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After Story
慣れて下さい
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現在、並んで座る僕とダグの前には挙動不審なサダン君がいます。僕も恥ずかしさに穴を掘ってでも入りたい気持ちだけど、目の前に度を越して挙動不審な人がいたらいっそ冷静になるものですね。
だってサダン君さっきからお茶にお砂糖を投入しては混ぜて一旦置いておいてキョロキョロと視線を彷徨わせて僕と視線があったらまたお砂糖を一個投入して混ぜて、を繰り返してるんだもん。もはやそれは砂糖水だと思うよ。だってもう溶けなくてさっきからジャリジャリいってるもん。
「サダン君……」
「おおぉうなんだ!? 俺は聞いてないからな!??」
「……うん、その件はもう置いておこう。お互いにダメージ受けるだけな気がする」
「……そうだな、そうしよう」
やっと落ち着いたサダン君はそっとカップを手にして……あっ……
「ごっふ……! あっま……!」
君がそうしたんだよ……
見事にお茶を吹き出したサダン君に僕は何も言えませんでした。ちなみに砂糖水と化したお茶はリディアが回収して新たに美味しいお茶を渡しましたよ。多分飲む前に回収しなかったのはリディアが丹精込めて入れたオリジナルブレンドティーが残念な状態にされた腹いせだと思います。リディアのそういうところ嫌いじゃないよ。
「大丈夫?」
「おう……」
流石に若干やつれた気がするサダン君に甘いものが好きでも甘いお茶はダメなんだね、とは言えません。
「ふふ、無事そうでよかった」
「ああ……ユーキもな。……って神子様だったんだよな……いや、ですよね、か……?」
「……騙してて、ごめんなさい。サダン君の言う通り、僕は今代の神子、ユキヒト・アズマ・リゼンブルだよ。……幻滅した、かな……」
大事な友達を失ってしまったらどうしよう……サダン君がいたからこそ、僕は学園で楽しく過ごせたのに……
「は!? いやいやいや、何でそうなった!? 俺は神子だったことに驚いただけで怒っちゃいねぇし幻滅なんてありえないからな!?」
「でも……僕、サダン君に嘘ついてた……」
「それは仕方ないだろ。一応警備のしっかりした学園とは言え一般の学園に神子が来るなんて騒ぎになるだろうし、よくない考えを持つ奴らが狙ってくるに違いない。だからユーキは身分を偽って留学してきたんだろ? どこから情報が漏れるかなんてわかんねぇし、言えなかったのは仕方ねぇよ」
いつも通りの調子でそう言ったサダン君に、思わず僕はうるっときた。
「俺は別にユーキが何者でもいいさ。ユーキの学園での姿に偽りがあったとは思えねぇし、俺が接してきたユーキはユーキのそのままの姿だったと思うからさ」
照れ臭いけどな、って言って笑ったサダン君に、おもわず僕は立ち上がってサダン君の方へ回り込み、そのまま抱きついた。僕、込み上げてくる涙を堪えるのに必死だよ、サダン君。
「お、っと……はは、泣くなよ」
「……泣いてないもん。……ありがとう、サダン君。まだ僕と、友達でいてくれる……?」
「勿論だ! 俺こそ頼むよ。ただの庶民だけど仲良くしてくれ」
「そんなの僕だってもともと庶民だもん。こっちに来てから神子って言われてるだけで、ちょっと髪と目が黒くて魔力が多いだけの運動音痴なただの人間だよ」
「……黒髪も黒目もこの世界にいないからな。あとお前の魔力は規格外だ」
さっきまでポンポン背中を叩いてくれてた手がピタリと止まって呆れたような声でそう言われ、そっとサダン君の顔を見たら表情まで呆れたようだった。
「むぅ」
「ぶはっ、お前の中身は13歳らしくないと思ってたけどそんな表情してたら子供っぽいな! 本当に成人してるのか?」
「してるもん!!」
ブニブニとほっぺたを潰されて僕は不満です!! サダン君より年上なんだからね!!
