あの人と。

Haru.

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本編

24 サロン

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 ロイを信じて肩の力を抜こうと思った時期が僕にもありました────

































「さぁユキ、この者達が私の家族だ」


 ただ今、ロイの家族、つまり王族の方々に囲まれてます……
 だれか変わって!!!


「ほんっっっとに可愛いな!!」

「父上、なぜ今まで独り占めしていたのですか」

「俺と結婚していただけませんか?」

「気持ちはわかるが落ち着け、ユキが困っているだろう。まずは自分の名を言うのが礼儀だ」

 ロイ……! 僕は許さないぞ……なぜ王族の方に会うって言ってくれなかったんだ! 心の準備が全くできててないじゃないか!!!

「ロイ! 王族の方に会うなら言ってよ!!」

「ん? いや、ユキのことだからな、言ったら逃げるだろうと……」

 それを言われるといたい。

「う……確かに今すでに逃げたい状況だけどぉ……」

「だろう? まぁ、そんなに堅い者達ではないし、公式の場でもないんだ。気軽に、な」

「そうだよ、気軽に気軽に!! 俺はアルフィー・ドゥ・ヴィルヘルム。一応こいつの嫁で王妃やってるよ。俺のことはアル、って呼んでくれな」

 ロイを肘で小突きながらアル様は快活そうに笑った。
 腰くらいまであるゆるくウェーブのかかった栗色の髪の毛がすごく綺麗です。目は緑色なんですね。羨ましい色だ!!

 ……ん? なんかロイの名前には“ル”って入ってたと思うけどアル様の名前は“ドゥ”? どう言うことだろう? あとで聞こうかな……

「次は私か。私はレイナード・ヴィルヘルム。第1王子で王太子。私のことは、レイと呼んでくれ」

 レイ様はロイとそっくり。ロイの若い頃はこんな感じだったんだろうなぁ。今も若く見えるけど。

「最後は俺だね。私はラシルド・ヴィルヘルム、第2王子だよ。俺のことはラスってよんでね」

 あ、さっき求婚してきたのはラス様ですね。容姿はアル様にそっくりです。求婚はあとでちゃんとお断りしよう。まずは僕も自己紹介しないとね。

「えぇと、僕は東 幸仁です。幸仁が個人名です。ユキと呼んでください」

「ユキ、ね。よろしくな? 

あと、俺達に敬語は必要ないからな。本当は寧ろ俺達が敬語を使うべきなんだからな」

「ユキは敬語を嫌がるだろうと思ってな。先に敬語はなしと伝えておいたんだが良かったか?」

「え、もちろん! 僕敬語使われるなんて違和感しかないもん。ロイ、ありがとね」

「いや、かまわん。ユキもアル達に敬語はなしだぞ?」

「えっなんで!」

 思わず声を上げた僕にアル様達が言う。

「そりゃ俺達はもう家族だからなぁ! 敬語だとか敬称だとか、かたっ苦しいのはなしなし! ユキに敬語なんて使われたら距離を感じてしまうよ。

それに、ロイだけずるいじゃないか」

「うん、私もユキに敬語使われるのはいやだな」

「俺も!」

「……ほんとに、いいの……?」

 恐る恐る敬語を取った僕に3人は嬉しそうに笑った。

「「「もちろん!!」」」

 その声に嬉しくなって思わず口元が緩んだ。

 そんな僕をロイは微笑ましそうに見てきてちょっと恥ずかしくなった。







「さて、自己紹介も終わったことだしお茶にしようか」

 ロイのその一言で始まったお茶はとても楽しいものだった。

「ユキ、これも食べな? 18って聞いてたけど小さすぎて心配だ」

「アル、身長は僕の世界じゃ普通だったんだからね! こっちの人達が大きすぎるの! 今更伸びないしそんなに食べたら太っちゃうよ」

「いや、ユキは細すぎだ。もっと太った方がいい。ほら、私の分もどうだ?」

「俺のもあげるよ」

「いらないいらない! 僕そんなにたべられないよ!」

 アルとレイとラスが次々とお茶菓子を勧めてくる。
 ここのお茶菓子、こっちの人達に合わせてるのか1つ1つが大きくて僕は1つでお腹いっぱい。

「ははっ、ユキは小食だからな」

「む、ロイ、僕が小食なんじゃなくてこっちの人の食べる量が多いんだよ」

「ロイ、ユキの食べる量はどらくらいなんだ?」

「そうだな、私の食べる量の4分の1ぐらいだ。少ないだろう?」

「そんだけ?! ユキ、遠慮しなくていいんだぞ? それとも味が好みじゃなかったのか?」

「本当に違うって!! 僕の元いた世界では普通なの! ご飯もお菓子もすっごく美味しいけど、僕今までも今と同じ食事量で生きてきたから本当に大丈夫なんだよ」

「そうか? まぁユキがそう言うなら信じるけど、ちょっとでもお腹空いたら……えぇと、たしかユキの世話役はリディアだったな? リディアにでも頼んで何か食べるんだぞ?」

