3 / 8
なれそめ③
しおりを挟む
その後、すぐに再び重ねられた唇はやっぱり熱くて、私は彼の首に腕を回す。角度を変えて何度もキスを繰り返していると、突然、ぐっとお姫様抱っこのようにして抱き上げられた。
「つかまってて」
航さんはそのまま立ち上がってすたすたと歩き、薄く開いていた隣の部屋に続く扉を肩で押す。そこには整えられたベッドがあった。壊れ物でも扱うようにそこに下ろされたのに、きょろきょろしている私を見て、「あんまり見ないで」と航さんは笑いながら、覆いかぶさってきた。
啄むような口づけに応えていると、制服のブラウスの裾から服の中に大きくかさついた手が入ってくる。お腹を撫でられて、ちょっとくすぐったくて身を捩ると、その隙に背中のホックを外された。
「ん…」
「制服姿も可愛いから、脱がせるの勿体ないな」
胸に添えられた手がその形を確かめるように動き始めた。敏感な部分を避けて触られて、じわじわと熱が溜まっていくような感覚に陥る。
航さんは私をじっと見つめながら、片手で胸を触り、もう片方の手でゆっくりカーディガンと制服のボタンを外していく。ボタンをすべて外し終えて広げられたシャツとカーディガンの下、着ていたキャミソールの中でブラジャーがずり上がってしまっているのを見た航さんが、ちょっといたずらそうに笑う。
「すごい破壊力」
「…破壊力って?」
「煽情的な光景ってこと」
でもやっぱり脱いでもらおう、と航さんは独り言のように呟いて、私を抱き起こし、引っかかっていた服をするすると脱がしていく。
「わ、航さんは、脱がないん…ひゃあっ」
偶然、服が胸の先に擦れたときに思わず大きな声が漏れて、口を押さえた。何度もそこを避けて愛撫されていたせいで出た自分の声の甘ったるさに、愕然とする。
それなのに航さんはにやっと笑ってからそこに顔を寄せて、あろうことか口に含み、もう片方の胸の先をこねるように摘んだ。
「やあぁっ!」
「気持ちよさそう」
ちょっぴり嗜虐的な笑みを浮かべながら胸の先をしゃぶる、大好きな人の上目遣いに感情が爆発しそうになる。
「んっ、あっ、い、きもち、い…っ」
「それはよかった」
あまりの快感に起き上がっていられなくなった私を、航さんは再びゆっくり押し倒した。
胸への愛撫の間にも、耳を食まれ、鎖骨を舐め上げられ、触れられた体中のあらゆるところがどんどん熱くなっていくような気がする。
抑えられない嬌声をどうにか飲み込もうと唇を噛むと、なだめるようにキスをされる。
「噛んじゃだめだよ」
「でもっ、声、出ちゃうから…っ」
「じゃあ、キスしてようか」
そう言うなり、航さんは私の唇に自分の唇を重ねた。舌が歯列をなぞるように動きまわっている。
スカートのホックも外され、気付けば身に付けているのはショーツとハイソックスだけになっている。航さんもいつの間にか上に着ていたシャツを脱いでいた。
キスをされているせいで、くぐもって鼻にかかった声が部屋に響く中、航さんの手は内腿から私の体の中央に辿り着く。ショーツのクロッチの横から入ってきた長い指がそこに触れたとき、その快感に思わず悲鳴のような声を上げてしまう。すると、航さんは唇を離して額を合わせながら、にっこりと笑って報告するように言った。
「…すっごい濡れてる」
「そ、んなの…言わなくていいです…っ」
「あー…可愛いなあ…」
指がそこを行ったり来たりするたびに、体が震える。ぐちゅぐちゅと水音すらしてきて、自分の体に起きているいろいろなことに、ついていけていない。
——でも、ちゃんと、すごく気持ちいい。
「痛くない?」
「痛く、ないっ…」
中に入れられた指が何かを探るように動いている。その動きはゆっくりで、もどかしさすら感じるのに、時々、親指で突起をぐりっと触られて、大きな快感に目の前がちかちかする。
