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本編
135 こっそり
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とりあえず市場のような場所を見に行くことになり、その近くまで馬車で送ってもらう。ダグと馬車を降りれば、まだ市場から少し距離があるのにも関わらず、すでに賑やかな空気が感じられた。
「いくか」
「うん!」
まだ見えていなくとも市場にはかなり人がいるということがわかる為、はぐれないようしっかりと手を繋いで歩きだした。万が一はぐれたときのために道は記憶してあるけど騎士さんにも迷惑がかかっちゃうからはぐれてはならないのです……!
市場へ近づけば近づくほど人はどんどん増えていった。たしかに僕が巻いているターバンみたいなものを巻いている人は結構いる。これならたしかに紛れられるかも。
「人が多いな。はぐれるなよ」
「うん!」
市場に入れば多くの人でごった返していた。呼び込みの声がそこら中から響き渡り、ものすごく賑やかだ。
「そこの坊ちゃん! どうだい、この髪飾りは。坊ちゃん可愛いからおまけしとくよ!」
ちょうど通りがかった装飾品のお店のおじさんに呼び止められた。ダグとちょっと覗いてみると、色とりどりのガラスを使った装飾品が並べられていた。
「あー、でも坊ちゃん身なりいいしうちの安物じゃ釣り合わねぇか……だがうちの物も綺麗だろう?」
「はい、透き通ったガラスが綺麗です!」
たしかに前に連れて行ってもらった装飾品のお店よりもかなり安いけれど、ここの物もすごく綺麗だ。繊細なガラスの装飾品はどこか儚さもあってそれがまた美しさを出している。
「そうかそうか! いやぁ、嬉しいねぇ。一つ記念にどうだい?」
「むむ……どうしようかな……」
すごく綺麗だし買うのは悪くないと思うのだけどどれが良いかわからない……
「これなんか似合うと思うぞ」
ダグが指したのは淡く青に色付けられたガラスの髪飾り。海を連想させる形で港町へ来た記念にもいいかもしれない。
「じゃあこれにする! おじさん、これください」
「あいよ! 三千ギルのところを二千ギルにまけとくよ」
「わぁ、ありがとうございます!」
お財布を取り出してお金を払おうとしたらスッとダグに止められ、ダグがお金を払ってしまった。
「ちょっとダグ、僕自分で買うよ」
自分といってもロイ達が用意してくれたお金だけども……
「いいじゃないか。記念だ」
もう! 前もそう言って僕に色々買ったのに!
「ぼ、坊ちゃん達夫婦なのかい……?! ……犯罪じゃあないかい?!」
どうやらおじさんが僕たちのブレスを見て夫婦だということに気付いたようだ。おそらく僕が十二歳くらいに見えているのだろう。僕とダグを交互に見てはなんとも言えない顔をしている。
「僕こう見えて成人していますよ? 訳あって身長は伸びなかったのですけど」
「ほ、本当かい?! はぁー……そりゃすまんかった。しかしその身長で成人してるのか……まるで神子様みたいだなぁ」
「あはは、よく言われます」
「だろうな! 神子様も結婚されたと聞くし、まさか坊ちゃんが神子様だったりしてな! なんてな!!」
おじさんはそういって豪快に笑うけど僕は全く笑えません……! バレたら僕のお出かけおしまいだもの……!
「僕が神子様な訳ないですよ! きっと神子様は今もお城にいらっしゃいますよ」
声が震えないように必死に取り繕う。
「そうだな! 神子様がこの街に来る訳ないわな!」
よ、よかったバレてない……!
「坊ちゃん達は旅行かなんかかい? 楽しんでいってくれよな!」
「は、はい! 楽しみます!」
髪飾りを受け取ってそそくさとお店を後にし、いくらか離れたとこに来たら一気にドバッと汗が出て来た。
「ば、バレなくてよかった……!」
「……いや、バレていたようだ」
「え?!」
ダグが受け取った紙袋の中を覗きながら言うものだから僕もそれをのぞいてみると、そこには三つの箱。そのうちの二つの箱には「おめでとう」と書かれている。
「……え?」
僕が買ってもらったのは一つなのに……
「ふむ……大きさから見るに、一つは選んだ髪飾りだろうが、この二つの箱は揃いの何かが入っているな……」
ダグが示したのは「おめでとう」とかかれた箱。
「おじさん、くれたの……?」
「そういうことだろうな。ユキが誰かわかった上で結婚祝いとしてくれたのだろう」
えぇえええ?? もうバレてたってのも衝撃なのに二つもくれたなんて……どこにつっこんだらいいのかわからない。
「いいの、かなぁ」
「もらっておくしかないだろう。戻ったところでユキの正体を肯定することになるしな。何も言わずにいてくれた以上、俺たちは騒ぎにしてはいけない」
「そっか……」
おじさん、僕が神子だってわかってて、お忍びで来てることを理解してくれたんだ……騒いだら僕がすぐ帰らなくちゃダメになることを察して、何も言わずにそっと結婚祝いだけ入れてくれたんだ……嬉しいなぁ。
「お礼、したいなぁ……」
「あとで騎士の誰かに届けさせるか」
「うん!」
直接行くのは無理だから申し訳ないけど誰かにお願いしよう!!
