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続・進捗状況、良好です!
④明日も隣に
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とある休日、夕方。
昼間よりは多少涼しくなったけれど、まだまだ暑い。
ベランダに出したリクライニングチェアから立ち上がり、手摺りに肘をついて下を見下ろす。近くの公園には提灯が下げられ、道の両脇に並んだ様々な屋台が賑わっているのが小さく見えた。
隣で ビールを片手に何か考え事をしている様子の彼に声を掛ける。
「花火、こんな特等席で見られると思ってなかった」
「奇跡的な位置だよな。まあ俺もこの部屋から見るの初めてだけど」
鈴木先輩が退職していってから早一週間。
やっぱり仕事の出来る先輩だったので、引き継ぎはばっちり。後任で入った人も、慣れないことが多い中、一生懸命業務に励んでいる。一緒に作業することもあり、自分のキャリア的にも、そういう新人さんをサポートするような段階に入ってきたのだなと気付かされる。
また、偶然 彼と私が同じチームに編成されて、休日返上で取り組んでいたプロジェクトが、この度ひと段落した。ここ何週間かは まさに大詰めといった状況だったから、会社で顔は合わせるのになかなか二人の時間は確保できずにいた。
ようやく土日らしい土日を過ごせることになって喜んでいたところに、近くで花火大会があるということがわかり、しかも彼の部屋のベランダからよく見えるというのだから話は早い。
一緒におつまみになりそうな料理を作り、準備をして、ベランダで花火鑑賞をしようということになったのが今日。
「もうすぐ始まるね」
「ああ」
ベランダの柵に寄り掛かりながら空を眺めていると、背後からそっと抱き締めるように彼が寄り添う。そういう甘やかなふれあいは、もう当たり前のものになっていた。
アパートの契約更新はせず、正式に「同棲」もスタートさせた。それまでも今と似たような状態だったから、一緒に暮らしてみて「やっぱり違った」となることはなかった。
むしろ、家に帰れば会えるし、体調を崩しそうなときにはどちらかが気付いてフォローできる。仕事が忙しい時期にもプライベートで各々がお互いのことを気遣える分、今までよりも仕事に集中出来るようになった。
後ろから抱き締められたまま、独り言のように話す。
「私、和馬と付き合いだしてからほんとに幸せ」
「…そりゃよかったな」
「仕事とプライベート、ちゃんと分けようと思ってたし今も思ってるけど、両方に和馬がいて、この人のこと好きだなーってしょっちゅう思えるのはすごくない?」
「…なんだよ急に」
後ろから回された大きな手をつんつんと触っていると、つかまえるようにぎゅっと握り込まれた。
ぴったりくっついているのはちょっと暑いけれど、ベランダに出るための窓を開けてあるせいで、冷房のきいた部屋のからひんやりした風が流れ出てきているから、まあよしとする。
公園で花火を見ている人達がざわざわし始めているから、もしかすると打ち上げはまもなくかもしれない。
「ドキドキするね」と背後の彼に声を掛けた瞬間に、どんっと花火の上がる音。直後に流れるようにパラパラと火花が散る。
「わぁー!綺麗!!」
「おー…」
まさに、夜空に咲く大輪の花。
丸い菊のような形が空に浮かび上がっている。
次々に打ち上がる花火は、本当に美しくて、日頃の疲れが吹き飛ぶ。まるでここ最近の頑張りに対するご褒美のようだ。
しかし、盛り上がる私とは裏腹になんだか微妙なテンションの彼の様子が気になり、腕の拘束を解いて、向かい合う。
「大丈夫?体調悪い?」
頬に手を添えて、その顔を覗き込む。
なんだか今日は、朝からどことなくそわそわしている様子だった。水面下で進行中の重要案件でもあるのかな?と思っていたけれど、彼は休みの日まで仕事の悩みを態度に出すことはあまりなかったから、心配になる。
じっとこちらを見つめて黙ったままの彼をとりあえず座らせようとするも、彼はその場から動こうとしない。それどころか、何度も深呼吸する。
「ねえ、ほんとに無理しないで…」
「…紗月」
「ん?」
ひっきりなしに打ち上がっている花火の大きな音の合間に聞こえた声。
「……結婚しない?」
大きな音の後に、空に咲いた牡丹の花。
いつもどちらかというと飄々としている彼の、緊張で少し強張った表情が花火に照らされてくっきり見えた。
まさか今そんなことを言われるとは思っていなかったので、一瞬理解できなくて固まってしまう。
「結婚…和馬と?」
「そう、結婚。紗月が、俺と」
「病める時も健やかなる時も、のやつ…?」
「…まあ、普通はそれだろうな」
出会ってから数年。