と、抜き差しされていた指がある場所を掠めたときに、腰が跳ねた。
「ひあぁっ!」
「…ここかな?」
航さんは指先を曲げて、今度はそこばかりを擦るように動かし始めた。
腰がびくびくと痙攣しているのに、足の間には彼がいるから足を閉じることも、腰を引いて快感を逃すこともできない。
「や、だめ、だめ、なんか、変だからぁっ…!」
「変じゃないよ、大丈夫。ほら、こっちつかまってて」
航さんはシーツを握り締めていた私の手をとり、自分の背中に回すように持ち上げた。そうやってあやすように優しく言うのに、指の動きは容赦なく私をせめ立てる。
うっすら目を開けると、ぎらぎらと何かを欲しているような瞳と目が合った。どちらからともなく唇が重なる。
「航さん、好き、です」
「俺も、唯ちゃんが大好きだよ」
体の中心に突き立てられた指から、奥に送られる刺激が少し速くなる。息が上がって、体中から汗がふき出す。体の内側を擦られながら、突起をぐりっと摘まれたとき、ついに快感が爆発した。
「やああああっ…!!」
びくびくと痙攣するように腰が跳ねた。上り詰めた快感の余韻で、体に力が入らない。横になったまま、はぁはぁと浅い息を繰り返す私の頭を撫でて、航さんは「ちょっと待ってて」とベッドの隣のチェストから避妊具を取り出した。あまりに気だるくて閉じてしまいそうな瞼を一生懸命開けて、ぼんやりとその様子を眺める。何も身に付けていないのに靴下だけ履いているのが嫌だなと思っていたら、航さんがするっと引っ張って脱がしてくれた。
「あの…」
「ん?」
「今更言うのも変なんですけど、私、初めてなんです。そういうことするの。だから、その…」
「…怖い?」
「怖くないです。でも、ちょっと…緊張します」
力なく笑った私に、優しいキスが降ってくる
「ゆっくりしよう。痛かったら止め…」
「絶対止めないです」
—そんな生半可な思いならはじめからしてない。
そこだけは、と、きっぱり言い切ると、航さんは笑って私の膝に手をかけた。
「優しくするから、力抜いてね」
さっき散々弄られたせいで、多分入口は十分すぎるほど濡れている。ぴたりと押し当てられた硬いものが、前後にゆらゆらと動いた後、ゆっくりと入ってきた。さすがに初めてだから、はじめのうちは引き攣るような痛みを感じながらも、体中を優しく愛撫されて、少しずつ力が抜けてくる。
異物感はあるけれど、思ったよりは痛くない。指よりも大きな質量に押し広げられる苦しさはあるものの、それ以上に幸福感と痺れるような快感が少しずつ広がっていく。
「…大丈夫?」
「だいじょうぶ、です」
むしろ、こちらを気遣うように、ちょっと進んでは止まるのを繰り返すから、奥が刺激を求めてじんじんしてくる。
きっと、私が痛くないように、辛くないようにと、様子をうかがっているのだと思うけれど、私の少しの変化でも見逃すまいとするその視線は、こちらが恥ずかしくなってしまうほど熱くて、甘い。航さんは腰を前後に動かし、少しずつ奥に進んでいく。
「…ずるいな」
「んっ…なに、が…?」
「俺が」
私の手をベッドに縫い留めるように顔の横で抑えつけて、そのまま肘をついた航さんが呟く。彼の硬い胸が私の胸の先と擦れて、ぞくぞくする。
「君はもうすぐ大学に進学して、これから素敵な出会いがたくさんあるかもしれないのに、こうしてこんなタイミングで自分のものにしようとしてる」
「あっ…んぅ…」
「でも、君のことが大好きで、多分もう離してあげられない」
「は、離さなくて、んっ、いい、です…っ、んんっ…!」
