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第2章
第11話:平和な朝と、招かれざる影
柔らかな朝の光が、金色のカーテンの隙間から差し込み、寝室を穏やかに照らしていた。 私が目を覚ますと、そこにはいつも通りの、けれど夢のような光景が広がっていた。
「……おはよう、ウェンディ」 耳元で囁かれた低く甘い声。 隣で横になっていたシリウス様が、私の髪を慈しむように指で梳き、額にそっと口づけを落とした。
かつての王国では、冷たい石畳の上や、湿った物置同然の部屋で、凍えながら朝を迎えていた。 それが今では、世界で最も気高く、そして私が最も愛する人の腕の中で、温かな目覚めを迎えている。
「まだ眠いか? 今日は無理に起きる必要はない。貴様が望むなら、このまま一日中こうしていてもいいのだぞ」 シリウス様の黄金の瞳が、いたずらっぽく、それでいて深い独占欲を孕んで私を見つめる。
「……いえ、起きます。今日はガゼルさんと、帝都の噴水広場にある魔導炉の最終調整をする約束ですから」 私は頬を赤らめながら、彼の胸元を軽く押し返した。 シリウス様は名残惜しそうにしながらも、最後にもう一度だけ深く私を抱きしめてから、自由にしてくれた。
帝都の街並みは、私がこの国に来てから劇的な変化を遂げていた。
「あ、編纂聖女様だ! ウェンディ様、おはようございます!」 「ウェンディ様、この間の魔導炊飯器、とっても調子がいいですよ。ありがとうございます!」
街を歩けば、至る所から明るい声が掛かる。 私が指先で「編み直した」魔導インフラは、帝都の人々の暮らしを驚くほど豊かに、そして便利に変えていた。
「師匠! お待ちしておりましたぞ!」 噴水広場では、工房長のガゼルが既に準備を整えて待っていた。
かつては|粗雑な力押しで無理やり動かされていた帝国の魔導具たちも、今では私の編纂によって、最小限の魔力で最大限の効率を発揮する「芸術品」へと進化している。 私は、自分を必要としてくれる場所があること、そして自分の技術が誰かの笑顔に繋がっていることに、心からの幸せを感じていた。
だが、そんな平和な日常の裏側で、招かれざる影は確実に近づいていた。
昼下がり。 帝国の正門に、白銀の装飾が施された豪華な馬車が到着した。 それは、隣国であり大陸最大の宗教国家でもある『|聖教国エリュシオンエリュシオン』からの祝賀使節団だった。
「我が国の教皇猊下より、新たな大聖女の誕生を祝し、親書を預かって参りました」 馬車から降り立ったのは、純白の法衣を纏った神官たち。 彼らは一見、穏やかな微笑みを浮かべているが、その瞳の奥には、氷のような冷徹さが隠されていた。
シリウス様は、謁見の間で彼らを迎えながらも、その魔圧プレッシャーを僅かに尖らせていた。 「……わざわざ遠路遥々、ご苦労なことだ」
シリウス様の直感は、彼らが単なる祝賀のために来たのではないことを即座に見抜いていた。 特に、使節団の最後尾に立つ、奇妙な仮面をつけた男。 『|仮面の鑑定士アイ・オブ・ゴッド』と呼ばれるその男は、一言も発さず、ただじっと私を凝視していた。
夜会が終わり、使節団が用意された客室へと引き上げた後。 仮面の男は、月明かりの届かない部屋の隅で、同行していた神官に低く告げた。
「……間違いない。あの娘の指先には、失われた神の糸が見える」
その声には、聖職者らしからぬ暗い悦悦と、底知れぬ執着が混じっていた。 「王国の愚か者共は、あれをただの編纂能力と見誤ったようだが……。あれこそが、我が国が千年間追い求めてきた、世界を創り替えるための鍵だ」
仮面の下で、男の瞳が怪しく光る。 「力ずくで奪ってでも、あの娘は我が聖教国のものにせねばならん。汚れた皇帝の隣に置いておくには、あまりにも惜しい素材だ」
一方、皇帝の寝所では、シリウス様が私を背後から強く抱きしめていた。 「……ウェンディ、あの使節団には近づくな。特に、あの仮面の男には」
シリウス様の腕に込められた力は、これまでにないほど強かった。 何か大きな嵐が近づいている。 そんな予感に、私は彼の胸の中で、微かな震えを隠せなかった。
穏やかだった帝国に、新たな因縁の種が蒔かれようとしていた。
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👑 EMPEROR'S DECREE:黒狼皇帝からの勅命
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「よくぞ最後まで読み遂げた。
ウェンディの功績を称え、貴様らにも『いいね』を許す。
