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193、送迎。
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早朝に綺麗なドレスに身を包み、いつもと違う濃いめの化粧の羊角が玄関に立つ。
くるりと振り向く様はとても優雅で、普段の残念な様子は一切見て取れない。
振りむいた先に居るのは女一人。わざとそうして貰った。
「じゃあ、行ってきます」
「ああ、気を付けて行ってこい」
羊角に答える女の言葉は、暗に「帰ってこい」と言っている様に聞こえた。
それがまた嬉しくて、絶対にここに帰ってこようと誓う羊角。
玄関を出るとすぐ傍に車が止めてあり、後部座席を開いて男が待っていた。
ただ羊角はその事を知らなかったらしく、驚いた顔を見せている。
「どうぞ、お嬢さん」
「ふふっ、似合いませんね」
「うっせ」
本当にこの屋敷の人達は優しくて甘いなぁ、と思いながら素直に後部座席に座る羊角。
見送ってくれている女に笑顔を返し、それを見てから男は扉を閉めた。
そこでふと、羊角は手に何かが触れた気がした。
逆方向を振り向くと、ニパーッと笑って手を握る少女の姿が。
「・・・はえ?」
「じゃあ出すぞー」
「ちょっ、まっ、旦那様!? 天使ちゃんが居ますよ!?」
「ずっと待ってたからなー」
羊角は車に乗るまで視線を女に向けていたので、奥に座っていた少女に気が付かなかった。
一瞬脳が理解出来ない状態であったが、気が付いて慌てて男に言うも気にせず発進。
混乱する羊角だが少女は只々にっこにこ笑って手を握っている。
その様子に羊角も少しづつ落ち着きを取り戻し、ジトッとした目で男を睨む。
「・・・まさか喋ったんですか?」
「まさかぁ。黙っててって言われてたんだから言ってねえよ。つーか此処でそれを言う方が駄目なんじゃねえの?」
「あっ」
羊角が自分の失言に気が付いて少女を見ると、少女はぷくーっと頬を膨らませていた。
やっぱり隠し事してたー、と言いたげな表情だ。
羊角はその時脳内で「膨れ顔が可愛過ぎる」と「どうしよう怒らせた」が一緒になっていた。
その結果羊角がとった行動は、とても支離滅裂なものとなる。
「ご、ごめんなさい」
と謝りながら、パシャッと端末で撮る羊角。言葉と行動が合っていない。
表情が申し訳なさそうな所に混乱が見て取れはするが、ポカーンとしてしまう少女。
羊角もその表情ではっと正気に戻り、オロオロと慌て出す。
ただ少女はそんな羊角を見て、思わずぷっと吹き出してしまった。
「て、天使ちゃん?」
クスクスと笑う少女を不安げに呼ぶ羊角だが、少女はにまーっと笑顔で返す。
そしてギューッと抱きつくと、背中を優しくポンポンと叩いていた。
大丈夫だよ。私が付いてるよと。
勿論口に出した訳では無いが、羊角はそう言われている様な気がしたのだ。
「~~~~~、ああもう、天使ぃ・・・!」
羊角は感極まって少し涙声になりながら、ぎゅーっと抱き締め返す。
ただそれだけで羊角は、心の中の何かが凄く軽くなって行く様な感覚になっていた。
きっと本人も意識していなかった部分の緊張。
それが解けて行くような、優しく溶かしてもらっている様な気分に。
「ほんと・・・ああいうの別に意識してやってる訳じゃないから敵わないよな」
何点か自分も心当たりがある男は、二人の様子をバックミラーで見ながら苦笑いしていた。
少女は只々皆が好きなだけだ。だから皆に元気でいて欲しいだけ。
元気がないなーと思ったら、元気が出るまで一緒に居てあげる。
ただただそれだけの事を、けど何よりも嬉しい事を当たり前にやってのける。
けどそれは、少女にとっては逆の話。
この屋敷に来て、皆が自分に構ってくれた。自分に優しくしてくれた。
何時だって屋敷の皆は、少女にとっては恩だらけなのだ。
それは羊角だって変わらない。優しく仕事を教えてくれたお姉さんなんだから。
だから大したことが出来ない自分が出来る精いっぱいで力になってあげたい。
思いつける事も少ないけど、少ないなりにやれる事はやってあげたい。
その優しい気持ちが、想いが、とても大きな少女の武器だと男は感じていた。
「うう、私一生あそこで働くぅ・・・!」
「・・・いやまあ、お前がそれで良いなら別に良いけどさ」
羊角はこんな事を言っているが、働く理由が理由なので少女が出て行ったら辞めるだろう。
当然男もそんな事は解っているが、取り敢えず今は突っ込むのは止めておいた様だ。
今は優しい笑みを見せて羊角を抱き締める少女に、姉が珍しく優しい笑顔を見せた時に少し似ている笑顔をする少女に、目的地到着までは任せておこうと思う男であった。