ぐっと腰を進めた航さんのものが私の最奥に当たったのがわかる。今まで感じたのとは違う、ぎゅっと力が入ってしまうような快感に翻弄されながらも、一生懸命頭を起こして航さんの唇にキスをした。何の色気もないような、ちょんと触れただけのようなキスだったけれど、驚いたのか航さんの動きが一瞬止まる。
「…もし、これがずるいなら、これからも恋なんてしないです」
「唯ちゃん…」
「だからちゃんと、これからも、いろいろ教えて…?」
掠れ声で伝えると、私がしたのとは比べ物にならないくらい甘くて濃厚な口づけが与えられた。息が上がってくらくらしてきたところで、音を立てて唇を離した航さんが「唯ちゃんもずるいなあ」と溶けるような笑みを浮かべる。それを合図に、腰の律動がどんどん激しく、深くなった。中をかき混ぜられ、体を揺さぶられながら、その快感に身を任せる。
「あっ、んぅ、や、あぁ…っ、きもち、い…っ、だめっ、もう、ああぁ…っ!」
「唯ちゃん、こっち向いて」
睫毛が触れそうな距離で見つめられて恥ずかしいのに、いよいよ喘ぐことしか出来なくなって、再び全身から汗がふき出す。
航さんは、私のおでこにはりついた前髪を避けて、激しい動きとはちぐはぐな優しいキスをくれた。「そろそろ、いいかな」と誰に聞くでもない呟きと大きな律動の後、ぐりぐりっと腰を奥に押し込まれて、悲鳴のような嬌声をあげた私は、かろうじて残っていた意識を手放した。
* * *
——あったかい。
Tシャツ一枚しか着ていないのに、人肌というのはこんなに温かいのか。思わず感心するほどの柔らかいぬくもりに酔いしれながら、すりすりと目の前の人の胸に頬を寄せると、髪を梳くように頭を撫でられた。
「体、大丈夫?」
「大丈夫です。ちょっとだるいくらいで」
刺激的だった初体験の後、航さんはぐったりと動けなくなった私の体をさっと拭いて、さすがにこのままだと風邪をひくからと、大きめのTシャツを着せてくれた。へろへろになりながらも、「これってもしかして彼シャツ…!?」と騒いだ私を見て、「もう一枚同じのあるから俺も着ようかな」と面白そうに笑っていた。
着ていた制服はいつの間にかハンガーにきちんとかけられている。さっきまで着ていたそれを、まさか今日ここで脱いでしまうことになるなんて思っていなかった。ついでに、今は大きなブランケットに大好きな人と二人で包まれて、まったりしているなんて。
「今、すっごい幸せです」
にまにまと笑いながらそう言うと、航さんは私の唇を親指でなぞり、ちゅっと触れるだけのキスをしてから、くすくすと笑った。心からそう言ったのにからかわれたようで、ちょっとむっとした私を見ると、「いや、違う違う」と彼は言う。
「そういうところ好きだなあと思って」
「…どういうところですか」
「難問に正解すると、ぱっと顔が明るくなって、説明聞いてもよくわからないと眉間に皺が寄るようなところ」
「単純ってこと?」
「感情表現が豊かってことだよ。家庭教師やってたとき、そういう気持ち的な部分、逆にたくさん教えてもらってたような気がする」
ブランケットをかけ直し、私の髪を指にくるくる巻き付けて弄びながら「俺は何を考えてるのかわからないって言われることが多いからね」と苦笑するから、私はさっきのお返しのように、航さんの頬に唇を寄せる。
--そんなに感情表現に乏しい人だと思ったことはないんだけど。
でも、大好きな彼が何を考えているか、一番わかるのが私だったらちょっと誇らしい。
「これからも、いっぱい伝えますね。だから航さんも、その…いろいろ教えてくださいね」
「……いろいろって例えば?」
「いろいろは…いろいろですよ。先生なんだから察してください…!」
「ごめんごめん。いろいろね」
額を合わせて、堪えきれずに、ふふっとお互いに笑い合う。
大好きな人に優しく抱き締められて、私は幸せを味わうように彼の背中に腕を回した。
