ユキ・シオン

那月

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初めての

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 検尿のためにとったシオンのホカホカの尿。紙カップに入ったそれを、ドクトルはジィーッと凝視。


「あだぁっ!!」


「ドクトル、次は何ですか?俺達、この後の予定が詰まってるんで早くしてください。ねぇ。聞いてますか?そんなに震えていたらソレ、こぼれますよ。早く、案内してください」


「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いっ!気持ち良さゼロッ、ただただ痛い、かもぉっ!つ、爪ぇ……っ」


 我慢の限界。1発、ブン殴ってやろうと思ったんだけどな。被害者のシオンがスゲェ強かった。


 ドス黒い満面の笑みを顔に張り付けて、詰め寄って。俺がド突いたのと全く同じ場所をつねっているんだ。それも、猫の爪を伸ばした状態で。


 そりゃあ痛い。いくらマゾのドクトルでも、うっすら血がにじんで見えるほどの攻撃には絶叫。


 というか今のシオン、しゃべり方といいどこかの誰かさんを彷彿とさせる。シオンとドクトルの距離が近すぎてヒヤッとするんだけどさ。


 次をと急かすシオンに負けたドクトル。紙カップにフタをして検査室に置いてくると、次の部屋に足を進める。


 紫色の目に涙を浮かべて「グズグズ」言いながら奥の部屋へと案内するドクトルのかわいそうな背中を眺めながら、俺はシオンに声をかけた。


「お前、強いね?でももう無茶はやめなよ?自棄を起こしたドクトルがいつ牙を剥くとも限らないんだからさ」


 伸ばしていた爪を元に戻して、シオンが俺を見上げる。キョトンとしているが、コテンと首をかしげたのが可愛くて頬を撫でる。


「緋桜さんに教えてもらった。先手必勝だって。手を出される前に決定的な一撃を決めておけば、警戒するからって」


 ……よし。今度、緋桜にウインダーインゼリーを10個くらい差し入れしよう。

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