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金曜の夜の話
3.そうなるべくして
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『大好きな人がいるんです。その人と話すと元気になるしなんでも頑張れる…俺にとっては魔法みたいな人で』
『なかなか本人には気付いてもらえてないみたいなんですけど、人として成長して、仕事でも結果出して、ちゃんと告白したいんです』
『相手、年上だから、頼り甲斐のあるところも見せられるようにしたくて』
事あるごとにそんなことを熱弁していたような気がする。話を聞いているときは、こんなに愛してもらえるなんて、素直に相手が羨ましいなあと思ったし、どんな人なんだろうと興味がわいたのを覚えている。それに、これだけ熱い思いがあるなら実はもう相手に十分伝わっているのでは?と思っていたけれど…。
「春日くんが好きな人って、私だったんだ…?」
「そうですよ。もう花山先輩以外みんな知ってますよ」
「えっ!」
「ちなみに海外事業部の人たちもみんな知ってます。バレたのは異動してからですけど、正直もっと前から薄々勘付いてた人はいたみたいです」
「う、うそ…」
「嘘じゃないです。だって俺、いろんな男のこと牽制してきましたから。ずっと」
他部署の人たちにまで知れ渡っているのに、本人が知らないなんてことある…!?
なんだか恥ずかしくて、両手で顔を覆うと春日くんは「すっごい困ってる」と笑いながら、残っている服もどんどん脱がしていく。
みんな知ってるってことは、同じ部署のお姉様方も、山岡先輩もってことで。私が春日くんのことを話すのをどんな気持ちで聞いていたのだろう。
そんなことに気を取られていると、集中しろとでも言いたげに、ショーツの上から秘所をぐりっと刺激された。お腹の奥がぎゅっとなる。
「あっ…はぁっ…」
「染みてますよ。下着の上からでも、ここが膨らんでるのがわかる」
嬉しそうにそう言った彼は、肩や太腿をすりすりと撫で回す。そして、私の膝に手をかけ、足を大きく開かせた。足の間に顔を近付けて、ショーツをずらす。
まさかと思ったときには遅かった。充血して膨らんだ下の突起に思い切り吸い付かれて、悲鳴のような嬌声をあげる。
「ひぁぁぁっ!!!」
背中が弓形に反って、電流が走ったように体がびくびくっと痙攣する。どっと汗がふき出した。急に襲われたあまりに大きな快感に、何が何だか分からない。
肩で息をする私に、春日くんは溶けるような甘い視線を送りながら、「イっちゃいましたね」と、節くれ立った指をぐちゅぐちゅと付け根まで沈めていく。
達したばかりで敏感になっている膣壁を指の腹で擦られて、喘ぐことしかできなくなる。
「あっ、おく、に、あたっ…て、る…!」
「ここ気持ちいいんだ?もっと弄りますね」
「ひぅ…はぁああ…っ…や、そこっ…!うぁあ…!」
「先輩の中、熱くて、俺の指離してくれませんよ。ほら」
中に入れた指をばらばらに動かされ、膨らんでいる下の突起を摘むように刺激される。お腹の奥に溜まっている何かが爆発しそうな感覚が怖くなって足を閉じようとしたけれど、そんなことが叶うわけもなく。
「あぁんっ、あ、ひぅ、ゃあぁ…っ!!」
「可愛い。挿入れる前に俺がイきそう」
「んぁっ…あ、もう、だめ、だめぇっ…!」
「だめじゃないでしょ?腰動いちゃってますよ」
そう言われて初めて、自分で腰をくねらせていることに気付き、羞恥でカッと顔が熱くなる。
春日くんは嬉しそうに目元を緩めて、指の動きを速める。
「やっ、あ、ひぅっ、ん、あぁっ…!」
「やばい…好きだ…」
「だめ、なんか、なんかきちゃう、やめて、うごかさないでぇ…っ!」
私の足の間で、容赦なく動き続ける彼の手を止めようとするも、止められるわけがない。
「や、や、だめぇえ…っ!!」
ぐじゅぐじゅっと音を立てて、足の間から何かが漏れたような感覚があった。打ち上げられた魚のように体が跳ねる。
「も…とめてって…いったのに…!」
「あーだめだ、もう限界。明日休みでよかった」
何やら不穏なことを呟いた春日くんは、履いていたスラックスの前を寛げた。どこからか取り出した避妊具を開けて、「ちゃんとゴム付けます。しばらくは二人の時間を味わいたいし」などとよくわからないことを口走る。
しかし、ちらりと見えたその大きさに、びしりと体が固まった。
えっ、大きすぎじゃない…?