「つかまってて」
航さんはそのまま立ち上がってすたすたと歩き、薄く開いていた隣の部屋に続く扉を肩で押す。そこには整えられたベッドがあった。壊れ物でも扱うようにそこに下ろされたのに、きょろきょろしている私を見て、「あんまり見ないで」と航さんは笑いながら、覆いかぶさってきた。
啄むような口づけに応えていると、制服のブラウスの裾から服の中に大きくかさついた手が入ってくる。お腹を撫でられて、ちょっとくすぐったくて身を捩ると、その隙に背中のホックを外された。
「ん…」
「制服姿も可愛いから、脱がせるの勿体ないな」
胸に添えられた手がその形を確かめるように動き始めた。敏感な部分を避けて触られて、じわじわと熱が溜まっていくような感覚に陥る。
航さんは私をじっと見つめながら、片手で胸を触り、もう片方の手でゆっくりカーディガンと制服のボタンを外していく。ボタンをすべて外し終えて広げられたシャツとカーディガンの下、着ていたキャミソールの中でブラジャーがずり上がってしまっているのを見た航さんが、ちょっといたずらそうに笑う。
「すごい破壊力」
「…破壊力って?」
「煽情的な光景ってこと」
でもやっぱり脱いでもらおう、と航さんは独り言のように呟いて、私を抱き起こし、引っかかっていた服をするすると脱がしていく。
「わ、航さんは、脱がないん…ひゃあっ」
偶然、服が胸の先に擦れたときに思わず大きな声が漏れて、口を押さえた。何度もそこを避けて愛撫されていたせいで出た自分の声の甘ったるさに、愕然とする。
それなのに航さんはにやっと笑ってからそこに顔を寄せて、あろうことか口に含み、もう片方の胸の先をこねるように摘んだ。
「やあぁっ!」
「気持ちよさそう」
ちょっぴり嗜虐的な笑みを浮かべながら胸の先をしゃぶる、大好きな人の上目遣いに感情が爆発しそうになる。
「んっ、あっ、い、きもち、い…っ」
「それはよかった」
あまりの快感に起き上がっていられなくなった私を、航さんは再びゆっくり押し倒した。
胸への愛撫の間にも、耳を食まれ、鎖骨を舐め上げられ、触れられた体中のあらゆるところがどんどん熱くなっていくような気がする。
抑えられない嬌声をどうにか飲み込もうと唇を噛むと、なだめるようにキスをされる。
「噛んじゃだめだよ」
「でもっ、声、出ちゃうから…っ」
「じゃあ、キスしてようか」
そう言うなり、航さんは私の唇に自分の唇を重ねた。舌が歯列をなぞるように動きまわっている。
スカートのホックも外され、気付けば身に付けているのはショーツとハイソックスだけになっている。航さんもいつの間にか上に着ていたシャツを脱いでいた。
キスをされているせいで、くぐもって鼻にかかった声が部屋に響く中、航さんの手は内腿から私の体の中央に辿り着く。ショーツのクロッチの横から入ってきた長い指がそこに触れたとき、その快感に思わず悲鳴のような声を上げてしまう。すると、航さんは唇を離して額を合わせながら、にっこりと笑って報告するように言った。
「…すっごい濡れてる」
「そ、んなの…言わなくていいです…っ」
「あー…可愛いなあ…」
指がそこを行ったり来たりするたびに、体が震える。ぐちゅぐちゅと水音すらしてきて、自分の体に起きているいろいろなことに、ついていけていない。
——でも、ちゃんと、すごく気持ちいい。
「痛くない?」
「痛く、ないっ…」
中に入れられた指が何かを探るように動いている。その動きはゆっくりで、もどかしさすら感じるのに、時々、親指で突起をぐりっと触られて、大きな快感に目の前がちかちかする。
と、抜き差しされていた指がある場所を掠めたときに、腰が跳ねた。
「ひあぁっ!」
「…ここかな?」
航さんは指先を曲げて、今度はそこばかりを擦るように動かし始めた。
