口から、『愛』オア『lie』

御厨カイト

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口から、『愛』オア『lie』

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俺は近くから聞こえるガサガサと言う音で目を覚ます。


「……ん?なんだ、起きたのか」

「い、一体何をしているんだ……」

「あはは、そんなに慌てるな。まだ何かをするつもりはないよ」


ベッドに横たわっている俺の上に跨っている彼女がそう言う。
ガッチリと抑え込まれているのはオプションか……?


「……少しね、君に訊きたいことがあったんだ。まぁ、正直に答えてくれ」

「な、なんだよ」

「ふむ……これはつい先ほどゴミ箱の奥から見つけた物なんだが……これは……一体何だ?」

「『何だ』って……ただの丸まったティッシュじゃないのか?」

「あぁ、そうだな。確かに丸まったティッシュだ。……だが、まるで隠すかのようにゴミ箱の奥に押し込まれていた。まだ新しいのに。……だからもう一回訊こう、これは何だ?」

「……」


黙り込む


「……はぁー……黙秘、か。まったく……このティッシュ、かび臭いというか何と言うか淫靡な匂いがするな。……お前、自分で致しただろう」

「……い、いや、そ、そんな訳がない。ま、まったく君はな、何を言っているんだ」

「ふぅ、図星か……」


彼女は抑え込む力をグッと強める。


「……なぁ、どうして私に求めなかった。お前をここに閉じ込めて、まるで禁欲生活のようなことをさせているの私なのに……。お前にはそう言う事を求める権利があるというのに……」

「……いや、まぁ、確かにそれはそうなんだが……」

「それに私もそれを望んでいるという事もお前には何度も言ってきたはずだ。……なのに、お前と言う奴は……はぁ……」

「……」


自分の頬に冷たい汗がまるで滝のように流れていく。


「やっぱりお前に期待なんぞするんじゃなかったのかもな……。……分かっているさ、お前が私の事を凄く疎ましく思っていることぐらい……」

「い、いや、そんなことは、……無いんだけどね」

「……なら、何故この間は脱走しようとした?それが証拠だろ」

「うぐっ……」

「はぁ……もうこんなことやめよう。これ以上私が君のことを望んでも無駄なのだろう……?だったら……」



ガチャンッ!




「えっ?」



えっ?

何故か痛みが手首に鈍く響く。
そして、恐る恐るその手首の方を見てみると……


「お、おい!い、一体これはどういう事だ」

「これは……手錠さ。以前ネットで買っておいたのだよ。何と凄く丈夫でチェンソーでも切れないというネットのお墨付きさ」

「は、はぁ?な、何でこんなものを……」

「『何で』ってこれからお前をここに拘束するためさ。……あとお前が暴れないようにもな。……ベッドにつなげておれば大丈夫だろう」

「き、君は一体何言って……」


すると彼女はポケットから1本の注射器を取り出す。
ピンク色の薬品が揺れているのが見える。


「はっ?そ、それ一体何だ」

「これかい?これは……君のことを強制的に発情させる薬だ。まぁ、所謂”媚薬”と言う奴さ。」


俺はその言葉を聞いた瞬間、ここから逃げようと暴れる。
だが、手錠が頑丈すぎるためか、ただ単にガチャガチャと騒音が鳴っただけだった。

「おいおい、そんなに暴れるなよ。心配しなくても大丈夫だ。意識が少し塗り替えられるだけ。何にも怖くないよ」

「や、やめろ!その注射器を近づけるな!」

「だから、暴れるなって言ってるだろ!大人しく刺されろ。一瞬痛いだけで後は気持ちよくなるのだから」




ブスッ



「グ、グワーッッッ……」


……腕の痛みと共にドロドロと何かが塗り替わっていく感じがする。


「ハァー、ハァー、ハァー……」


クッ、体が熱い、熱く熱くてたまらない……


「……アハッ、良いなその顔。ゾクゾクするよ……。興奮するんだろう?抑えられないんだろう?」

「グッ……ク、ハァー、ハァー、グッ、クッ……」

「あぁ……我慢しなくても良い。安心しろ、すべて私が受け止めてやるからな」


彼女は俺に顔を近づける。



「さぁ、私の事を受け入れておくれ」




そう言い彼女は、熱く深いキスをしてくるのだった。












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