PLAY LIFE -無責任な俺の異世界進化論-

有河弐電

文字の大きさ
34 / 51

Translation mystery

しおりを挟む

 陽が昇った後、俺とスーリは井戸のところにいた。ヒビを直そうと試行錯誤してる俺。ポットが直せたんだ。これだって直せるはず。

 周りをうろちょろするスーリが邪魔でしょうがない。ベッドに潜り込んでくるのもそうだが、何故かいつも俺の近くにいようとする。

「てかさぁ。お前、俺のベッドに入ってくるのやめろよ」

「なんでだ?」

 スーリが首をかしげる。

「なんでもクソも、普通は他人と一緒に寝ないんだよ」

「スーリとアベルは他人じゃない。契約した」

「他人だ他人。真っ赤な他人!」

「他人じゃない!赤くない!」

「もーうるさいお前。あっち行ってろ」

 手をひらひらさせて追い払おうとしたら、逆に俺の手元を覗き込んでくる。

「何してるんだ」

「この井戸直そうとしてんだよ。俺が割っちゃったから」

 覗き込むスーリを押しのける。

 ヒビ自体を修復するのは、ポットを直した感じですぐ出来たんだ。でも、その部分だけなんか新しく見えるっていうか、違和感がある。

 ペンキを一部塗りなおした感じだ。どうにかして元通りにしたい。

「スーリがやる」

「やらんでいい。俺の魔法の修行のためでもあるし」

「修行ってなんだ」

「修行ってのはぁ。能力を伸ばすための行動だ」

「能力を伸ばすとどうなる?」

「強くなったり賢くなったり、まぁ色々すごくなるんだよ」

「なる!すごくなるからスーリがやるぞ!」

 ああ、逆効果だった。俺にしがみついて邪魔してくる幼女。はたから見れば微笑ましいかもしれないが、こいつは怪力です。あばらにダメージ来る。

「だーーー!お前は既に、すげー強いんだろ!修行しなくていい!」

「もっと強くなるんだ!」

「お前もう魔法めっちゃ使えるんだろ!?」

「二つ足が使うような魔法は知らない」

そうそう。スーリが言う"二つ足"ってのは人間のことらしい。まぁ見たままよな。

「それって違うのか?」

 魔法の知識なら気になるから聞いてみる。

「アベルはほんとに何も知らない赤ちゃんだな」

「はいはい。赤ちゃんでいいから、教えろよ」

 小生意気なスライムだとしても、少なくとも俺より魔法知識があるから、教わることはやぶさかじゃない。

「精霊も、二つ足も、獣も、スーリ達も自分たちの魔法がある」

「ほうほう。どう違う?」

 イヴも言ってたな。人以外が使う魔法のこと。

「みんな生きる方法が違う。だから魔法も違う」

 相変わらず要領を得ないスーリの話。なんとなくは分かるけども。

「例えばスーリが使う魔法ってどんなのがある?」

「スーリ達が使う魔法は、道を作る。温度を変える。水を呼ぶ。増える…」

「待った待った。それぞれ、どんな魔法だよ。道を作るってなに?」

 スーリが屈んでぺたりと手の平を地面に付ける。

 そこから放射線状に土が盛り上がり、ぼこぼこと蛇行する土饅頭の列が生み出される。

「おお。土を耕す魔法?」

「違う。スーリたちは土の中が一番動きやすいから、固い石とか水とか邪魔だとこうやって道を作って広がる」

「なるほど」

 ふむふむする俺の横で、スーリは自分の手を、まじまじと見つめてた。

「どうした?」

「すごく上手くできたぞ!」

「へ?」

「二つ足の体はすごいな!」

「んん?」

「二つ足はスーリ達より、たくさんの魔法を使う」

 スーリは自分の手から腕、そして体に手をぺたぺたと触りながら、感激してるっぽい。

「二つ足の形は、魔法を使うための形だ!」

「よくわからん。っていうかその土の道、ちゃんと元に戻しておけよ」

「なんでだ?スーリは戻し方なんて知らない」

「仕事増やすなよ!このバカ!」

「スーリをバカって言うな!アベルがバカ!」

 俺も戻す魔法が分からないし、しょうがないから二人で、どつきあいながら足で踏み均して戻していった。

 半分くらい均したところで、イヴが食事に呼びに出てきた。俺たちがやってることを見て、小さな光を出現させてあっという間に地面を戻してしまった。

 最初からイヴに頼めばよかった。そして魔法を教わるなら、やっぱりイヴ一択だな。

 こいつじゃ混乱するだけだ。お株を奪われた、お強い幼女がどんな顔をしているかと見てみたら、じっとイヴを見つめてた。

 そのまなざしは尊敬とちょっと違うように見えた。



 粘菌幼女は、その後も当たり前のように切り株小屋に居座った。

 イヴは俺に対するのと同じように、スーリの世話も甲斐甲斐しくしてるし、追い出す気は全くなさそうだ。

 俺は俺で付きまとわれるし、出会いを思い出すと釈然としないが、完全に拒絶するほどでもない。

 奇妙な三人暮らしを、はからずも受け入れてる現状。



 一緒に暮らすようになって、いくつかスーリの生態を知った。

 まず、こいつは靴を履かない。俺とイヴはショートブーツみたいなのを履いてる。スーリの靴も作ろうとしてたけど、いらないと断られてた。

 大地とコンタクトが取りやすいから、裸足がいいらしい。

 接触で交流していた名残か、俺やイヴを触るのが好きだ。手を繋ぎたがるし座ってると膝によじのぼってくる。

 そして全くじっとしていない。あっちこっちウロチョロウロチョロ。行動範囲はいつも俺の近くだから、ものすごい邪魔。

 たまに、ほんとにたまにだが、静かにしてると思うと、森の地面に寝っ転がってる。もちろん髪も服も泥まみれ。イヴがそのたびに風呂に入れてやってる。



 今もイヴがオレンジっぽい果物を、スーリの為に剝いてやってる。その絵面だけ見てると、ほのぼのとした美人姉妹に見えるんだけどな。

「これは酸っぱい」

「はい」

「スーリはこれ好きじゃない」

「はい」

 会話を聞くと我儘お嬢様に苦労してる、お世話係って感じだ。

 俺はそんな二人を何するわけでもなく、ぼーっと見てた。まぁ粘菌は酸に弱そうだし酸味が嫌いだろうな。

 そして、はっと気付く。

「スーリ!」

「なんだ」

「お前俺の記憶で言葉を学んだって言ったよな?」

「うん」

「それはガルナ語か?日本語か?」

「どっちもだ」

「優等生すぎるじゃん…?」

「うん。スーリは赤ちゃんでもバカでもない」

「はいはい。イヴ、スーリの口はどう動いてる?」

「動きと発声が同じです」

 スーリがガルナ語を、ちゃんと喋ってるなら俺と違って翻訳魔法じゃなく、理解出来てるってことだ。


 ということは、俺の中には"ガルナ語の辞書"みたいなものがあるはずだ。

 翻訳データベースがないのに、俺の中で"翻訳"されるのはおかしいと、なんとなくは思ってたが、確定した。


 何故か俺だけは翻訳というプロセスを経てガルナ語を使ってる。


 スーリと俺の違いはなんだ?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...