「そ、そんなの、挿入らない……」
「大丈夫です。指3本入ってたから」
「む、むりむり!」
「試してみてから決めてください」
春日くんはずりずりと後退しようとする私の腰を掴んで、入口にぴたりと自分のものを擦り付けながら微笑む。
「ていうか、挿入れること自体は許してくれるんですね」
「だ、だって…それは、ここまできたら…」
「相手が俺だから?それとも気持ちいいから?」
それは…
気持ちよくても、相手がそれを許せる相手じゃなかったら蹴っ飛ばしてでも抵抗しているはず。
戸惑う以上に、この先に進むことを望んでしまってもいいと思っている。自分の浅ましさを認めざるをえない。
彼が想いを寄せる相手が自分だと知ったとき、驚きももちろんあったけれど、決して嫌ではなかった。むしろ、あんなに彼がベタ惚れだった相手が自分だったなんて、誇らしさと高揚感の方が強くて。だから。
「多分、春日くん、だから…?」
その途端、泣き笑いのような表情を浮かべた彼が、中に入ってきた。
「や、ん…ぁああっ…!!」
「っ…あー…やば」
春日くんは眉間に皺を寄せて、何かを堪えるように腰をゆるゆると動かす。彼の言うように特に痛みもなく、むしろ、みっちりと埋められたその質量に、体が満たされていくのを感じる。
「な、んで、こんな…っきもちい…っあ、んんっ…!」
あまりにもよすぎる。
奥のいいところをがつがつと穿たれて、まるで大きな快感の波に流されていくようだ。
腕を伸ばして、彼の着ていたワイシャツのボタンに手をかけた。喘ぎながらも一生懸命お願いする。
「春日くんも、…っ…脱いで…?」
春日くんは嬉しそうに口の端を上げてから、「どうなっても知らないですよ」と、ボタンが引きちぎれてしまうのではないかと思うくらいの勢いでワイシャツを脱ぎ、そこら辺に放り投げた。下に着ていたシャツも脱いで、私の顔の横に肘をついて額を合わせる。
春日くんの硬い胸に、自分の胸が潰される。食われてしまいそうなキスを受け止めながら、優しいけれど容赦がない律動に翻弄される。
「あ、んっ、や、はぁっ、ああっ…!」
「大丈夫?」
「ん、あ、へい、きっ…あ、うぅっ…」
「気持ちいい顔になってる。可愛い」
睫毛が触れそうなほど近くで私の顔を見つめながら、愛おしそうに言う。
「ぅう…だって、あ、きもち、い…んっ…だも、ん…!」
「…それ反則ですよ」
「春日くん、が、そうしたんじゃない…っ!あっ…ああっ…!」
恨みがましくその瞳を見つめ返すと、春日くんはわざとゆっくり、しかも浅いところを出入りするように腰を動かし始める。
もう少しのところで焦らしてくるようなその動きに、お腹の奥で熱が燻っているような気持ちになる。
「ねえ、じゃあ付き合ってくれますか?俺と」
「ん、あぁっ…んんっ…!」
「付き合ってくれます?答えて。そうじゃないと、こうやってずっと中途半端な動きのままでいます」
「や、やだぁ…!」
「じゃあ、俺と付き合って、結婚して、毎日一緒にいてくれます?」
「え、ええ…?結婚って、あ、ん…っ!」
急に話が飛躍してるんですけど…。
付き合うか付き合わないか答えるだけじゃなかったの?