……でも、そんなやりとりが、本当にサダン君が友達でいてくれる証明のようで、嬉しくもあった。
「そういえば、俺はなんて呼べばいいんだ? ユーキ、じゃなくて本当はユキヒトなんだよな……」
「うーん……ヴィルヘルムならユキ、でいいんだけど……コルンガにいる間はユーキかな?」
「んじゃとりあえずはユーキだな。俺がヴィルヘルムに行ったらユキに変えたらいいのか」
「そうだね」
ヴィルヘルムに戻ってもサダン君と友達でいられるなんて嬉しいなぁ……騎士団に入ったら、また一緒に遊べるよね。
あ、ちなみに騎士団は基本的にお城の兵舎所属なのですよ。各地にあるのは兵士団。騎士団の下部組織です。そこにお城から騎士さんが派遣されることもあるけれど、交代制だから長くても1年くらいで帰ってくるのです。だからサダン君が騎士になったら基本的にお城の敷地内にいるからいつでも会えるのです!!
「……で、だな。ユーキの横にいるのって……」
「あぁ、ラグルス改め僕の旦那様のダグラスです。ヴィルヘルムの騎士団の第1部隊隊長で僕の護衛騎士長! えへへ、かっこいいでしょ」
「や、やっぱり……? うわ、すげぇ……憧れの人が目の前に……あ、握手して下さい」
「ああいいぞ。よろしくな」
「こ、こちらこそ……うわ、手まで筋肉を感じるとか……すげぇ……」
握手を交わした2人をニコニコと見つめる。よかったねぇ、サダン君。憧れの人に会えて。まぁ本当はずっと会ってたけどね。
「……俺絶対ヴィルヘルム行くわ」
「ふふ、サダン君が騎士になるの楽しみにしてるよ! ……ダグの訓練は鬼みたいにキツイって言われてるけど」
後半はそっと呟くだけに留めました。それでもダグには聞こえたようで視線を感じるけど。だって本当のことだもん。とりあえず僕はそんな訓練中のダグもかっこいいと思うよって視線を送っておきます。
「最後なんて言ったんだ?」
「なんでもないよ! 頑張ってね!」
なるまでもなってからもね……!
「おう!」
ニカッと笑ったサダン君にはとりあえず心の中で合掌しておきます。南無三。
「そういえば、留学が終わったら結婚して他国にって……」
「ああ、それは……」
「ユキに悪い虫をつかせないための策だ。少しでもユキに言い寄る男を減らしたかったから俺がその案を提案した。ユキは俺以外と結婚する予定などない」
……うん、ダグの言った通りです。ダグラスさん嫉妬深い上に独占欲が強いので……僕はダグ以外なんて興味ないのにねぇ。でもまぁあんな事件も起きたくらいだし、婚約者がいるって設定は学園内では結構安全のためにって意味では良かったのかも……?
「……俺の憧れの人が……ただの嫁バカ……」
「馬鹿とはなんだ。ユキの可愛さなら仕方ないだろう」
ダグが大真面目にそう言うとサダン君はじっと僕を見つめて……
「……たしかに。あまり心配掛けさせるなよ、ユーキ」
「僕が悪いの!?」
なんでサダン君納得しちゃうかなぁ!? 僕はツッコミ役を募集したいです。ツッコミ不在は辛いものがあるよ。
「ユキは可愛すぎるからな。ほら、こっちへ来い」
「むー……」
行きますけども。行きますけどもね!! ちょっと不満な僕はいつもより乱暴に招かれたダグの膝の上に座りました。……まぁ、想像通りまったくもってビクともしなかったんだけども。それどころか楽しそうにくつくつと笑われました。でも頭を優しく撫でてくれたので僕の機嫌はもちろんすぐに回復。そんな様子も笑われたけど気にしません。だってダグの手が気持ちいいんだもん。
「……普段はそんな感じなのか……?」
「残念ながら普段は今よりも断然甘いですよ。どれくらいかと言いますとサダン様が先ほどお飲みになられた紅茶よりもよほど甘いです」
「……マジ?」
