ユキ・シオン

那月

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待ち望んでいた

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 先生に体を預けたままお茶を飲み、息を吐く。あ、ちょっとだけ眩暈が治まってきた。俺の内側を隅々まで見られるような感覚だったなぁ。


 それに香さんの体からにじみ出る雰囲気というかオーラ?それが肌を刺すようにピリピリして痛かった。


 市長だったのはともかく、ただのキツネの擬人化種じゃねぇのか?


「怖い思いをさせてしもうてすまなんだ。なに、1000年も生きればこのような力を持って、神気を帯びてしまうものだ」


「せっ、1000年っ!!?」


「元々は普通のキツネの、今では立派な妖孤の擬人化種。俺達擬人化種の最高齢にして最強、擬人化種の保護と真相究明に努めてくださっているお方だよ。今のうちに崇めておけ?」


「……じ、次元が違う。保護って、もしかしてこの街に擬人化種がやたら多いのって?」


「この街はわしの支配下じゃ。人間の世界で暮らすに苦労しておる同胞を見つけ、少しでも幸せになってほしいと手招いておる。来年には隣町にも手を伸ばそうと考えておるぞ」


「そのうち、この国を統べる首相になったりしてな。っておい、まさか本気なのか?」


「この命の炎が消えぬ限り、迫害される擬人化種が消えぬ限りは尽力するつもりぞ。わしにはその力がある」


 マジで、次元が違いすぎる。1000歳とか首相とか、しかもそれが本気だとか。自分にはできると信じているのも、俺の状態を見抜いた力も。この人が特別である証。


 聞けば香さんにはその眼光で相手を操ることができるんだとか。記憶を消したり意思を曲げたり、それが必要な時は使う。


 ヤバい人だ!!擬人化種でありながら市長になれたのって、絶対に力を使ってるだろ!

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