時々奥まで押し込んでは、何事もないかのようにまた浅いところをゆるゆると刺激するそのやり方は、困惑する私に思考の余地を与えないようにしているようにも、早く降参してしまえと迫ってくるようにも思えた。
「花山先輩のこと誰よりも大事にします。何があっても俺の気持ちは変わらない。仕事だって頑張ってきました。もちろんこれからも頑張ります。一年間、ちゃんと伝え続けてきましたよね、俺」
「ん、あっ、そ、れは…っ、そう、だけど…!」
膨らんだ下の突起を撫でるように触られて、その優しすぎる刺激に勝手に腰が動いてしまう。でもそうすると「ダメですよ、勝手に気持ちよくなるの」と手を離されてしまう。
確かに、私の体調不良に気付くのが誰よりも早かったり、残業になれば手伝ってくれたり、私が気に入っていると何気なく話したお菓子などを差し入れてくれたりしたときには、先輩と後輩以上の何かを感じたことがないわけではなかった。
でも、さすがに結婚の話まで出てくるとは思わず、戸惑っているというのが正直なところだ。
しかし、そんな私を腰のゆっくりとした動きだけで追い詰めながら、春日くんは尚も尋ねてくる。
「ねえ、どうします?」
「ん、はぁ…っ、あ、あぁんっ!」
多分、私も春日くんのことを好きだと思う。幸せにもしてくれそうな気がする。
恋人同士になって一緒に過ごす時間が素敵なものなら、ゆくゆくは結婚だってするかもしれない。
でも、今こんな風に決めてしまってはなんだか後悔しそうな気がするのだ。私も、そして彼自身も。それは、頼まれても流されてはいけない部分のような気がした。
考え込んでいる私の答えを催促するように、春日くんは私の唇を自分の親指でなぞった。
「…答えて?」
「つ、付き合う…っ!一緒に、いる、から…でも…」
「…でも?」
「け、結婚まで今決めさせるなら、お付き合いはしないし、い、一緒にも、いないっ…!」
そんな強引なやり方ではなくて、もっと、ちゃんと気持ちを育めるはず。
視線に思いを込めて、彼の瞳を見つめる。
……。
ぴたっと動きが止まって、春日くんが体を起こす。
目を合わせたまま、何秒か。
くしゃくしゃと頭を掻いた春日くんは、私の瞼に優しく唇を落として、ぽつぽつと話し始める。
「…花山先輩が、金曜の夜に一人でお酒飲んでるってことも」
「う、うん」
「すっぴんも可愛いってことも、奥突かれるのが好きってことも」
「…ん?」
「指で弄られるより、舐められる方が気持ちよさそうってことも、今日初めて知ったし」
「う……そ、そうなの?」
「…花山先輩のこと、もっともっと知って、俺が彼氏として、花山先輩マスターになったら、結婚してください。予約しましたから。絶対」
「ぜ、絶対……」
絶対なんてことはないだろうと思いながら、でもなんだかもう逃げられないような気がして、思わずくすくす笑ってしまう。
「…何笑ってるんですか」
「私マスターってどうやったら認定されるの?」
「…自己申告です」
「何それ」
それを聞いて、また笑ってしまうと、春日くんはやや表情を和らげる。しかし、その直後、私の唇に思い切り吸い付いてから、にやっと微笑んで、胸の先端を指先で弾く。
「んっ…」
「でもとりあえず、付き合ってくれるし一緒にもいてくれるんですもんね。お喋りはこれからもいっぱいできる。部署が違ったって、恋人同士なんだからこうして夜に会いに来てもいいですよね」
その言葉とともに、思い切り腰を突き入れられて、押し付けられて、背中が快感に仰け反った。
「ひゃあぁんっ!!」
「今は大好きな彼女を気持ちよくするのに集中しなくちゃ」
「ちょ…や、まっ…てぇ…っ!」
「待てないです」
その後、がつがつと奥を穿たれて、もう触られていないところなどどこにもないくらい全身をくまなく愛撫されて、意識を飛ばすまで何度もイかされた。
春日くんは、私がどう攻められると弱いか初めて知ったようなことを言っていたけれど、私は彼が意外とねちっこいセックスをする人だということを初めて知ったのだった。
『なかなか本人には気付いてもらえてないみたいなんですけど、人として成長して、仕事でも結果出して、ちゃんと告白したいんです』
『相手、年上だから、頼り甲斐のあるところも見せられるようにしたくて』
事あるごとにそんなことを熱弁していたような気がする。話を聞いているときは、こんなに愛してもらえるなんて、素直に相手が羨ましいなあと思ったし、どんな人なんだろうと興味がわいたのを覚えている。それに、これだけ熱い思いがあるなら実はもう相手に十分伝わっているのでは?と思っていたけれど…。
「春日くんが好きな人って、私だったんだ…?」
「そうですよ。もう花山先輩以外みんな知ってますよ」
「えっ!」
「ちなみに海外事業部の人たちもみんな知ってます。バレたのは異動してからですけど、正直もっと前から薄々勘付いてた人はいたみたいです」
「う、うそ…」
「嘘じゃないです。だって俺、いろんな男のこと牽制してきましたから。ずっと」
他部署の人たちにまで知れ渡っているのに、本人が知らないなんてことある…!?