うわぁ、お前……って顔で見ないでよ、サダン君。だってダグと常にひっついていたいんだもん。学園の中で引っ付かないのがどれだけストレスか……! 本当なら手を繋いで登校くらいしたいです。学園では主従関係として見られるから出来ないけど。悲しい。
僕としてはサダン君には僕とダグの甘々な空気にも慣れて欲しいです。
「いや、無理だわ」
慣れて欲しいです。無理だなんて言葉は聞こえませんでした。サダン君ならきっとできるよ。訓練と同じくらい頑張ってね。
だってサダン君さっきからお茶にお砂糖を投入しては混ぜて一旦置いておいてキョロキョロと視線を彷徨わせて僕と視線があったらまたお砂糖を一個投入して混ぜて、を繰り返してるんだもん。もはやそれは砂糖水だと思うよ。だってもう溶けなくてさっきからジャリジャリいってるもん。
「サダン君……」
「おおぉうなんだ!? 俺は聞いてないからな!??」
「……うん、その件はもう置いておこう。お互いにダメージ受けるだけな気がする」
「……そうだな、そうしよう」
やっと落ち着いたサダン君はそっとカップを手にして……あっ……
「ごっふ……! あっま……!」
君がそうしたんだよ……
見事にお茶を吹き出したサダン君に僕は何も言えませんでした。ちなみに砂糖水と化したお茶はリディアが回収して新たに美味しいお茶を渡しましたよ。多分飲む前に回収しなかったのはリディアが丹精込めて入れたオリジナルブレンドティーが残念な状態にされた腹いせだと思います。リディアのそういうところ嫌いじゃないよ。
「大丈夫?」
「おう……」
流石に若干やつれた気がするサダン君に甘いものが好きでも甘いお茶はダメなんだね、とは言えません。
「ふふ、無事そうでよかった」
「ああ……ユーキもな。……って神子様だったんだよな……いや、ですよね、か……?」
「……騙してて、ごめんなさい。サダン君の言う通り、僕は今代の神子、ユキヒト・アズマ・リゼンブルだよ。……幻滅した、かな……」
大事な友達を失ってしまったらどうしよう……サダン君がいたからこそ、僕は学園で楽しく過ごせたのに……
「は!? いやいやいや、何でそうなった!? 俺は神子だったことに驚いただけで怒っちゃいねぇし幻滅なんてありえないからな!?」
「でも……僕、サダン君に嘘ついてた……」
「それは仕方ないだろ。一応警備のしっかりした学園とは言え一般の学園に神子が来るなんて騒ぎになるだろうし、よくない考えを持つ奴らが狙ってくるに違いない。だからユーキは身分を偽って留学してきたんだろ? どこから情報が漏れるかなんてわかんねぇし、言えなかったのは仕方ねぇよ」
いつも通りの調子でそう言ったサダン君に、思わず僕はうるっときた。
「俺は別にユーキが何者でもいいさ。ユーキの学園での姿に偽りがあったとは思えねぇし、俺が接してきたユーキはユーキのそのままの姿だったと思うからさ」
照れ臭いけどな、って言って笑ったサダン君に、おもわず僕は立ち上がってサダン君の方へ回り込み、そのまま抱きついた。僕、込み上げてくる涙を堪えるのに必死だよ、サダン君。
「お、っと……はは、泣くなよ」
「……泣いてないもん。……ありがとう、サダン君。まだ僕と、友達でいてくれる……?」
「勿論だ! 俺こそ頼むよ。ただの庶民だけど仲良くしてくれ」
「そんなの僕だってもともと庶民だもん。こっちに来てから神子って言われてるだけで、ちょっと髪と目が黒くて魔力が多いだけの運動音痴なただの人間だよ」
「……黒髪も黒目もこの世界にいないからな。あとお前の魔力は規格外だ」
さっきまでポンポン背中を叩いてくれてた手がピタリと止まって呆れたような声でそう言われ、そっとサダン君の顔を見たら表情まで呆れたようだった。
「むぅ」
「ぶはっ、お前の中身は13歳らしくないと思ってたけどそんな表情してたら子供っぽいな! 本当に成人してるのか?」
「してるもん!!」
ブニブニとほっぺたを潰されて僕は不満です!! サダン君より年上なんだからね!!
……でも、そんなやりとりが、本当にサダン君が友達でいてくれる証明のようで、嬉しくもあった。
「そういえば、俺はなんて呼べばいいんだ? ユーキ、じゃなくて本当はユキヒトなんだよな……」
「うーん……ヴィルヘルムならユキ、でいいんだけど……コルンガにいる間はユーキかな?」
「んじゃとりあえずはユーキだな。俺がヴィルヘルムに行ったらユキに変えたらいいのか」
「そうだね」
ヴィルヘルムに戻ってもサダン君と友達でいられるなんて嬉しいなぁ……騎士団に入ったら、また一緒に遊べるよね。
あ、ちなみに騎士団は基本的にお城の兵舎所属なのですよ。各地にあるのは兵士団。騎士団の下部組織です。そこにお城から騎士さんが派遣されることもあるけれど、交代制だから長くても1年くらいで帰ってくるのです。だからサダン君が騎士になったら基本的にお城の敷地内にいるからいつでも会えるのです!!
「……で、だな。ユーキの横にいるのって……」
「あぁ、ラグルス改め僕の旦那様のダグラスです。ヴィルヘルムの騎士団の第1部隊隊長で僕の護衛騎士長! えへへ、かっこいいでしょ」
「や、やっぱり……? うわ、すげぇ……憧れの人が目の前に……あ、握手して下さい」
「ああいいぞ。よろしくな」
「こ、こちらこそ……うわ、手まで筋肉を感じるとか……すげぇ……」
握手を交わした2人をニコニコと見つめる。よかったねぇ、サダン君。憧れの人に会えて。まぁ本当はずっと会ってたけどね。
「……俺絶対ヴィルヘルム行くわ」
「ふふ、サダン君が騎士になるの楽しみにしてるよ! ……ダグの訓練は鬼みたいにキツイって言われてるけど」
後半はそっと呟くだけに留めました。それでもダグには聞こえたようで視線を感じるけど。だって本当のことだもん。とりあえず僕はそんな訓練中のダグもかっこいいと思うよって視線を送っておきます。
「最後なんて言ったんだ?」
「なんでもないよ! 頑張ってね!」
なるまでもなってからもね……!
「おう!」
ニカッと笑ったサダン君にはとりあえず心の中で合掌しておきます。南無三。
「そういえば、留学が終わったら結婚して他国にって……」
「ああ、それは……」
「ユキに悪い虫をつかせないための策だ。少しでもユキに言い寄る男を減らしたかったから俺がその案を提案した。ユキは俺以外と結婚する予定などない」
……うん、ダグの言った通りです。ダグラスさん嫉妬深い上に独占欲が強いので……僕はダグ以外なんて興味ないのにねぇ。でもまぁあんな事件も起きたくらいだし、婚約者がいるって設定は学園内では結構安全のためにって意味では良かったのかも……?
「……俺の憧れの人が……ただの嫁バカ……」
「馬鹿とはなんだ。ユキの可愛さなら仕方ないだろう」
ダグが大真面目にそう言うとサダン君はじっと僕を見つめて……
「……たしかに。あまり心配掛けさせるなよ、ユーキ」
「僕が悪いの!?」
なんでサダン君納得しちゃうかなぁ!? 僕はツッコミ役を募集したいです。ツッコミ不在は辛いものがあるよ。
「ユキは可愛すぎるからな。ほら、こっちへ来い」
「むー……」
行きますけども。行きますけどもね!! ちょっと不満な僕はいつもより乱暴に招かれたダグの膝の上に座りました。……まぁ、想像通りまったくもってビクともしなかったんだけども。それどころか楽しそうにくつくつと笑われました。でも頭を優しく撫でてくれたので僕の機嫌はもちろんすぐに回復。そんな様子も笑われたけど気にしません。だってダグの手が気持ちいいんだもん。
「……普段はそんな感じなのか……?」
「残念ながら普段は今よりも断然甘いですよ。どれくらいかと言いますとサダン様が先ほどお飲みになられた紅茶よりもよほど甘いです」
「……マジ?」
うわぁ、お前……って顔で見ないでよ、サダン君。だってダグと常にひっついていたいんだもん。学園の中で引っ付かないのがどれだけストレスか……! 本当なら手を繋いで登校くらいしたいです。学園では主従関係として見られるから出来ないけど。悲しい。
僕としてはサダン君には僕とダグの甘々な空気にも慣れて欲しいです。
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