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第八話 サイラスの心

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 ーーナキアが自慰に耽っていたその夜、サイラスの部屋に一人の客人が訪れていた。

 青白い半透明の肌、乱れた真っ黒い髪。

 薄汚れたローブを羽織ったその女の亡霊は、サイラスの視界に入るとニタァ、と笑った。

「・・・・・・お前、ナキア様に呪詛をかけた亡霊か」

 サイラスの表情がすっと冷たくなるのに、亡霊は不敵な笑みを浮かべてふわふわと宙に浮く。

『そう、私の名はアリーシャ。ナキアに殺された敵国の魔導師だ』

「・・・・・・なるほど、生前魔導師をやっていたなら、あの厄介な呪いを使えるのも頷けるな」

 サイラスが厳しい表情で言うと、亡霊はそのシワのよったサイラスの眉間を指でつつく真似をした。

『なんだ、その険しい顔は。お前、幼い男の子に興奮するド変態なんだろう? 子供になったナキアを可愛がるのは楽しく無いのか?』

 亡霊の言葉に、サイラスはナキアの幼くなった肢体を思い出す。

 雪のように白い肌が、ほんのりと赤く熱を帯びる様。

 大きな瞳が涙で潤み、キッと睨んでくる表情が堪らなくて。

「・・・・・・確かに、ゾクゾクしますよ。幼少期のナキア様は可憐で、愛らしくて。俺に淫らなことをされて泣く顔にはたまらなくそそられます」

『・・・・・・素直な奴だな』

 聞いてもいない興奮ポイントまで語るサイラスに、亡霊は微苦笑する。

(ーーしかし、ナキア様はきっと苦しんでいる)

 身体が大人に戻った瞬間の、ひどく傷ついた顔には、胸が締め付けられる。

 ナキアのことは、初めて会った時からずっと・・・・・・恋愛的な意味でも慕っていた。

 幼児は特別好きだが、幼児だけが好きというわけでもない。

『お前が次の弟子になるサイラスか? 今度は何日持つんだろうなぁ』

 尊大な態度、歪んだ笑み、そんな彼の全てを崩して滅茶苦茶になるまで愛してみたいと、そんなふう思ってきた。

「・・・・・・ナキア様を泣かせるのは俺だけがいい。お前のような亡霊の呪いでナキア様が傷つくことになるのは気分が良く無い」

『ひひッ、さすが悪魔の弟子だな。惚れた奴のことを泣かせたいのか、変態め』

 亡霊は嘲るように笑うと、壁に溶け込むようにすうっと消えていった。

(・・・・・・ナキア様)

 つい数時間前ーー幼児化したナキアの胸を可愛がった自分のベッドに、サイラスはそっと顔を埋める。

 まだ、ナキアの残り香を感じた。

(ーー全部、俺のものにしたい)
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