「天使ちゃあああん! ああもう大好きぃいいい!」
「うるせえ・・・」
暫く車内BGMは要らなそうである。
くるりと振り向く様はとても優雅で、普段の残念な様子は一切見て取れない。
振りむいた先に居るのは女一人。わざとそうして貰った。
「じゃあ、行ってきます」
「ああ、気を付けて行ってこい」
羊角に答える女の言葉は、暗に「帰ってこい」と言っている様に聞こえた。
それがまた嬉しくて、絶対にここに帰ってこようと誓う羊角。
玄関を出るとすぐ傍に車が止めてあり、後部座席を開いて男が待っていた。
ただ羊角はその事を知らなかったらしく、驚いた顔を見せている。
「どうぞ、お嬢さん」
「ふふっ、似合いませんね」
「うっせ」
本当にこの屋敷の人達は優しくて甘いなぁ、と思いながら素直に後部座席に座る羊角。
見送ってくれている女に笑顔を返し、それを見てから男は扉を閉めた。
そこでふと、羊角は手に何かが触れた気がした。
逆方向を振り向くと、ニパーッと笑って手を握る少女の姿が。
「・・・はえ?」
「じゃあ出すぞー」
「ちょっ、まっ、旦那様!? 天使ちゃんが居ますよ!?」
「ずっと待ってたからなー」
羊角は車に乗るまで視線を女に向けていたので、奥に座っていた少女に気が付かなかった。
一瞬脳が理解出来ない状態であったが、気が付いて慌てて男に言うも気にせず発進。
混乱する羊角だが少女は只々にっこにこ笑って手を握っている。
その様子に羊角も少しづつ落ち着きを取り戻し、ジトッとした目で男を睨む。
「・・・まさか喋ったんですか?」
「まさかぁ。黙っててって言われてたんだから言ってねえよ。つーか此処でそれを言う方が駄目なんじゃねえの?」
「あっ」
羊角が自分の失言に気が付いて少女を見ると、少女はぷくーっと頬を膨らませていた。
やっぱり隠し事してたー、と言いたげな表情だ。
羊角はその時脳内で「膨れ顔が可愛過ぎる」と「どうしよう怒らせた」が一緒になっていた。
その結果羊角がとった行動は、とても支離滅裂なものとなる。
「ご、ごめんなさい」
と謝りながら、パシャッと端末で撮る羊角。言葉と行動が合っていない。
表情が申し訳なさそうな所に混乱が見て取れはするが、ポカーンとしてしまう少女。
羊角もその表情ではっと正気に戻り、オロオロと慌て出す。
ただ少女はそんな羊角を見て、思わずぷっと吹き出してしまった。
「て、天使ちゃん?」
クスクスと笑う少女を不安げに呼ぶ羊角だが、少女はにまーっと笑顔で返す。
そしてギューッと抱きつくと、背中を優しくポンポンと叩いていた。
大丈夫だよ。私が付いてるよと。
勿論口に出した訳では無いが、羊角はそう言われている様な気がしたのだ。
「~~~~~、ああもう、天使ぃ・・・!」
羊角は感極まって少し涙声になりながら、ぎゅーっと抱き締め返す。
ただそれだけで羊角は、心の中の何かが凄く軽くなって行く様な感覚になっていた。
きっと本人も意識していなかった部分の緊張。
それが解けて行くような、優しく溶かしてもらっている様な気分に。
「ほんと・・・ああいうの別に意識してやってる訳じゃないから敵わないよな」
何点か自分も心当たりがある男は、二人の様子をバックミラーで見ながら苦笑いしていた。
少女は只々皆が好きなだけだ。だから皆に元気でいて欲しいだけ。
元気がないなーと思ったら、元気が出るまで一緒に居てあげる。
ただただそれだけの事を、けど何よりも嬉しい事を当たり前にやってのける。
けどそれは、少女にとっては逆の話。
この屋敷に来て、皆が自分に構ってくれた。自分に優しくしてくれた。
何時だって屋敷の皆は、少女にとっては恩だらけなのだ。
それは羊角だって変わらない。優しく仕事を教えてくれたお姉さんなんだから。
だから大したことが出来ない自分が出来る精いっぱいで力になってあげたい。
思いつける事も少ないけど、少ないなりにやれる事はやってあげたい。
その優しい気持ちが、想いが、とても大きな少女の武器だと男は感じていた。
「うう、私一生あそこで働くぅ・・・!」
「・・・いやまあ、お前がそれで良いなら別に良いけどさ」
羊角はこんな事を言っているが、働く理由が理由なので少女が出て行ったら辞めるだろう。
当然男もそんな事は解っているが、取り敢えず今は突っ込むのは止めておいた様だ。
今は優しい笑みを見せて羊角を抱き締める少女に、姉が珍しく優しい笑顔を見せた時に少し似ている笑顔をする少女に、目的地到着までは任せておこうと思う男であった。
「天使ちゃあああん! ああもう大好きぃいいい!」
「うるせえ・・・」
暫く車内BGMは要らなそうである。
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