……さあ、その指先で俺の女を喜ばせてみせろ。
貴様の忠誠、確かに受け取るぞ」
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「……おはよう、ウェンディ」 耳元で囁かれた低く甘い声。 隣で横になっていたシリウス様が、私の髪を慈しむように指で梳き、額にそっと口づけを落とした。
かつての王国では、冷たい石畳の上や、湿った物置同然の部屋で、凍えながら朝を迎えていた。 それが今では、世界で最も気高く、そして私が最も愛する人の腕の中で、温かな目覚めを迎えている。
「まだ眠いか? 今日は無理に起きる必要はない。貴様が望むなら、このまま一日中こうしていてもいいのだぞ」 シリウス様の黄金の瞳が、いたずらっぽく、それでいて深い独占欲を孕んで私を見つめる。
「……いえ、起きます。今日はガゼルさんと、帝都の噴水広場にある魔導炉の最終調整をする約束ですから」 私は頬を赤らめながら、彼の胸元を軽く押し返した。 シリウス様は名残惜しそうにしながらも、最後にもう一度だけ深く私を抱きしめてから、自由にしてくれた。
帝都の街並みは、私がこの国に来てから劇的な変化を遂げていた。
「あ、編纂聖女様だ! ウェンディ様、おはようございます!」 「ウェンディ様、この間の魔導炊飯器、とっても調子がいいですよ。ありがとうございます!」
街を歩けば、至る所から明るい声が掛かる。 私が指先で「編み直した」魔導インフラは、帝都の人々の暮らしを驚くほど豊かに、そして便利に変えていた。
「師匠! お待ちしておりましたぞ!」 噴水広場では、工房長のガゼルが既に準備を整えて待っていた。
かつては|粗雑な力押しで無理やり動かされていた帝国の魔導具たちも、今では私の編纂によって、最小限の魔力で最大限の効率を発揮する「芸術品」へと進化している。 私は、自分を必要としてくれる場所があること、そして自分の技術が誰かの笑顔に繋がっていることに、心からの幸せを感じていた。
だが、そんな平和な日常の裏側で、招かれざる影は確実に近づいていた。
昼下がり。 帝国の正門に、白銀の装飾が施された豪華な馬車が到着した。 それは、隣国であり大陸最大の宗教国家でもある『|聖教国エリュシオンエリュシオン』からの祝賀使節団だった。
「我が国の教皇猊下より、新たな大聖女の誕生を祝し、親書を預かって参りました」 馬車から降り立ったのは、純白の法衣を纏った神官たち。 彼らは一見、穏やかな微笑みを浮かべているが、その瞳の奥には、氷のような冷徹さが隠されていた。
シリウス様は、謁見の間で彼らを迎えながらも、その魔圧プレッシャーを僅かに尖らせていた。 「……わざわざ遠路遥々、ご苦労なことだ」
シリウス様の直感は、彼らが単なる祝賀のために来たのではないことを即座に見抜いていた。 特に、使節団の最後尾に立つ、奇妙な仮面をつけた男。 『|仮面の鑑定士アイ・オブ・ゴッド』と呼ばれるその男は、一言も発さず、ただじっと私を凝視していた。
夜会が終わり、使節団が用意された客室へと引き上げた後。 仮面の男は、月明かりの届かない部屋の隅で、同行していた神官に低く告げた。
「……間違いない。あの娘の指先には、失われた神の糸が見える」
その声には、聖職者らしからぬ暗い悦悦と、底知れぬ執着が混じっていた。 「王国の愚か者共は、あれをただの編纂能力と見誤ったようだが……。あれこそが、我が国が千年間追い求めてきた、世界を創り替えるための鍵だ」
仮面の下で、男の瞳が怪しく光る。 「力ずくで奪ってでも、あの娘は我が聖教国のものにせねばならん。汚れた皇帝の隣に置いておくには、あまりにも惜しい素材だ」
一方、皇帝の寝所では、シリウス様が私を背後から強く抱きしめていた。 「……ウェンディ、あの使節団には近づくな。特に、あの仮面の男には」
シリウス様の腕に込められた力は、これまでにないほど強かった。 何か大きな嵐が近づいている。 そんな予感に、私は彼の胸の中で、微かな震えを隠せなかった。
穏やかだった帝国に、新たな因縁の種が蒔かれようとしていた。
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「よくぞ最後まで読み遂げた。
ウェンディの功績を称え、貴様らにも『いいね』を許す。
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貴様の忠誠、確かに受け取るぞ」
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