テイマーになったはずが女の子が懐くことになってしまいました

ゆに

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24 お祝いしてもらいました

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拠点に着いたのは夜になっていた。
帰り際に寝てしまったフランを寝かしつけて、そのまま解散して、個人部屋に戻ってきた。


「ああぁぁぁ、疲れたぁ」
ソファに横になって大きく息をついた。

やっぱり家は落ち着くなぁ。

大変だったけど、ノリスが無事でよかった。
パルマはあの後、本当に魔神猿とクエスト行ったのかな……


「……」

惨憎法師が言った言葉が気になってた。
あのモンスター、俺の実力を確かめて来いと言われたからこの一件をやってきたようなことを言っていた。

首謀者は惨憎法師じゃなくて、別の奴がいる……

誰かに恨みを買うようなことしたかな……?

パッと浮かんだのはソウルガンドのヅィリィだった。
でもあいつがわざわざ俺にこんな回りくどい事をしてくるか? なんだかんだあっさりと身を引いていったし、実力を確かめるって言う割には惨憎法師達の力は不十分な強さだった。

でも他に恨み買うようなところはないんだよなぁ……

あと何かあるとしたらヤヨイか……
ヤヨイなら無自覚に敵を作ってることはありそうだ……俺とつるんでる事を知った何者かが、俺の拠点を調べようとした可能性はなくはないかもな。


……考えすぎかな。
明日、話でもしてみるか。


◆◇◆


暗い空間で俺は謎のプレッシャーを受けている。

「くっ、なんだ……この圧は……?」

動けない……まさか、誰かの呪いか?

ぐっ……腹が重い。
何が、起きてるんだ、このまま俺はやられるの……か……

「……て~!」

何か聞こえる……

「起きて~、ロジカおにぃちゃ~ん!」

ん?

起、き、て…………?


なんだ、俺は寝てたのか、今の声はセリルかフラン、起こしに来たって事……

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」

目を開くと目の前に魔法陣が浮かび上がっている。

魔法陣からは今にもサンダーの魔法が発動されそうだ。

「あっ、おはよ~ロジカおにぃちゃん!」

飛び起きようとした、俺の腹にセリルとフランが乗っかっている。

腹が重いような夢を見たのはこのせいか……

「こら! 何だこの魔法陣は!?」

「えへへ、ビックリさせようと思って」
セリルが嬉しそうに笑ってる。

「ビックリで済むか! セリルの魔法なんてくらったら、そのまま死んじゃうだろ!」

「えっ、そうなの?」

「そうなの? じゃないだろ……とにかく目覚ましに魔法を使っちゃダメだ! 家も壊れちゃうぞ!」

「家は私の魔法で直せるから大丈夫だよ」
フランが楽しそうに俺の腹にドスドスと乗ってくる。

「その時は家じゃなくて俺を治してくれよ……」

あっ、ベットの横にヤヨイも来てる、って言うか、なんでヤヨイ、刀を抜いてるんだ……?

「ロジカ、寝すぎだぞ」
なんだか、すごい普通のテンションで話しかけてきてるけど、その手に構えてるのはなんだ……?

「なぁヤヨイ、なんで刀を持ってるんだ? 」

「起こすためだ」

「起きれるかーっ! 斬れちゃうだろ!」

「ロジカって刀で斬れるのか?」

「斬れるに決まってるだろ! 俺を何だと思ってるんだ!」


おかしい……こんな起こされ方普通じゃない……

この3人はテイムしてすごい能力を手に入れたけど、俺は極々普通の生身の人間だ、パルマやノリスと変わらない。

そもそも、ノリス捜索から帰ってきたの昨日の遅くだぞ、なんでみんなこんな早起きなんだ……

「あのな、起こしてくれたのはありがたいけど、起こし方は優しくしてな……」

セリルは俺の手を引き無理やり起こそうとした。

「そんなことより、早く早く!」

そんなことって……

フランからも反対の手を引かれ寝起きの半分寝ぼけてるような状態で、リビングまで連れていかれた。

「あら、ロジカさん、おはようございます」

ナイナがリビングでテーブルで何か作業しながら俺に挨拶をした。

「おはよ、3人にすごい起こされ方しちゃったよ……」

「すごい起こされ方って?」

「魔法食らわされそうになるわ、斬られそうになるわで無茶苦茶……」

「ふふふ、ロジカさんなら大丈夫なんじゃないですか?」

「ナイナまで、やめてくれよ……」

みんな俺のこと、なんだと思ってるんだ……



セリルとフランが顔を見合わせて、合図をだした。

「せーの!」


セリルもフランのところにナイナとヤヨイも寄って来た。

4人が一斉にクラッカーを取り出し、音を鳴らした。

「えっ……なんだなんだ?」

何かのパーティか?
俺が祝われてる?

全然心当たりがないぞ……


「ナイナおねぇちゃんが教えてくれたんだけどね、今日がこのお家で暮らし出して1ヶ月目になるんだって!」

「だからね、このお家の持ち主のロジカおにぃちゃんにお礼をしようってみんなで話してたんだよ」

セリル、フラン……
そんなこと考えてくれてたなんて……

「あっという間で1ヶ月もたったなんて気がしないんだけど、早いもんだな」

本当だ、ヤヨイの言う通りそんなに経っていたなんで全然思えないくらいあっと言う間だった。

「ささやかですけどね、いつも私達を見守ってくれているロジカさんを労いたいと思ってちょっとした食事を用意したんですよ」

まずい……嬉しくて、泣いてしまいそうだ……

俺は、こんないい奴らにたかだか起こし方がパワフルだっただけで、文句なんて言ってしまうなんて。
なんてダメな奴なんだ……


「こんちはー、持ってきたぞ!」

家にクリーナがやってきた。

「すごーい!」

「おっきいケーキ!」

ナイナが今日のためにでかいショートケーキを発注してくれていたみたいだ。

リビングのテーブルいっぱいに料理や大きいケーキが乗っけられた。

「我ながら豪快なケーキだ!」
クリーナが自画自賛してる。
ナイナの用意してくれた料理もすごいが、ケーキは見た目も豪勢で迫力満点だ。

てっぺんに火の付いてない大きなロウソクがひとつ置かれている。

もう、何も言うことない、最高の日だ。

「さあ、ロウソクをともして、食事を始めましょう!」

「じゃあ私火をつけるね!」

セリルがケーキにささったロウソクの前にたった。

セリルが両手を合わせて祈りを捧げるようなポーズをとった。

まさか……セリル……


嫌な予感がした……



「ファイア、お願い!」

セリルの前に魔法陣が浮かび上がった。

「おい、セリル! それはダメだ!」

俺の制止も虚しく、魔法陣からはテーブルを包み込むほどの炎が放出された。

家の中が炎で赤く、そして明るくなった……

ファイアの魔法で飛び出た炎は遠くへ消えていった。



「やりすぎちゃった……ごめんなさい……」
あまりの威力の魔法にセリル自身も驚いていた。

テーブルが吹き飛んだ……
と、いうかリビングの壁ごと吹き飛んでいってしまった。

壁がなくなり、外が筒抜けになっている……


「いい眺めだな……」
ヤヨイ……それはフォローか? 天然なのか……?


「セリル……これからは家の中で、魔法は禁止な……」
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