 リディアがお世話役ってロイに聞いてたのかな?
 頻繁に食べたりしたら僕ぶくぶく太っちゃうよ。でもここで断ったら何か言われそうだ……

「う、うん、わかったよ」

「本当に言うんだぞ?」

 アルがすっごいジト目で見てくる。これ、僕があんまり頼むつもりないってバレてますよね。

「う、うん、勿論だよ!

そ、それよりさ! ロイとアルの名前にはルとかドゥが入ってるのは何か意味があるの?!」

 ここは話を変えるしかない……! アルがまだジト目で見てくる。僕も負けずにじっとアルの目を見つめる……!

 おっとアルが諦めたようにため息をつきました!! 僕の勝ちです!!!

「はぁ、まったく……

名前のことだったな。ルは国王、ドゥは王妃の名前につくようになってるんだ。名前だけで国王か王妃かがわかるようになってるってことさ。
 ルやドゥが付いた名前を名乗ることが許されるのは即位した時から退位する時まで。だからレイやラスには何も付いていないってことだ。

 まぁ、レイはいずれ国王になるから即位すればルがつくけどな」

 へぇ、そんな意味があったのか。じゃあラスは一生何もつかないってことかぁ。

「あと、家族名が国名なのはその国の王族ってことを表すんだ」

 なるほど、だから名前にヴィルヘルムってはいってるんだね。

「なるほど、そんな意味があったんだね」




「ユキ、俺と結婚してヴィルヘルムにならない?」

「へぁっ?!」

 あっ、さっき断ろうとしてたのに忘れてた!

「おっそれいいな! ラスと結婚するなら戸籍上も俺の息子になるじゃないか!」

 えっアルも乗り気?! ちょっ、まってまって!!

「いやいやいや、僕結婚とかまだ考えてないから無理だよ!」

「俺じゃいや?」

 ラスが悲しそうに眉を下げて聞いてくる。

「うっ、嫌とかじゃなくて……

ロ、ロイ……」

 僕は困り果ててロイに助け舟を求める。

「はぁ……ラス、その辺にしておけ。ユキはまだここにきたばかりなんだ。
それに、ユキの世界じゃまだ女性がいたらしいからな。いきなり嫁になるなど到底受け入れられんだろうよ」

 あ、やっぱり僕はここじゃ嫁確定ですか、そうですよね。体格的にそうなりますよね。

「えっそうなの?」

「う、うん。半々ぐらいだったよ」

「そんなに! じゃあ男は恋愛対象にはならないかぁ」

「いや、僕はそこまで完全な異性愛者ってわけでもなかったから、男の人でもいいんだけど……」

「じゃあ俺と結婚しよ…う"っ!!」

 あ、ロイがラスの頭に拳を振り下ろした。すっごい音したけど、大丈夫かな……

「今止めたばかりだろう!! ユキの気持ちも考えろ!」

「うぅ、父上酷いです……だってこんなに可愛い子絶対モテますよ!! 悠長なこと言ってられないです!!」

「ごめんね、ラス。僕、たしかに男の人でも恋愛対象にはなるけど、ラスのことそう言う意味で好きなわけじゃないから……僕はやっぱり、結婚するならちゃんと好きになった人がいいな」

 うん、僕は好きでもないのに結婚なんて不誠実なことはできない。気持ちのない結婚なんてきっといつか破綻してしまう。そんなのは絶対に嫌だからね。

「うう、ユキに振られた……」

「馬鹿者、お前が早まるからだ」

「兄上まで……」

「ははっ、ラス、残念だったな! 
ま、戸籍上の親になれないのは残念だけど、もう俺はユキの親も同然だからな、別にラスと無理に結婚なんてしなくてもいいか!」

「母上も……俺に味方はいないのか……」

 絶望に染まったような顔をするラスにとりあえず謝っておく。

「えぇと、ごめんなさい?」

「ううううう、俺は諦めないからな!!」

 そう叫んだラスにロイとアルとレイは笑った。僕は苦笑いしかできないけどね。



 その後も5人で会話を楽しんだのだった。












 こんなに賑やかなのは久しぶりだと、少し日本のことが懐かしくなったのは内緒。

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