なんだか恥ずかしくて、両手で顔を覆うと春日くんは「すっごい困ってる」と笑いながら、残っている服もどんどん脱がしていく。
みんな知ってるってことは、同じ部署のお姉様方も、山岡先輩もってことで。私が春日くんのことを話すのをどんな気持ちで聞いていたのだろう。
そんなことに気を取られていると、集中しろとでも言いたげに、ショーツの上から秘所をぐりっと刺激された。お腹の奥がぎゅっとなる。
「あっ…はぁっ…」
「染みてますよ。下着の上からでも、ここが膨らんでるのがわかる」
嬉しそうにそう言った彼は、肩や太腿をすりすりと撫で回す。そして、私の膝に手をかけ、足を大きく開かせた。足の間に顔を近付けて、ショーツをずらす。
まさかと思ったときには遅かった。充血して膨らんだ下の突起に思い切り吸い付かれて、悲鳴のような嬌声をあげる。
「ひぁぁぁっ!!!」
背中が弓形に反って、電流が走ったように体がびくびくっと痙攣する。どっと汗がふき出した。急に襲われたあまりに大きな快感に、何が何だか分からない。
肩で息をする私に、春日くんは溶けるような甘い視線を送りながら、「イっちゃいましたね」と、節くれ立った指をぐちゅぐちゅと付け根まで沈めていく。
達したばかりで敏感になっている膣壁を指の腹で擦られて、喘ぐことしかできなくなる。
「あっ、おく、に、あたっ…て、る…!」
「ここ気持ちいいんだ?もっと弄りますね」
「ひぅ…はぁああ…っ…や、そこっ…!うぁあ…!」
「先輩の中、熱くて、俺の指離してくれませんよ。ほら」
中に入れた指をばらばらに動かされ、膨らんでいる下の突起を摘むように刺激される。お腹の奥に溜まっている何かが爆発しそうな感覚が怖くなって足を閉じようとしたけれど、そんなことが叶うわけもなく。
「あぁんっ、あ、ひぅ、ゃあぁ…っ!!」
「可愛い。挿入れる前に俺がイきそう」
「んぁっ…あ、もう、だめ、だめぇっ…!」
「だめじゃないでしょ?腰動いちゃってますよ」
そう言われて初めて、自分で腰をくねらせていることに気付き、羞恥でカッと顔が熱くなる。
春日くんは嬉しそうに目元を緩めて、指の動きを速める。
「やっ、あ、ひぅっ、ん、あぁっ…!」
「やばい…好きだ…」
「だめ、なんか、なんかきちゃう、やめて、うごかさないでぇ…っ!」
私の足の間で、容赦なく動き続ける彼の手を止めようとするも、止められるわけがない。
「や、や、だめぇえ…っ!!」
ぐじゅぐじゅっと音を立てて、足の間から何かが漏れたような感覚があった。打ち上げられた魚のように体が跳ねる。
「も…とめてって…いったのに…!」
「あーだめだ、もう限界。明日休みでよかった」
何やら不穏なことを呟いた春日くんは、履いていたスラックスの前を寛げた。どこからか取り出した避妊具を開けて、「ちゃんとゴム付けます。しばらくは二人の時間を味わいたいし」などとよくわからないことを口走る。
しかし、ちらりと見えたその大きさに、びしりと体が固まった。
えっ、大きすぎじゃない…?
