あの人と。

Haru.

文字の大きさ
153 / 396
本編

149 母は強し

しおりを挟む
「さて、では私から幸仁の家族をこや世界へ連れてきた経緯を説明しようか」


 そう言って神様は父さん達にあったことを全て話してくれた。父さん達は僕を忘れたはずなのになにかの喪失感を覚えたこと。兄さん達の提案でつい1ヶ月前に家族会議を開いたこと。そこでまず蒼兄さんが思い出し、続いて翠兄さん、父さん母さんも同じように思い出したこと。

 とりあえず父さん達が僕を思い出して、神様が連れてきたのはわかったけど……

「でも、どうしてピアノと楽譜は残っていたのです? 僕の私物がなくなっていたということは、ピアノはまだしも楽譜は無くなっていてもおかしくないと思うのですけど」

「それがね、ピアノと楽譜には家族全員の想いが詰まっていたようなんだ。幸仁の教科書だとか参考書だとか服だとかは幸仁の思い入れだけが詰まっているものとしてなくなってしまったけれど、楽譜とピアノは違った。君の家族は幸仁のピアノが大好きだからね。どうにもつながりが強すぎて消えなかったようだ」

 なるほど……? なんとなくだけど理解した。

「確かに俺たち家族はみんな幸仁のピアノが大好きだからなぁ。そう思うと半年以上聴けていないのがなんだか悲しいな」

「そうねぇ……コンクールだって楽しみにしていたのにねぇ」

 あ、そういえば僕ここに来る前にコンクールにエントリーしてたや。予選がもうすぐだったんだけどなぁ……全国決勝ももう終わっちゃったか。ちょっと残念だけど仕方ないや。

「……それは間接的に幸仁をここれ連れてきた私を責めているのかな」

「まぁまぁまぁ、そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないわ」

 母さん……神様に物怖じしないのはすごいな……そういえば母さんってこういう性格だったなぁ……

「すまなかったよ……けれどこうして君達は幸仁を思い出して無事再会できた、それで許しておくれ。ゲートを作っていつでも会えるようにもしたのだし」

「え、いつでも会えるのです?」

 僕、今日だけだと思ってたんだけど……

「会えるようにした。だからこそ1ヶ月もかかったのさ。君は家族の幸せをの願った。しかし君の家族は君がいないと幸せになれない。ならばいつでも会えるようにしなくては幸仁の願いを聞き入れた私は嘘をついたことになってしまう。神は嘘をつけないから特別措置だよ」

 ……なんだか僕神様にも甘やかされてる気がする。

「幸仁は私の愛し子だからね。甘やかすさ」

 わぁ、心読まれた。突然心の声に返事を返してくるの本当にびっくりする。

「ああそうだ、君達に言っておくけれど、日本のものをこちらに持ち込んではいけないよ。逆にこの世界のものを日本に持ち込んでもいけない。服は別だけどね。お互いの文明が狂ってしまうような事態は避けなければならない。ま、持ち込もうとしても物が消滅するだけだからゲートの存在自体には影響ないけれど。どうしても何かを持ち込みたいときはゲートに触れて持ち込んでもいいか心の中で私に尋ねなさい。私が許可を出せば持ち込んでも構わない」

「わかりました」

 まぁ、そうだよね。ここと日本じゃだいぶ色んなところ違うし、混ざるのはちょっとね……結構な問題になりそうだし、日本の科学を持ち込んでこの国が突然発展したなんてことになれば、下手したら戦争ものだよ。そんな危険なことは絶対ダメ。

「あとはそうだな。その髪と目を周りに見せないように。なるべくこの部屋から出ないのが一番だけど、もし出るときは今日渡したローブを着ること。城の外は絶対に出ないでくれ」

「わかりました、それで幸仁に会えるのなら構いません」

「うん、私からはそれくらいかな……ああ、幸仁は向こうに行けないから、それも覚えておいて。君達も、幸仁の存在を日本で言いふらしてはダメだよ。多分変な人と思われるだけだろうけど、念のためね」