思えば誰よりも近くにいたような気がする。この人がいなければ今の私はないと断言できる。
一緒にいて居心地がよくて、私のことを誰よりもよく理解している。自分が素直でいられる大切な存在。
そんな彼と、結婚。
ゆくゆくはもしかして…と考えないこともなかった。なぜなら想像するのが、驚くほど簡単で。
「…私、勝手に和馬とは、ずっと隣に、一緒にいられると思ってたの」
「…なんだそれ、過去形かよ」
眉間に皺を寄せる彼の顔を見て、「そうじゃなくて」と首を振る。
「そんな風に勝手に思ってるだけだったから、いざ和馬の隣に私じゃない女性が立つ可能性があるんだなって気付いたとき、ショックだった。それからずっと思ってることがあって」
彼は続きを待つように静かに私の手を握る。
「付き合うのも、隣で毎日こうやっていろんなことするのも、全部和馬とがいい」
元カレと別れたその日に付き合い始めるなんて、我ながら軽いなあと思いながらも、その手を取らずにはいられなかった。
こちらを見つめる瞳を見つめ返してから、そっとその背中に手を回す。
「…そんなわけで、不束者ですがよろしくお願いします」
すると、まるで待ち構えていたかのように大きな花火が上がった。
でも、あまりにぴったりのタイミングだったせいか、ドラマチックというよりも何だか笑えてきてしまって。
彼を抱き締めながら思わず吹き出してしまうと、ぎゅうぎゅうと強く抱き締め返された。
「……絶対幸せにする」
「ありがと。私も和馬を幸せにできるように頑張るね」
耳元で聞こえた声に私がそう答えると、体を離した彼に頭を鷲掴みにされたかと思ったらちゅっちゅっと顔中にキスを降らされる。
「や、くすぐったい…」
「嫌なら避けろ」
「もー!そんなの無理だよ!花火見ようよー」
「花火は来年も見られる」
「確かにそうだけど、この夜のは今日だけでしょー?」
この先を約束するような言葉に、内心ちょっぴり嬉しくなりつつも、そんな風に返す。
すると、彼は何かを噛み締めるように私を再び抱き締め、優しく頭を撫でてくるから、素直に体を預ける。
「ねえ、和馬?」
「あ?」
「大好きだよ」
「…俺もだよ」
花火は相変わらずお祝いのようにどんどん打ち上がっている。前半と後半に分かれているらしいから、まだまだ続くだろう。
彼との日々も続いていく。
明日も隣にいられる約束を、大切にしていきたい、と。
彼の肩ごしに見た花火は、これまでの人生で見た中で一番綺麗だった。
昼間よりは多少涼しくなったけれど、まだまだ暑い。
ベランダに出したリクライニングチェアから立ち上がり、手摺りに肘をついて下を見下ろす。近くの公園には提灯が下げられ、道の両脇に並んだ様々な屋台が賑わっているのが小さく見えた。
隣で ビールを片手に何か考え事をしている様子の彼に声を掛ける。
「花火、こんな特等席で見られると思ってなかった」
「奇跡的な位置だよな。まあ俺もこの部屋から見るの初めてだけど」
鈴木先輩が退職していってから早一週間。
やっぱり仕事の出来る先輩だったので、引き継ぎはばっちり。後任で入った人も、慣れないことが多い中、一生懸命業務に励んでいる。一緒に作業することもあり、自分のキャリア的にも、そういう新人さんをサポートするような段階に入ってきたのだなと気付かされる。
また、偶然 彼と私が同じチームに編成されて、休日返上で取り組んでいたプロジェクトが、この度ひと段落した。ここ何週間かは まさに大詰めといった状況だったから、会社で顔は合わせるのになかなか二人の時間は確保できずにいた。
ようやく土日らしい土日を過ごせることになって喜んでいたところに、近くで花火大会があるということがわかり、しかも彼の部屋のベランダからよく見えるというのだから話は早い。
一緒におつまみになりそうな料理を作り、準備をして、ベランダで花火鑑賞をしようということになったのが今日。
「もうすぐ始まるね」
「ああ」
ベランダの柵に寄り掛かりながら空を眺めていると、背後からそっと抱き締めるように彼が寄り添う。そういう甘やかなふれあいは、もう当たり前のものになっていた。
アパートの契約更新はせず、正式に「同棲」もスタートさせた。それまでも今と似たような状態だったから、一緒に暮らしてみて「やっぱり違った」となることはなかった。
むしろ、家に帰れば会えるし、体調を崩しそうなときにはどちらかが気付いてフォローできる。仕事が忙しい時期にもプライベートで各々がお互いのことを気遣える分、今までよりも仕事に集中出来るようになった。
後ろから抱き締められたまま、独り言のように話す。
「私、和馬と付き合いだしてからほんとに幸せ」
「…そりゃよかったな」
