メスガキ鬼っ子を分からせた件

御厨カイト

文字の大きさ
1 / 1

メスガキ鬼っ子を分からせた件

しおりを挟む

「あっれー???お兄さん、今日も一人なのー?もしかして、友達いないのかなー?」

「……チッ、うっさいぞ。遊びに来たんだったら、黙ってゲームしてろよ」

「アハハハハ!そうやって怒るってことは事実なんだね!あー、かわいそー、プークスクスw」


彼女は俺の肩に顔をのせながら、そう煽る。
俺はいつも通りのそれに腹立ちながらも無視をする。


「むっ、お兄さんのくせに私の言葉を無視するなんて、立場を弁えてないようですね、このこの!」

「痛い痛い痛い!おい!頭の角で背中を刺してくるんじゃないよ!」

「じゃあ、無視しないでよ」

「面倒臭い奴だな。お前こそ、人の家に遊び来てるんだから、立場弁えろよ!」

「ふんふふーん、なぁーんにも聞こえませーんw」


そう言いながら、腹立たしい顔で耳を塞ぐ彼女。


「まったく……なんでこんな奴助けちまったんだか」


思い返すこと数週間前。


俺は信号無視をして、猛スピードで走ってくるトラックから横断歩道上にいたこいつを助けた。
個人的にはそれで終わると思ってたんだが、何を思ったかこいつはその一週間後、俺の部屋を訪ねてきやがった。

その日からこいつは「家にいるのは暇だ」と言って、俺の家でゲームをしたりするようになった。


「あー、お兄さんをからかうの楽しー!ホント退屈しないな~」

「俺はお前のおもちゃでも何でもないんだがな。と言うか、用がねぇんだったら帰れよ!」

「用だったらあるよ。お兄さんをからかうっていう大事な用がね、アハハハハ!」

「……はぁ」


まったく、こんな性格じゃなかったら可愛い鬼っ子なのにな。
今の世界はそういう人外とかが普通にいる世界。
頭に角が付いている鬼も別に珍しくない。

だが、こんな所謂メスガキは見たこと無いぞ。
面倒臭い奴に気に入られちまったようだな。


「それにしても、ホントにお兄さん暇なんだね~。いつもずっとパソコンの前にいるし。ニートなの?」

「だから違うって言ってんだろ!俺だって仕事してんだよ!ホントうるせえな」

「ふ~ん、なんだニートじゃないんだ~、つまんないの~」

「……お前はニートの人に謝ってこい」

「まぁ、いいや。別にお兄さんがニートじゃなくてからかうのは変わらないからね~w、クスクスw」


手を口に当てながら、そう笑ってくる彼女。


多分俺が手が出てないのは年齢のおかげだろうな。
いつもグッと堪えてる。


だが、今日は違う。


「ヒャッ!急に立ち上がってどうしたの?あっ、まさか私に暴力でも振るう気?あぁ、でもお兄さんにはそんな度胸無いか?プークスクスw」


そんな彼女の言葉を華麗にスルーしながら、俺は台所へと向かう。

そして、あるものを持ってまた戻る。


「あれ~、お兄さん何持ってきたの?あっ、もしかして私のためにお菓子取ってきてくれたの?さっすがお兄さん!気が利くね~」

「……お前今日が何の日か知ってるか?」

「えっ?今日?……2月の3日だけど、いきなりどうしたの?」

「そうだ、2月の3日だな。なら、今俺が持ってるものが何か分かるよな?」

「2月の……3日……ハッ、ま、まさか!」


彼女は感づいた顔で後ずさりをする。


「そ、それは、ま、ま、豆!」

「あぁ、そうだ。今日は節分だよな。お前のような悪い鬼を退治する節分だよな!」


俺はそう語気を強めながら、手に持っていた袋から大豆を一掴み持つ。


「お前のような人を馬鹿にするような悪い鬼はこれで退治しないとな!」

「ヒ、ヒェッ!ご、ご、ごめんなさい!お、お願いだから豆だけは投げないで!」

「あん?そんなご都合主義が罷り通ると思ってんのか?」

「うっ、ご、ごめんなさい、ごめんなさい!も、も、もうしないから許して!」


そう彼女は縮こまる。
立派な角も心なしかシュンとしているように感じる。
本当に鬼は豆が弱点のようだ。


「本当にもうしないのか?」

「しない!しない!絶対にしない!絶対にお兄さんをからかうようなことは言わない!」

「本当の本当に?」

「本当の本当の本当!誓う誓う!絶対に言わないって誓う!心の底から誓う!」

「ふーん、そこまで言うか。……しょうがないから許してやろう」

「あ、ありがとう!」

「ただし、また俺を馬鹿にするような事を言ったら……、どうなるか分かったな?」

「うん!絶対に、絶対に言わない!」


彼女は頭を上下にブンブンと振る。


「よっし、それじゃあ、気を取り直してゲームでもするか。」

「うん!お兄さん!」

「……そのお兄さんと言う呼ばれ方も少し恥ずかしいな」

「え、で、でも私はこの呼び方好きだから……」


そう言いながら、彼女はまたシュンとなる。

……まぁ、いいか。お兄さんでも。


「はぁ、ならお兄さんでいいよ。仕方ないから」

「あっ……ありがとう!お兄さん!」

「うん。じゃあやろうか」

「うん!」






そうして、俺たちは二人で仲良く、楽しくゲームをしていくのだった。









しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

幼馴染みのメッセージに打ち間違い返信したらとんでもないことに

家紋武範
恋愛
 となりに住む、幼馴染みの夕夏のことが好きだが、その思いを伝えられずにいた。  ある日、夕夏のメッセージに返信しようとしたら、間違ってとんでもない言葉を送ってしまったのだった。

春に狂(くる)う

転生新語
恋愛
 先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。  小説家になろう、カクヨムに投稿しています。  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761

処理中です...