 変な人……いや、まぁいない人をいるだなんて言ったら怪しい人と思われかねないけども。しかも一家全員となったら……うわぁ、一家まるごと危ない人レッテル貼られるね。

「じゃあゆきちゃんがうちのピアノを弾くことはもうないのねぇ……」

「あ……」

 ローン組んで買ってもらったのに弾かないのは申し訳ないなぁ……

「ならばピアノはこっちへ持ってこようか? この部屋を少し広くして……ピアノピアノ……これで良し、と」

 え、今一瞬で部屋がちょっと広くなってピアノが現れたのですが。

「今のどうやったんです……?!」

「神だから」

 微妙に答えになってないけど、ああ、うん……そうだね、部屋まるまる作れるもんねー。ちょっと広くしてピアノを置くくらい簡単だよねー。

「まぁ! ならここに来たらゆきちゃんのピアノが聴けるのね! 嬉しいわぁ」

「今すぐ聴きたいけどもう夜だしなぁ……明日また来てもいいか? 何か予定あるか?」

「予定……リディア、何か予定ある?」

「いいえ、来週いっぱいまでお休みですよ」

「そんなに?! どうして?」

「新婚だということをお忘れなのですか? 新婚夫婦は結婚式前後1ヶ月お休みですよ。ダグラスもそうですし」

 あ……そうだった。今日だって僕たちの結婚披露だったし。

「今日はゴタゴタしてたから忘れちゃってた……そっか、でもとりあえず明日は何もないんだね。父さん、明日はいつ来る?」

「そうだなぁ……昼頃か? お昼を食べてから来るよ」

「母さんのご飯……」

 ちょっと食べたいかも……でも日本の物って持ってこれないし……

「ふむ、なら食べ物はいいことにしようか。この部屋で消費し切り、もし無理だったら持ち帰るならね。まぁ、食べ物といっても作ったものに限るけれどね」

「あら! なら久し振りにお母さん頑張って作るわ! ゆきちゃんの好きなものたっくさん作って来るわね!」

 やったぁ!! 母さんのご飯が久しぶりに食べれる!

「ゆきちゃんの旦那様はどうかしら? 一緒に食べる?」

「しかし、私の分までの用意は少々難しいかと……」

「母さん、この世界の人の食べる量すっごく多いんだ。ダグは僕の4倍は軽く食べるよ。僕もこっちに来てから少し食べる量が増えたから……全員分はきびしいと思う」

「まぁまぁまぁ、だからこの世界の人たちってみんな身体が大きいのねぇ……でもそうね、それなら全部作るっていうのはちょっと難しいかもしれないわ」

 だよね。もし作るとしたら……10人前くらいは用意しないと足りない。僕がいた頃の倍なんて作れないだろう。

「ならば残りはこちらでご用意いたします。色々なものを少しずつ食べられるようにいたしましょう」

「いい考えだわ! ならみんなで食べられるものを持ってきてお昼はちょっとしたパーティーね!」

 なるほど、それならいいかも。僕も母さんのご飯食べたいし、そうしてもらおう。明日のお昼がすっごく楽しみになった。

「時間は12時くらいでいいかしら?」

「ええ、そのくらいで」

「わかったわ! じゃあ明日の予定も決まったことだし、そろそろお暇しましょうか。ゆきちゃんももうそろそろ寝なくっちゃね」

「もう帰るの?」

「あらあら、明日も来るわよ?」

「うん……」

 わかってはいるけども……久しぶりに会えてちょっと離れがたいというかなんというか……

「あー、俺等の幸仁はほんっとに可愛いな」

「明日絶対来るからな」

 ぎゅーっと抱きしめてくれる兄さん達を僕も抱きしめ返す。

「うん、絶対来てね」

「勿論だ!」

「ゆきちゃん、お母さんももう一度ゆきちゃんを抱きしめたいわぁ」

「父さんもな」

 兄さん達から離れて腕を広げて待っている母さんと父さんの腕の中へ飛び込む。あったかくて優しい、懐かしい香りにまた涙腺が少し緩んだのは内緒。

「……明日、待ってるね」

「ええ! 明日はゆきちゃんとゆきちゃんの旦那様の馴れ初めも聞かせてね?」

「う……うん、わかった。父さん、母さん、兄さん、お休みなさい」

 父さん達が新しく僕の部屋の中に出来た扉を潜り行ってしまったのを見送ると、なんだかやっぱり寂しい気持ちになった。そんな僕をダグはそっと抱きしめてくれて、寂しい気持ちは和らいだ。



「そういえば、なんで父さん達も言葉がわかったんです?」

「幸仁と同じ言語に関する加護をかけておいたからね」

 なるほど、そういうことか。
しおりを挟む
感想 114

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

時間を戻した後に~妹に全てを奪われたので諦めて無表情伯爵に嫁ぎました~

なりた
BL
悪女リリア・エルレルトには秘密がある。 一つは男であること。 そして、ある一定の未来を知っていること。 エルレルト家の人形として生きてきたアルバートは義妹リリアの策略によって火炙りの刑に処された。 意識を失い目を開けると自称魔女(男)に膝枕されていて…? 魔女はアルバートに『時間を戻す』提案をし、彼はそれを受け入れるが…。 なんと目覚めたのは断罪される2か月前!? 引くに引けない時期に戻されたことを嘆くも、あの忌まわしきイベントを回避するために奔走する。 でも回避した先は変態おじ伯爵と婚姻⁉ まぁどうせ出ていくからいっか! 北方の堅物伯爵×行動力の塊系主人公(途中まで女性)

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

処理中です...