「そ、そんなの、挿入らない……」
「大丈夫です。指3本入ってたから」
「む、むりむり!」
「試してみてから決めてください」
春日くんはずりずりと後退しようとする私の腰を掴んで、入口にぴたりと自分のものを擦り付けながら微笑む。
「ていうか、挿入れること自体は許してくれるんですね」
「だ、だって…それは、ここまできたら…」
「相手が俺だから?それとも気持ちいいから?」
それは…
気持ちよくても、相手がそれを許せる相手じゃなかったら蹴っ飛ばしてでも抵抗しているはず。
戸惑う以上に、この先に進むことを望んでしまってもいいと思っている。自分の浅ましさを認めざるをえない。
彼が想いを寄せる相手が自分だと知ったとき、驚きももちろんあったけれど、決して嫌ではなかった。むしろ、あんなに彼がベタ惚れだった相手が自分だったなんて、誇らしさと高揚感の方が強くて。だから。
「多分、春日くん、だから…?」
その途端、泣き笑いのような表情を浮かべた彼が、中に入ってきた。
「や、ん…ぁああっ…!!」
「っ…あー…やば」
春日くんは眉間に皺を寄せて、何かを堪えるように腰をゆるゆると動かす。彼の言うように特に痛みもなく、むしろ、みっちりと埋められたその質量に、体が満たされていくのを感じる。
「な、んで、こんな…っきもちい…っあ、んんっ…!」
あまりにもよすぎる。
奥のいいところをがつがつと穿たれて、まるで大きな快感の波に流されていくようだ。
腕を伸ばして、彼の着ていたワイシャツのボタンに手をかけた。喘ぎながらも一生懸命お願いする。
「春日くんも、…っ…脱いで…?」
春日くんは嬉しそうに口の端を上げてから、「どうなっても知らないですよ」と、ボタンが引きちぎれてしまうのではないかと思うくらいの勢いでワイシャツを脱ぎ、そこら辺に放り投げた。下に着ていたシャツも脱いで、私の顔の横に肘をついて額を合わせる。
春日くんの硬い胸に、自分の胸が潰される。食われてしまいそうなキスを受け止めながら、優しいけれど容赦がない律動に翻弄される。
「あ、んっ、や、はぁっ、ああっ…!」
「大丈夫?」
「ん、あ、へい、きっ…あ、うぅっ…」
「気持ちいい顔になってる。可愛い」
睫毛が触れそうなほど近くで私の顔を見つめながら、愛おしそうに言う。
「ぅう…だって、あ、きもち、い…んっ…だも、ん…!」
「…それ反則ですよ」
「春日くん、が、そうしたんじゃない…っ!あっ…ああっ…!」
恨みがましくその瞳を見つめ返すと、春日くんはわざとゆっくり、しかも浅いところを出入りするように腰を動かし始める。
もう少しのところで焦らしてくるようなその動きに、お腹の奥で熱が燻っているような気持ちになる。
「ねえ、じゃあ付き合ってくれますか?俺と」
「ん、あぁっ…んんっ…!」
「付き合ってくれます?答えて。そうじゃないと、こうやってずっと中途半端な動きのままでいます」
「や、やだぁ…!」
「じゃあ、俺と付き合って、結婚して、毎日一緒にいてくれます?」
「え、ええ…?結婚って、あ、ん…っ!」
急に話が飛躍してるんですけど…。
付き合うか付き合わないか答えるだけじゃなかったの?
