日、僕以外の人と結婚する

子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき 「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。 そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。 背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。 結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。 「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」 誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。 叶わない恋だってわかってる。 それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。 君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

彼は罰ゲームでおれと付き合った

和泉奏
BL
「全部嘘だったなんて、知りたくなかった」

初夜の翌朝失踪する受けの話

春野ひより
BL
家の事情で8歳年上の男と結婚することになった直巳。婚約者の恵はカッコいいうえに優しくて直巳は彼に恋をしている。けれど彼には別に好きな人がいて…? タイトル通り初夜の翌朝攻めの前から姿を消して、案の定攻めに連れ戻される話。 歳上穏やか執着攻め×頑固な健気受け

処理中です...