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公然の主従に秘密の関係
しおりを挟む「ねぇ、キスというものをしてみたいわ」
私が仕えるのはある国の貴族のお嬢様。
ご主人様の寵愛を一身に受ける彼女は生まれてから一度も外に出たことが無い。
だから、とても好奇心がお強いお方だ。
今も、凛としたお顔でとんでもないことを言ってくる。
「……お、お嬢様?い、一体何を?」
「だから、この間、あなたが話してくれた物語の中に出てきた『キス』というものをしてみたいのよ。ねぇ、いいでしょ?」
「……お言葉ですがお嬢様、キスというのは特別な感情を持つお方に対してするものでございます。そのような興味本位でするようなことではありません」
私は自分の長い髪を耳に掛けながら、言う。
「特別な感情?それはどのようなものなの?」
「例えばですね、このお話しした物語に出てくる王子様とお姫様のように、お互いがお互いを愛している、そのような関係及び感情を持っている人たちが行うものでございます。キスというものは」
「なるほど……要するに『好き』や『愛してる』という感情を持っている人に対して行うものなのね」
「そうでございます。ですので、そんな興味本位で行うようなものではございませんよ」
「ふぅん、それなら愛している者に対して行うのは良いのね?」
「えっ、えぇ、そうですが……?」
「それじゃあ…………」
すると、お嬢様は私の頬に手を当てて、そのまま……
チュッ
『甘い』
「お、お嬢様!?何を!?」
私はお嬢様の柔らかい唇の感触が残る、自分の唇を押さえながら言う。
「何って、あなたの言われた通りにしただけよ」
「そ、それって、ど、どういう意味で……?」
すると、お嬢様はより一層頬を赤く染めながら、
「……そのままの意味よ」
……まだ、心がドキドキしている。
それに顔も赤いだろう。
だが、このまま終わるのも惜しい。
そう思った私は、今まで心の奥に隠していた想いが溢れ出したかのように、目の前のお嬢様の唇に自分の唇を重ねる。
「んぅ……ちゅぅ………」
「うぅん……」
お嬢様の体がビクンッと震える。
……そうして、その日を境に私たちは普通の主従ではなくなったのだった。
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