時々奥まで押し込んでは、何事もないかのようにまた浅いところをゆるゆると刺激するそのやり方は、困惑する私に思考の余地を与えないようにしているようにも、早く降参してしまえと迫ってくるようにも思えた。
「花山先輩のこと誰よりも大事にします。何があっても俺の気持ちは変わらない。仕事だって頑張ってきました。もちろんこれからも頑張ります。一年間、ちゃんと伝え続けてきましたよね、俺」
「ん、あっ、そ、れは…っ、そう、だけど…!」
膨らんだ下の突起を撫でるように触られて、その優しすぎる刺激に勝手に腰が動いてしまう。でもそうすると「ダメですよ、勝手に気持ちよくなるの」と手を離されてしまう。
確かに、私の体調不良に気付くのが誰よりも早かったり、残業になれば手伝ってくれたり、私が気に入っていると何気なく話したお菓子などを差し入れてくれたりしたときには、先輩と後輩以上の何かを感じたことがないわけではなかった。
でも、さすがに結婚の話まで出てくるとは思わず、戸惑っているというのが正直なところだ。
しかし、そんな私を腰のゆっくりとした動きだけで追い詰めながら、春日くんは尚も尋ねてくる。
「ねえ、どうします?」
「ん、はぁ…っ、あ、あぁんっ!」
多分、私も春日くんのことを好きだと思う。幸せにもしてくれそうな気がする。
恋人同士になって一緒に過ごす時間が素敵なものなら、ゆくゆくは結婚だってするかもしれない。
でも、今こんな風に決めてしまってはなんだか後悔しそうな気がするのだ。私も、そして彼自身も。それは、頼まれても流されてはいけない部分のような気がした。
考え込んでいる私の答えを催促するように、春日くんは私の唇を自分の親指でなぞった。
「…答えて?」
「つ、付き合う…っ!一緒に、いる、から…でも…」
「…でも?」
「け、結婚まで今決めさせるなら、お付き合いはしないし、い、一緒にも、いないっ…!」
そんな強引なやり方ではなくて、もっと、ちゃんと気持ちを育めるはず。
視線に思いを込めて、彼の瞳を見つめる。
……。
ぴたっと動きが止まって、春日くんが体を起こす。
目を合わせたまま、何秒か。
くしゃくしゃと頭を掻いた春日くんは、私の瞼に優しく唇を落として、ぽつぽつと話し始める。
「…花山先輩が、金曜の夜に一人でお酒飲んでるってことも」
「う、うん」
「すっぴんも可愛いってことも、奥突かれるのが好きってことも」
「…ん?」
「指で弄られるより、舐められる方が気持ちよさそうってことも、今日初めて知ったし」
「う……そ、そうなの?」
「…花山先輩のこと、もっともっと知って、俺が彼氏として、花山先輩マスターになったら、結婚してください。予約しましたから。絶対」
「ぜ、絶対……」
絶対なんてことはないだろうと思いながら、でもなんだかもう逃げられないような気がして、思わずくすくす笑ってしまう。
「…何笑ってるんですか」
「私マスターってどうやったら認定されるの?」
「…自己申告です」
「何それ」
それを聞いて、また笑ってしまうと、春日くんはやや表情を和らげる。しかし、その直後、私の唇に思い切り吸い付いてから、にやっと微笑んで、胸の先端を指先で弾く。
「んっ…」
「でもとりあえず、付き合ってくれるし一緒にもいてくれるんですもんね。お喋りはこれからもいっぱいできる。部署が違ったって、恋人同士なんだからこうして夜に会いに来てもいいですよね」
その言葉とともに、思い切り腰を突き入れられて、押し付けられて、背中が快感に仰け反った。
「ひゃあぁんっ!!」
「今は大好きな彼女を気持ちよくするのに集中しなくちゃ」
「ちょ…や、まっ…てぇ…っ!」
「待てないです」
その後、がつがつと奥を穿たれて、もう触られていないところなどどこにもないくらい全身をくまなく愛撫されて、意識を飛ばすまで何度もイかされた。
春日くんは、私がどう攻められると弱いか初めて知ったようなことを言っていたけれど、私は彼が意外とねちっこいセックスをする人だということを初めて知ったのだった。
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