134 / 268
迫りくる氷山
10P
しおりを挟む「どうした、わざわざ山から下りてきて何かわかったのか?」
「…………」
「おい、ユエ?お前のソレが大変なのはわかるが、そっちかこっちかどっちかにしろ。聞こえているか?」
「……ん……あぁ、おっけーおっけー。何だったっけーろけろけろ?……あ、そうそう。これ見て見て」
ゼーハー肩で息をして。気だるそうに歩いてきて、彼女の登場に驚いて立ち上がったアキラさんが座っていた椅子を奪い腰を下ろした。
ユエさんはどこかボーっとしていて、アキラさんに声をかけられても反応が薄い。というか、ハトがいない代わりに眼帯を付けているんだけど。
右目に黒い眼帯。怪我でもしたのかしら?気になってガン見していると、ポケットから小さく小さく折りたたまれた紙を取り出したユエさんと目が合った。
「ナツメさんとマクベスさんは、この状態のユエを見るのは初めてだったか?」
ニッと笑ったアキラさんによると、今のユエさんは“解放”状態らしいわ。使役しているハト全てを解き放ち街を偵察させ、そのハト全ての感覚を共有している。
たとえるならそうね。何台もの監視カメラを同時に見ていてかつ聴覚も嗅覚も同調しちゃってる感じ。
ユエさんが眼帯で隠している右目では、外を飛び交っているハト達が見ている景色が見えているんだって。
感覚を“共有”するだけじゃなくてちゃんと指示もしているみたいよ。だからさっきみたいに“共有”の方に意識が行っちゃって、本体の感覚が鈍くなる。
本当、恐ろしいくらいに天才だわ。そしてその“共有”によって新しい情報を得たから彼女はわざわざここにやってきた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる