あの人と。

Haru.

文字の大きさ
324 / 396
After Story

大人な時間

しおりを挟む
「ダグ、誕生日おめでとう!」

「ありがとう、ユキ」

 今日は待ちに待ったダグの誕生日です! 僕とダグは朝から温室にこもって2人で過ごすことに。本当はルリも、と思ったんだけど気を利かせたのか朝からお出かけするって言い出して、止める間もなく出て行っちゃったのです。ルリ用に用意していた果物は魔法鞄に入れておいてまた今度あげることにします。

「はい、これ僕から」

「開けてもいいか?」

「うん!」

 ダグにプレゼントを渡すと、ダグは楽しそうに丁寧に包装を剥がし始めた。まずダグが開けたのはお財布。暗い色味の革でできたシックなお財布はダグに似合うように作ってもらったものです。僕達の紋章が小さく刻印されています。一点物だよ!

「財布か。そろそろ変えようと思っていたんだ。ふむ、使いやすそうだ」

「ふふ、使えば使うほど手に馴染んでくるみたいだよ」

「それは楽しみだな。色合いの変化も楽しみだ」

 早速お財布の中身を移し替えてクルクルと色んな角度から見るダグに嬉しくなる。思ったより気に入ってくれたみたいです。

 次にダグが開けたのはアンクレットだった。まぁ、お酒はまだ渡してないから必然的にそれになるんだけどね。しゃらりと涼やかな音を立てるそれは僕も同じものを作ったからお揃いです。

「アンクレットか? 綺麗な細工だな」

「うん。僕も同じのを作ったの。ダグが僕の誕生日にくれたアンクレットにも合うデザインにしてもらったから、2つともつけられるんだ」

 ちらりとズボンの裾を捲ってアンクレットを見せるとダグは嬉しそうに目元を緩ませて。

「揃いか、嬉しいよ。ありがとうな」

 ぎゅっと抱きしめながらちゅっとキスをしてくれるダグに思わずにへっと笑ってしまいます。愛しい人が喜んでくれて幸せじゃないはずがないよね! 今の僕、すっごく満たされてます。


 そのあとはお昼までいちゃいちゃして、お昼を食べたらケーキに感激したダグにひたすら甘やかされてまたいちゃいちゃ……とにかく一日中いちゃいちゃし倒しました。夜ご飯は流石に部屋で食べることになっていたから、夕方には部屋に戻ってリディアが来るまでまたゲフンゲフン。

 夜ご飯を持ってやってきたリディアは僕とダグを直視しないように必死にあらぬ方向に視線を向けています。報復が怖いからわざと視界に入ったりはしません。命大事に。

 ……というか、ルリは? 朝出かけてから、今はもう夜ご飯の時間なのにルリはまだ帰ってきていない。今までは夜ご飯までには帰ってきていたから心配です。

「ねぇリディア、ルリ知らない?」

「ルリ様は今日はここに泊まる、とおっしゃってアルバスの部屋に侵入したとアルバスから報告がございましたよ」

「……アルバスさんの?」

 一体なんでアルバスさんの部屋に……?

「今日は母様と父様を2人きりにしてあげる、だそうですよ」

 なんていい子なの……! でもルリ、僕とダグは一瞬たりともルリを邪魔だと思ったことなんてないんだからね……! ルリは僕達にとって大事な大事な子なんだから……!

「明日はたんと甘やかしてやらないとな」

「うん! でも、ルリが大人になるの早すぎるよね。僕はもっとワガママでもいいと思うんだけど」

 気遣いのできるいい子なんだけど、我慢してるんじゃないかって思っちゃいます。もっと甘えて欲しいなぁ。

「ユキに似たんだろう。ユキだって我儘を言わないだろう?」

「そうかなぁ」

 僕、みんながそう認識してないだけで結構ワガママだと思うよ? 甘やかされてる自覚は多いにあります。みんながいなかったら生きていける自信ないもん。

「ユキのは我儘というよりおねだりくらいの可愛らしいものだからな。専用の庭園が欲しいとか離れの屋敷が欲しいとかそういうのは一切言わないからな。珍しい宝石が欲しいとも強請らないし」

「庭園!? お屋敷!? 宝石!? いいいいらないよ!?」

 規模が違いすぎる……! 僕的にはダグに抱っこを強請ったり一緒にお昼寝してもらったり腕枕してもらったりっていうところで我儘だと……だめだ、ダグが言ったものとの差が激しすぎて僕が思い浮かべたのがものすごく些細なことに感じる……僕的には十分我儘なのに……

「楽師や劇団を呼ぶことも望まれませんしねぇ」

 本気で僕のって我儘だと認識されてなかったんだ……ダグもリディアも規模が違いすぎるよ……元庶民の僕にはその基準が理解できません!

「1回くらい大きな我儘を言われてみたいんだが」

「うえ!? えっと、えっと……み、みんなでバーベキューがしたい!」

「うん、ユキはそのままでいてくれよ」

 僕的には頑張って振り絞ったのにものすごく生温かい目を向けられました。なぜ。

 みんなって、みんなだよ!? 騎士さんもみんな! い、いっぱい材料もいるし、場所の準備もいるし、片付けだってきっと大変だし……!

「ユキ様は可愛らしいですねぇ」

 ……なんか悲しくなってきたからもう何も言いません。この世界ではきっと体が大きい分ワガママも規模が大きくなるんだ……きっとそうなんだ……

 だってお屋敷も庭園もいらないもん……僕この部屋だけで十分だし、温室まで持ってるもん。これ以上僕のスペースなんていりません。不要なものを強請る必要もないし、そうなるとダグ達の基準でいけば僕はワガママじゃないってなるんだろうなぁ。

 うーん、まぁそれでもいいのか、な? 認識の違いって仕方ないと思うし……うん、気にしないことにします。だってこの調子じゃ僕が何かを言ってもまた生温かい目を向けられるだけだと思うもん。


 そんなこんなでご飯を食べたらダグとお風呂に入って、またまた2人でいちゃいちゃタイムです! リディアには僕達がお風呂に入っている間にお酒を飲む用意をしてもらっているから、お風呂から出たら2人でのんびりお酒を飲むのです!

 実は今日のために作っておいたものがあるからそれも楽しみなのです!

 浴槽から上がって服を着たらダグに目を瞑ってもらい、手を引いて部屋まで行けば僕の想像通りにリディアがセットしてくれてました! ちゃんと綺麗に見れるところまでダグを誘導して、っと……

「ダグ、目を開けていいよ!」

「ん……これは……星空が部屋の中に……?」

「えへへ、プラネタリウムって言うの! 綺麗でしょ? ダグは僕の誕生日にキャンドルを灯した綺麗な部屋を見せてくれたから、僕からは星空をプレゼントです!」

 そうなのです、今日のためにこっそりプラネタリウムを作っていたのです。覚えている限りの星座の並びの通りに光を通さない黒い分厚い紙に穴を開けて、中に光を灯しただけの簡単手作りプラネタリウムです!

「綺麗だ……ありがとう、ユキ。こんな綺麗なものを俺のために作ってくれただなんて俺は幸せ者だな」

「ふふ、喜んでくれてよかった! 今日はこのままお酒飲も? ダグの好きなお酒用意してるんだよ」

「ああ、それはいいな。いつもより飲んでしまいそうだ」

「ほどほどにね?」

 ダグと2人並んでカウチに座り、天井を見上げるダグにグラスにダグのお気に入りのウイスキーを注いで渡してあげると嬉しそうに香りを嗅いでから一口口に含み、ゆっくりと味と香りを楽しんでから飲み込むダグ。

「いつもより美味く感じるな。最高の時間だ」

「ふふ、よかった」

「ユキは何を飲むんだ? またプリムスか?」

「ううん、今日はハイボールを飲んでみようかなって。少しでもダグと同じ味を感じられるかなって思って」

 流石にストレートとかロックでは飲めないって思うから、炭酸水で割って少しでも飲める状態にします。

「ユキ……よし、俺がユキのために作ってやろう」

 そう言ったダグは慣れた手つきでグラスにたっぷりの氷を入れ、次にウイスキーを入れるとそっと炭酸水を注いでゆっくり一度だけかき混ぜると僕に渡してくれました。一連のダグの手の動きがかっこよくてドキドキしたのは内緒です。

 受け取ったハイボールを一口飲んでみると……

「美味しい!」

「そうか、よかった。何杯でも作るが、あまり飲み過ぎないようにな」

「うん!」

 ゆったりと2人でお酒を飲み、そのあとは……ね? 大人な時間を過ごしたのでした。



──────────
※幸仁はヴィルヘルムにて成人しております。当作品は未成年者の飲酒を推奨するものではございません。
しおりを挟む
感想 114

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

時間を戻した後に~妹に全てを奪われたので諦めて無表情伯爵に嫁ぎました~

なりた
BL
悪女リリア・エルレルトには秘密がある。 一つは男であること。 そして、ある一定の未来を知っていること。 エルレルト家の人形として生きてきたアルバートは義妹リリアの策略によって火炙りの刑に処された。 意識を失い目を開けると自称魔女(男)に膝枕されていて…? 魔女はアルバートに『時間を戻す』提案をし、彼はそれを受け入れるが…。 なんと目覚めたのは断罪される2か月前!? 引くに引けない時期に戻されたことを嘆くも、あの忌まわしきイベントを回避するために奔走する。 でも回避した先は変態おじ伯爵と婚姻⁉ まぁどうせ出ていくからいっか! 北方の堅物伯爵×行動力の塊系主人公(途中まで女性)

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

処理中です...