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迫りくる氷山
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しおりを挟む「…………話しちゃったんですね、マクベスさん。いやいいんです。もっと早く、団長達に打ち明けていればよかった……」
目を開けあたし達を見渡すラファルガ君は、ひどく悔しそうに歯を食いしばった。
「そうだな、お前は俺達を信用しなさ過ぎた。だが、俺は怒っていない。ありがとう、よく生きて戻ってきてくれたな」
「そんな、礼を言われるようなことなんて何も。右腕もこんなだし、おいら……友達を身代わりに、逃げて……っ……ふ、うっ……う、後ろで、悲鳴がっ……」
「ラファルガ君……」
内側から押し寄せる恐怖の波に、彼は耐えようとしている。握りすぎた震える拳も噛みしめた唇も、力が入りすぎて血がにじむ。
「何があったのかは落ち着いてからでいい。今は、我慢せず泣いておけ。これからは泣く間もない」
アキラさんが肩に触れて優しくそう言うと、彼は点滴に繋がれた左腕を伸ばしアキラさんにしがみつく。
ベッドサイドに腰を下ろし両腕で小さな体を包み込むアキラさんの胸に顔をうずめ、肩を震わせながら大声でむせび泣く。
ワンワン泣いて、ずっと1人で抱えてきた恐怖を吐き出す。きっと、あたし達が想像もできないような怖い思いをしたんでしょうね。
泣いている間、アキラさんは彼の小さな体を力一杯抱きしめ、でも穏やかな表情で「大丈夫だ」と何度も囁きながら背中や頭を撫で続けた。
その姿は父親のように見えた。年の差は14歳。どちらかといえば年の離れた兄の方が近いんでしょうけどね。
あたしとマクベスはさりげなく病室を出て、ドクターのじいじに連絡して義手の話は自分達ですると伝えた。
義手よりもまずは小童子について。ラファルガ君が命がけで調べてくれた情報はこれからのあたし達の行動を、未来を決める。
大げさじゃないわ。彼の目を見た時にそう思ったんだもの。灰色の瞳の奥に恐怖だけじゃない、絶望の影を見たの。
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