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「お客様、お初にお目にかかります。私は名をグルドと申します。どうぞ今後はご贔屓によろしくお願い致します。お客様のお名前をお伺いしても?」
「お、あ、はい。ユウ…と言います。」
「ユウ様、ですか。どうぞこちらへ…お食事はもうお取りになりましたか?もしまだのようでしたら何かお持ち致しますが…。」
扉を開けた先にあったのはいっそ居住空間と言われた方が納得出来るほど、広々とした部屋だった。
ワンルームで縦長の部屋の中央には今日買ったであろう太陽が頭を下げお辞儀をした状態で居た。
彼…グルドと会話をしつつも側へと歩み寄りつつ部屋を物色する。両端には棚がありその中に調度品などが等間隔で並べられ、一つ一つが大きくなくとも存在感があり、それがまた部屋の雰囲気をより引き立たせて居る。
やはり娼館というよりはたまに行くあの高級ホテルのような雰囲気だ。
近づくにつれグルドの後ろにはやたらと大きなソファーとガラス張りのローテーブルがある事に気付く。
いや本当にソファーがデカイ。部屋が大きめだから分からなかったけれど人一人が寝返りをうっても落ちないくらいにはデカそう。
今の所、俺の興味は、横で俺に席を進めるグルドより部屋自体にあるとはいえ聞こえてくる声はどこか平坦すぎる。率直に言えば緊張感やあるはずの愛想の良さも感じさせない程冷たい。
着席したあたりでそのソファーの座り心地の良さにびっくりしつつも内心ではおいおい客商売だろうが…少しは媚び売りくらいしてくれ、と思うばかりだ。ちらりと隣を見やれば、立ったまま座る俺を見下ろす形になっているグルドが目に入る。
いや見下ろすな客を。
そんなグルドはというと無理やり着させられたのかここの太陽の正装なのか、一丁前にタキシードを着ている。角は相変わらずなので余計に悪魔感、いや淫魔感?がマシマシだ。
それに対して俺は少し正装してきたと言えど男にしては若干フリル多めの立襟の白のシャツに後ろが編み上げでコルセットを思わせるようなベストにスラックス。自分の顔に似合う物を着るのが好きな俺にとって、選ぶ物がフリフリするのは仕方ない事だけど、目の前のコイツはどうやら気に入らんらしい。それが俺なのか服装なのか両方かは知らんが、改めて顔を見ればニコリともしない。
好みなんぞ知るか。客だぞ俺は。
「そうですね、お腹は空いていないんですけど喉が乾いてしまったので何かお飲み物を頂けますか?出来たらジュースか緑茶を。」
「かしこまりました。少々お待ち下さい。」
そういってグルドが備え付けの魔道具でどこかへ伝達魔法を使った数分後、暖かい湯気のたった緑茶が出てきた。この国では珍しい緑茶が出てくるなんて流石だ。しかも気候があまり変わらないとはいえ今は冬。店の暖房で身体が温まってるとはいえ中から温める方が良い。うん、美味しい。
「ああ、どうぞ座って。隣で良ければ。」
「失礼致します。本日はどこまで?」
「ブッ!ええ?いきなりそれ聞く?」
お茶を飲む俺をよそに立ったままだったグルドを隣へ誘う。控えめに座ったグルドは開口一番言った言葉。ド直球すぎてお茶を吹きかけた。
つまりは今日お触りだけだと事前に説明されるこの状況で、本当ならもっとべったりと引っ付いたり色目を使いながらそこそこ良い雰囲気になってきたら上手く手綱を握って本番を避けるのが娼婦や男娼の務めを放棄した事になる。例え太陽、タチであろうとも本来なら客相手の商売で愛嬌がものをいう商売である事に変わりは無い。
安い娼館なら客層などで事故を防ぐ為にも先に事務的に説明するんだろうけど…。
「お、あ、はい。ユウ…と言います。」
「ユウ様、ですか。どうぞこちらへ…お食事はもうお取りになりましたか?もしまだのようでしたら何かお持ち致しますが…。」
扉を開けた先にあったのはいっそ居住空間と言われた方が納得出来るほど、広々とした部屋だった。
ワンルームで縦長の部屋の中央には今日買ったであろう太陽が頭を下げお辞儀をした状態で居た。
彼…グルドと会話をしつつも側へと歩み寄りつつ部屋を物色する。両端には棚がありその中に調度品などが等間隔で並べられ、一つ一つが大きくなくとも存在感があり、それがまた部屋の雰囲気をより引き立たせて居る。
やはり娼館というよりはたまに行くあの高級ホテルのような雰囲気だ。
近づくにつれグルドの後ろにはやたらと大きなソファーとガラス張りのローテーブルがある事に気付く。
いや本当にソファーがデカイ。部屋が大きめだから分からなかったけれど人一人が寝返りをうっても落ちないくらいにはデカそう。
今の所、俺の興味は、横で俺に席を進めるグルドより部屋自体にあるとはいえ聞こえてくる声はどこか平坦すぎる。率直に言えば緊張感やあるはずの愛想の良さも感じさせない程冷たい。
着席したあたりでそのソファーの座り心地の良さにびっくりしつつも内心ではおいおい客商売だろうが…少しは媚び売りくらいしてくれ、と思うばかりだ。ちらりと隣を見やれば、立ったまま座る俺を見下ろす形になっているグルドが目に入る。
いや見下ろすな客を。
そんなグルドはというと無理やり着させられたのかここの太陽の正装なのか、一丁前にタキシードを着ている。角は相変わらずなので余計に悪魔感、いや淫魔感?がマシマシだ。
それに対して俺は少し正装してきたと言えど男にしては若干フリル多めの立襟の白のシャツに後ろが編み上げでコルセットを思わせるようなベストにスラックス。自分の顔に似合う物を着るのが好きな俺にとって、選ぶ物がフリフリするのは仕方ない事だけど、目の前のコイツはどうやら気に入らんらしい。それが俺なのか服装なのか両方かは知らんが、改めて顔を見ればニコリともしない。
好みなんぞ知るか。客だぞ俺は。
「そうですね、お腹は空いていないんですけど喉が乾いてしまったので何かお飲み物を頂けますか?出来たらジュースか緑茶を。」
「かしこまりました。少々お待ち下さい。」
そういってグルドが備え付けの魔道具でどこかへ伝達魔法を使った数分後、暖かい湯気のたった緑茶が出てきた。この国では珍しい緑茶が出てくるなんて流石だ。しかも気候があまり変わらないとはいえ今は冬。店の暖房で身体が温まってるとはいえ中から温める方が良い。うん、美味しい。
「ああ、どうぞ座って。隣で良ければ。」
「失礼致します。本日はどこまで?」
「ブッ!ええ?いきなりそれ聞く?」
お茶を飲む俺をよそに立ったままだったグルドを隣へ誘う。控えめに座ったグルドは開口一番言った言葉。ド直球すぎてお茶を吹きかけた。
つまりは今日お触りだけだと事前に説明されるこの状況で、本当ならもっとべったりと引っ付いたり色目を使いながらそこそこ良い雰囲気になってきたら上手く手綱を握って本番を避けるのが娼婦や男娼の務めを放棄した事になる。例え太陽、タチであろうとも本来なら客相手の商売で愛嬌がものをいう商売である事に変わりは無い。
安い娼館なら客層などで事故を防ぐ為にも先に事務的に説明するんだろうけど…。
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