「ブレスレットはなるべく袖の内側に隠しておこう」
「そうだね。これ以上バレたら大変だ」
でも外すなんてことはしたくないからなるべく袖の中に隠して見えないようにするだけ。左手を使うときは気をつけないとね。
「もし僕たちの関係を聞かれたらなんて答える?」
「伴侶だと言いたいが……それだと意味がないからな。兄弟、か?」
「そうだね! えーと、ダグ兄様?」
「……変な気分になりそうだ」
うん、なんかのプレイみたいだよねー。僕も恥ずかしい。
「お店の人の前だけにしよっか。それ以外でも変える必要ってないよね」
「そうだな」
お店に入ったら僕は弟、弟……12歳の弟……悲しい。
「さて、他の店も見るか。多分全部は見れないとは思うがな」
たしかにまだ一軒しか見ていないとはいえ、まだまだ先が見えない。これを全部回ろうと思えば、きっと夜ご飯の時間が過ぎてしまう。程々にして引き返さないとね。
「ダグは欲しいものないの?」
「欲しいものか……特にないな。ユキと歩いているだけで楽しい」
「それは僕もだけど……」
それじゃあ困るのです……!
実は僕、ダグの誕生日知らなくて過ぎてしまってて……うぅ……結婚式の前に年齢の確認あって、ダグが26って言ったものだから、え? ってなって聞いたら八月に誕生日はあったって……
もう焦りに焦った僕にダグは祝うような歳でもないし気にしなくていいって言ってくれたけど、僕はそうは思えなくて。付き合い始めて最初の誕生日って結構重大なイベントだと思うのです……しかももう結婚してしまったよ。
だから遅くなってしまったけどこの機会になにかプレゼントを買いたいのだけどダグの欲しいものがわからないのです……
とりあえずお城に戻ってからケーキは焼くつもりなのだけど。幸いお菓子作りは好きでいろんなレシピを暗記してたからケーキは問題ないけど……
うぅ、だれかダグの欲しいものを教えてください……!
「いくか」
「うん!」
まだ見えていなくとも市場にはかなり人がいるということがわかる為、はぐれないようしっかりと手を繋いで歩きだした。万が一はぐれたときのために道は記憶してあるけど騎士さんにも迷惑がかかっちゃうからはぐれてはならないのです……!
市場へ近づけば近づくほど人はどんどん増えていった。たしかに僕が巻いているターバンみたいなものを巻いている人は結構いる。これならたしかに紛れられるかも。
「人が多いな。はぐれるなよ」
「うん!」
市場に入れば多くの人でごった返していた。呼び込みの声がそこら中から響き渡り、ものすごく賑やかだ。
「そこの坊ちゃん! どうだい、この髪飾りは。坊ちゃん可愛いからおまけしとくよ!」
ちょうど通りがかった装飾品のお店のおじさんに呼び止められた。ダグとちょっと覗いてみると、色とりどりのガラスを使った装飾品が並べられていた。
「あー、でも坊ちゃん身なりいいしうちの安物じゃ釣り合わねぇか……だがうちの物も綺麗だろう?」
「はい、透き通ったガラスが綺麗です!」
たしかに前に連れて行ってもらった装飾品のお店よりもかなり安いけれど、ここの物もすごく綺麗だ。繊細なガラスの装飾品はどこか儚さもあってそれがまた美しさを出している。
「そうかそうか! いやぁ、嬉しいねぇ。一つ記念にどうだい?」
「むむ……どうしようかな……」
すごく綺麗だし買うのは悪くないと思うのだけどどれが良いかわからない……
「これなんか似合うと思うぞ」
ダグが指したのは淡く青に色付けられたガラスの髪飾り。海を連想させる形で港町へ来た記念にもいいかもしれない。
「じゃあこれにする! おじさん、これください」
「あいよ! 三千ギルのところを二千ギルにまけとくよ」
「わぁ、ありがとうございます!」
お財布を取り出してお金を払おうとしたらスッとダグに止められ、ダグがお金を払ってしまった。
「ちょっとダグ、僕自分で買うよ」
自分といってもロイ達が用意してくれたお金だけども……
「いいじゃないか。記念だ」
もう! 前もそう言って僕に色々買ったのに!