「仕事とプライベート、ちゃんと分けようと思ってたし今も思ってるけど、両方に和馬がいて、この人のこと好きだなーってしょっちゅう思えるのはすごくない?」
「…なんだよ急に」
後ろから回された大きな手をつんつんと触っていると、つかまえるようにぎゅっと握り込まれた。
ぴったりくっついているのはちょっと暑いけれど、ベランダに出るための窓を開けてあるせいで、冷房のきいた部屋のからひんやりした風が流れ出てきているから、まあよしとする。
公園で花火を見ている人達がざわざわし始めているから、もしかすると打ち上げはまもなくかもしれない。
「ドキドキするね」と背後の彼に声を掛けた瞬間に、どんっと花火の上がる音。直後に流れるようにパラパラと火花が散る。
「わぁー!綺麗!!」
「おー…」
まさに、夜空に咲く大輪の花。
丸い菊のような形が空に浮かび上がっている。
次々に打ち上がる花火は、本当に美しくて、日頃の疲れが吹き飛ぶ。まるでここ最近の頑張りに対するご褒美のようだ。
しかし、盛り上がる私とは裏腹になんだか微妙なテンションの彼の様子が気になり、腕の拘束を解いて、向かい合う。
「大丈夫?体調悪い?」
頬に手を添えて、その顔を覗き込む。
なんだか今日は、朝からどことなくそわそわしている様子だった。水面下で進行中の重要案件でもあるのかな?と思っていたけれど、彼は休みの日まで仕事の悩みを態度に出すことはあまりなかったから、心配になる。
じっとこちらを見つめて黙ったままの彼をとりあえず座らせようとするも、彼はその場から動こうとしない。それどころか、何度も深呼吸する。
「ねえ、ほんとに無理しないで…」
「…紗月」
「ん?」
ひっきりなしに打ち上がっている花火の大きな音の合間に聞こえた声。
「……結婚しない?」
大きな音の後に、空に咲いた牡丹の花。
いつもどちらかというと飄々としている彼の、緊張で少し強張った表情が花火に照らされてくっきり見えた。
まさか今そんなことを言われるとは思っていなかったので、一瞬理解できなくて固まってしまう。
「結婚…和馬と?」
「そう、結婚。紗月が、俺と」
「病める時も健やかなる時も、のやつ…?」
「…まあ、普通はそれだろうな」
出会ってから数年。
思えば誰よりも近くにいたような気がする。この人がいなければ今の私はないと断言できる。
一緒にいて居心地がよくて、私のことを誰よりもよく理解している。自分が素直でいられる大切な存在。
そんな彼と、結婚。
ゆくゆくはもしかして…と考えないこともなかった。なぜなら想像するのが、驚くほど簡単で。
「…私、勝手に和馬とは、ずっと隣に、一緒にいられると思ってたの」
「…なんだそれ、過去形かよ」
眉間に皺を寄せる彼の顔を見て、「そうじゃなくて」と首を振る。
「そんな風に勝手に思ってるだけだったから、いざ和馬の隣に私じゃない女性が立つ可能性があるんだなって気付いたとき、ショックだった。それからずっと思ってることがあって」
彼は続きを待つように静かに私の手を握る。
「付き合うのも、隣で毎日こうやっていろんなことするのも、全部和馬とがいい」
元カレと別れたその日に付き合い始めるなんて、我ながら軽いなあと思いながらも、その手を取らずにはいられなかった。
こちらを見つめる瞳を見つめ返してから、そっとその背中に手を回す。
「…そんなわけで、不束者ですがよろしくお願いします」
すると、まるで待ち構えていたかのように大きな花火が上がった。
でも、あまりにぴったりのタイミングだったせいか、ドラマチックというよりも何だか笑えてきてしまって。
彼を抱き締めながら思わず吹き出してしまうと、ぎゅうぎゅうと強く抱き締め返された。
「……絶対幸せにする」
「ありがと。私も和馬を幸せにできるように頑張るね」
耳元で聞こえた声に私がそう答えると、体を離した彼に頭を鷲掴みにされたかと思ったらちゅっちゅっと顔中にキスを降らされる。
「や、くすぐったい…」
「嫌なら避けろ」
「もー!そんなの無理だよ!花火見ようよー」
「花火は来年も見られる」
「確かにそうだけど、この夜のは今日だけでしょー?」
この先を約束するような言葉に、内心ちょっぴり嬉しくなりつつも、そんな風に返す。
すると、彼は何かを噛み締めるように私を再び抱き締め、優しく頭を撫でてくるから、素直に体を預ける。
「ねえ、和馬?」
「あ?」
「大好きだよ」
「…俺もだよ」
花火は相変わらずお祝いのようにどんどん打ち上がっている。前半と後半に分かれているらしいから、まだまだ続くだろう。
彼との日々も続いていく。
明日も隣にいられる約束を、大切にしていきたい、と。
彼の肩ごしに見た花火は、これまでの人生で見た中で一番綺麗だった。
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