ユキ・シオン

那月

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人間、よろしく

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「あんたがどれだけ飼い主の……猫屋敷、さん?その人のことが大好きなのか、よくわかったから。俺、高台寺笑也。周りからは“えみやん”って呼ばれてる。あんたのことはユキ……さん?」


 この男、本気で俺に協力してくれるのか?確かにこいつが言うとおり出会ったのは何かの縁だと思うけどさ、そんな簡単に擬人化種を受け入れられるのか?


 というか、おじいさんが擬人化種だったのか。聞けば、おじいさんはかなりの変わり者で家族や周りから嫌われていた。けれどこの男だけは嫌わずによく一緒に過ごしていたとか。


 だからおじいさんが亡くなって、毎年命日に墓参りに行くのはこの男だけ。俺を拾ったのも、その墓参りに来ていた時だった。しかもそのおじいさんの墓が、ばっちゃんの墓の隣って。


 こんな偶然ってあるか?1年に1回しか来ない場所で死にかけの猫を拾って、しかもそれが擬人化種で。飼い主がいなくなって泣き出して。


 普通の人間ならそれこそ、バケモノだと罵って俺を捨てる。だが、こいつはそうしなかった。むしろ手を差し伸べてくれる。こうして、優しく抱きしめてくれる。


 けどさ、ちょっと複雑な感じがする。いや、名前がさ。


 笑也って、直也みたいだし。えみやんって、ネコヤンみたいだし?直也と悠一の、間?って、悠一に言ったらものすっごく怒られそうだな。


「シオンでいい。ユキ・シオン。ユキは猫の時の名前、シオンが人間の時の名前って使い分けてんだ。グズッ…………みっともねぇもん見せちまって悪かったな。あんた、いくつだ?」

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