「ぼ、坊ちゃん達夫婦なのかい……?! ……犯罪じゃあないかい?!」
どうやらおじさんが僕たちのブレスを見て夫婦だということに気付いたようだ。おそらく僕が十二歳くらいに見えているのだろう。僕とダグを交互に見てはなんとも言えない顔をしている。
「僕こう見えて成人していますよ? 訳あって身長は伸びなかったのですけど」
「ほ、本当かい?! はぁー……そりゃすまんかった。しかしその身長で成人してるのか……まるで神子様みたいだなぁ」
「あはは、よく言われます」
「だろうな! 神子様も結婚されたと聞くし、まさか坊ちゃんが神子様だったりしてな! なんてな!!」
おじさんはそういって豪快に笑うけど僕は全く笑えません……! バレたら僕のお出かけおしまいだもの……!
「僕が神子様な訳ないですよ! きっと神子様は今もお城にいらっしゃいますよ」
声が震えないように必死に取り繕う。
「そうだな! 神子様がこの街に来る訳ないわな!」
よ、よかったバレてない……!
「坊ちゃん達は旅行かなんかかい? 楽しんでいってくれよな!」
「は、はい! 楽しみます!」
髪飾りを受け取ってそそくさとお店を後にし、いくらか離れたとこに来たら一気にドバッと汗が出て来た。
「ば、バレなくてよかった……!」
「……いや、バレていたようだ」
「え?!」
ダグが受け取った紙袋の中を覗きながら言うものだから僕もそれをのぞいてみると、そこには三つの箱。そのうちの二つの箱には「おめでとう」と書かれている。
「……え?」
僕が買ってもらったのは一つなのに……
「ふむ……大きさから見るに、一つは選んだ髪飾りだろうが、この二つの箱は揃いの何かが入っているな……」
ダグが示したのは「おめでとう」とかかれた箱。
「おじさん、くれたの……?」
「そういうことだろうな。ユキが誰かわかった上で結婚祝いとしてくれたのだろう」
えぇえええ?? もうバレてたってのも衝撃なのに二つもくれたなんて……どこにつっこんだらいいのかわからない。
「いいの、かなぁ」
「もらっておくしかないだろう。戻ったところでユキの正体を肯定することになるしな。何も言わずにいてくれた以上、俺たちは騒ぎにしてはいけない」
「そっか……」
おじさん、僕が神子だってわかってて、お忍びで来てることを理解してくれたんだ……騒いだら僕がすぐ帰らなくちゃダメになることを察して、何も言わずにそっと結婚祝いだけ入れてくれたんだ……嬉しいなぁ。
「お礼、したいなぁ……」
「あとで騎士の誰かに届けさせるか」
「うん!」
直接行くのは無理だから申し訳ないけど誰かにお願いしよう!!
「ブレスレットはなるべく袖の内側に隠しておこう」
「そうだね。これ以上バレたら大変だ」
でも外すなんてことはしたくないからなるべく袖の中に隠して見えないようにするだけ。左手を使うときは気をつけないとね。
「もし僕たちの関係を聞かれたらなんて答える?」
「伴侶だと言いたいが……それだと意味がないからな。兄弟、か?」
「そうだね! えーと、ダグ兄様?」
「……変な気分になりそうだ」
うん、なんかのプレイみたいだよねー。僕も恥ずかしい。
「お店の人の前だけにしよっか。それ以外でも変える必要ってないよね」
「そうだな」
お店に入ったら僕は弟、弟……12歳の弟……悲しい。
「さて、他の店も見るか。多分全部は見れないとは思うがな」
たしかにまだ一軒しか見ていないとはいえ、まだまだ先が見えない。これを全部回ろうと思えば、きっと夜ご飯の時間が過ぎてしまう。程々にして引き返さないとね。
「ダグは欲しいものないの?」
「欲しいものか……特にないな。ユキと歩いているだけで楽しい」
「それは僕もだけど……」
それじゃあ困るのです……!
実は僕、ダグの誕生日知らなくて過ぎてしまってて……うぅ……結婚式の前に年齢の確認あって、ダグが26って言ったものだから、え? ってなって聞いたら八月に誕生日はあったって……
もう焦りに焦った僕にダグは祝うような歳でもないし気にしなくていいって言ってくれたけど、僕はそうは思えなくて。付き合い始めて最初の誕生日って結構重大なイベントだと思うのです……しかももう結婚してしまったよ。
だから遅くなってしまったけどこの機会になにかプレゼントを買いたいのだけどダグの欲しいものがわからないのです……
とりあえずお城に戻ってからケーキは焼くつもりなのだけど。幸いお菓子作りは好きでいろんなレシピを暗記してたからケーキは問題ないけど……
うぅ、だれかダグの欲しいものを教えてください……!
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