ユキ・シオン

那月

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人間、よろしく

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「突然申し訳ありません。先ほど、そこの窓から白猫を見かけたのですが、こちらで飼われているんスか?大変失礼だとは存ずるんスけど、1か月ほど前から行方不明になっている白猫を探しているんスよ」


 連打ではなく、丁寧かつイラ立ちを隠さないピンポーンの数を数えていると、やっと。観念したらしい男が大きな溜め息を吐いてドアを開けた。


 緋桜さんは家の中を確認しているし、家の主である男がいるのはわかっているんだもんな。居留守でも容赦ない。俺は緋桜さんのことを知っているから、彼が静かにご立腹なのはすぐにわかった。


 ドアの向こうに見えた擬人化した緋桜さんは、無表情。まぁこれはいつものこと。だが、その内側ではかなり怒ってんぜ。


 スッと俺を指さしながら、切れ長の鋭い真っ赤な目は男を捕らえたまま離さない。


 俺には緋桜さんの言葉が「さっさとその猫を寄こせ、クソガキ。失せろ」って、聞こえたぜ。


「あんた、この猫の飼い主の知り合いか?確かに俺は1か月前にこの猫を拾ったけどさ。死にかけだったから看病をしていたんだ、やっとここまで回復したばっかだ」


 でも、そんな脅しに屈しないのがこの男。いや、もしかしたら単純に気づいていないだけか?


 外と中の境界線の上に立って、緋桜さんを家の中に入れようとはしねぇ。初対面だから警戒してんのか、普通はそうか。俺は知ってるけどな、緋桜さんが俺の信頼できる人だって。


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