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勝利の美酒に酔いしれるは孤独なケモノ
3P
しおりを挟むアランの右足は義足だ。7年前に大きな出来事があってDBは当時の総長と大勢の仲間を、俺はそれ以前の記憶を、アランは右足と、妻を失った。
俺の記憶はアランが話してくれたおかげでほとんど戻っている。だが、前総長も大勢の仲間もアランの右足も彼の妻も戻ってくることはない。
全ては、俺の失敗だ。
「ノーーーール、老けているぞ。綺麗な顔が台無しだ。10分でもいい、横になっていなさい」
「あぁ?うるせぇよ。ちゃんとした資金繰りもやらねぇといけねぇし、あの女……じゃねぇ、カマ野郎の尋問もある。あでっ!」
「資金繰りは俺がやるよ。尋問は部下に任せて、ほらほら…………ここには俺とノルしかいない。誰にも邪魔されない、兄弟の時間だ」
「アラン………………いてぇよ、兄貴」
眉間にシワでも寄っていたか?右足を装着したアランは俺の腕を引っ張って、ソファーに横たわらせる。優しい俺の、兄貴。
血のつながった、俺より2つ年上の兄貴。本来なら兄貴が総長を継ぐはずだった。けれど7年前の出来事のせいで兄貴が辞退し、俺が引き継いだ。
誰よりも前総長を心から尊敬していた兄貴。前総長からも指名されていて、照れ笑いを浮かべながら嬉しそうに自慢していたのをよく覚えている。
なのに、な。俺は兄貴から全部奪ったんだ。俺は兄貴にこんなにも優しくされるべきではない。
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