腰がびくびくと痙攣しているのに、足の間には彼がいるから足を閉じることも、腰を引いて快感を逃すこともできない。
「や、だめ、だめ、なんか、変だからぁっ…!」
「変じゃないよ、大丈夫。ほら、こっちつかまってて」
航さんはシーツを握り締めていた私の手をとり、自分の背中に回すように持ち上げた。そうやってあやすように優しく言うのに、指の動きは容赦なく私をせめ立てる。
うっすら目を開けると、ぎらぎらと何かを欲しているような瞳と目が合った。どちらからともなく唇が重なる。
「航さん、好き、です」
「俺も、唯ちゃんが大好きだよ」
体の中心に突き立てられた指から、奥に送られる刺激が少し速くなる。息が上がって、体中から汗がふき出す。体の内側を擦られながら、突起をぐりっと摘まれたとき、ついに快感が爆発した。
「やああああっ…!!」
びくびくと痙攣するように腰が跳ねた。上り詰めた快感の余韻で、体に力が入らない。横になったまま、はぁはぁと浅い息を繰り返す私の頭を撫でて、航さんは「ちょっと待ってて」とベッドの隣のチェストから避妊具を取り出した。あまりに気だるくて閉じてしまいそうな瞼を一生懸命開けて、ぼんやりとその様子を眺める。何も身に付けていないのに靴下だけ履いているのが嫌だなと思っていたら、航さんがするっと引っ張って脱がしてくれた。
「あの…」
「ん?」
「今更言うのも変なんですけど、私、初めてなんです。そういうことするの。だから、その…」
「…怖い?」
「怖くないです。でも、ちょっと…緊張します」
力なく笑った私に、優しいキスが降ってくる
「ゆっくりしよう。痛かったら止め…」
「絶対止めないです」
—そんな生半可な思いならはじめからしてない。
そこだけは、と、きっぱり言い切ると、航さんは笑って私の膝に手をかけた。
「優しくするから、力抜いてね」
さっき散々弄られたせいで、多分入口は十分すぎるほど濡れている。ぴたりと押し当てられた硬いものが、前後にゆらゆらと動いた後、ゆっくりと入ってきた。さすがに初めてだから、はじめのうちは引き攣るような痛みを感じながらも、体中を優しく愛撫されて、少しずつ力が抜けてくる。
異物感はあるけれど、思ったよりは痛くない。指よりも大きな質量に押し広げられる苦しさはあるものの、それ以上に幸福感と痺れるような快感が少しずつ広がっていく。
「…大丈夫?」
「だいじょうぶ、です」
むしろ、こちらを気遣うように、ちょっと進んでは止まるのを繰り返すから、奥が刺激を求めてじんじんしてくる。
きっと、私が痛くないように、辛くないようにと、様子をうかがっているのだと思うけれど、私の少しの変化でも見逃すまいとするその視線は、こちらが恥ずかしくなってしまうほど熱くて、甘い。航さんは腰を前後に動かし、少しずつ奥に進んでいく。
「…ずるいな」
「んっ…なに、が…?」
「俺が」
私の手をベッドに縫い留めるように顔の横で抑えつけて、そのまま肘をついた航さんが呟く。彼の硬い胸が私の胸の先と擦れて、ぞくぞくする。
「君はもうすぐ大学に進学して、これから素敵な出会いがたくさんあるかもしれないのに、こうしてこんなタイミングで自分のものにしようとしてる」
「あっ…んぅ…」
「でも、君のことが大好きで、多分もう離してあげられない」
「は、離さなくて、んっ、いい、です…っ、んんっ…!」
ぐっと腰を進めた航さんのものが私の最奥に当たったのがわかる。今まで感じたのとは違う、ぎゅっと力が入ってしまうような快感に翻弄されながらも、一生懸命頭を起こして航さんの唇にキスをした。何の色気もないような、ちょんと触れただけのようなキスだったけれど、驚いたのか航さんの動きが一瞬止まる。
「…もし、これがずるいなら、これからも恋なんてしないです」
「唯ちゃん…」
「だからちゃんと、これからも、いろいろ教えて…?」
掠れ声で伝えると、私がしたのとは比べ物にならないくらい甘くて濃厚な口づけが与えられた。息が上がってくらくらしてきたところで、音を立てて唇を離した航さんが「唯ちゃんもずるいなあ」と溶けるような笑みを浮かべる。それを合図に、腰の律動がどんどん激しく、深くなった。中をかき混ぜられ、体を揺さぶられながら、その快感に身を任せる。
「あっ、んぅ、や、あぁ…っ、きもち、い…っ、だめっ、もう、ああぁ…っ!」
「唯ちゃん、こっち向いて」
睫毛が触れそうな距離で見つめられて恥ずかしいのに、いよいよ喘ぐことしか出来なくなって、再び全身から汗がふき出す。
航さんは、私のおでこにはりついた前髪を避けて、激しい動きとはちぐはぐな優しいキスをくれた。「そろそろ、いいかな」と誰に聞くでもない呟きと大きな律動の後、ぐりぐりっと腰を奥に押し込まれて、悲鳴のような嬌声をあげた私は、かろうじて残っていた意識を手放した。
* * *
——あったかい。
Tシャツ一枚しか着ていないのに、人肌というのはこんなに温かいのか。思わず感心するほどの柔らかいぬくもりに酔いしれながら、すりすりと目の前の人の胸に頬を寄せると、髪を梳くように頭を撫でられた。
「体、大丈夫?」
「大丈夫です。ちょっとだるいくらいで」
刺激的だった初体験の後、航さんはぐったりと動けなくなった私の体をさっと拭いて、さすがにこのままだと風邪をひくからと、大きめのTシャツを着せてくれた。へろへろになりながらも、「これってもしかして彼シャツ…!?」と騒いだ私を見て、「もう一枚同じのあるから俺も着ようかな」と面白そうに笑っていた。
着ていた制服はいつの間にかハンガーにきちんとかけられている。さっきまで着ていたそれを、まさか今日ここで脱いでしまうことになるなんて思っていなかった。ついでに、今は大きなブランケットに大好きな人と二人で包まれて、まったりしているなんて。
「今、すっごい幸せです」
にまにまと笑いながらそう言うと、航さんは私の唇を親指でなぞり、ちゅっと触れるだけのキスをしてから、くすくすと笑った。心からそう言ったのにからかわれたようで、ちょっとむっとした私を見ると、「いや、違う違う」と彼は言う。
「そういうところ好きだなあと思って」
「…どういうところですか」
「難問に正解すると、ぱっと顔が明るくなって、説明聞いてもよくわからないと眉間に皺が寄るようなところ」
「単純ってこと?」
「感情表現が豊かってことだよ。家庭教師やってたとき、そういう気持ち的な部分、逆にたくさん教えてもらってたような気がする」
ブランケットをかけ直し、私の髪を指にくるくる巻き付けて弄びながら「俺は何を考えてるのかわからないって言われることが多いからね」と苦笑するから、私はさっきのお返しのように、航さんの頬に唇を寄せる。
--そんなに感情表現に乏しい人だと思ったことはないんだけど。
でも、大好きな彼が何を考えているか、一番わかるのが私だったらちょっと誇らしい。
「これからも、いっぱい伝えますね。だから航さんも、その…いろいろ教えてくださいね」
「……いろいろって例えば?」
「いろいろは…いろいろですよ。先生なんだから察してください…!」
「ごめんごめん。いろいろね」
額を合わせて、堪えきれずに、ふふっとお互いに笑い合う。
大好きな人に優しく抱き締められて、私は幸せを味わうように彼の背中に腕を回した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
22
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる