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酒吞童子と茨木童子
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しおりを挟む聞けば、ナナシ君は急成長を遂げてから復讐のための力を強く求めたんだって。何でもいいから戦える力が欲しいと強く強く願って、そして晴明様が聞き入れた。
あたしとマクベスの中に居ながら遠く離れた彼の話を念話で聞き、この方法を思いついた。
言葉通り晴明様はナナシ君の力になった。生後1日のナナシ君に力と知識を与え、最善へと導く先導者となった。
晴明様だって酒吞童子と茨木童子のような死者。それでも魂でだけでもこの世界に存在しているのはただ、晴明様の素晴らしいお力のおかげってだけじゃないんだとあたしは思う。
いつか、誰かに「強く願い続ければ願いは叶う」って言われたことがある。いつ、誰に言われた言葉なのかはもう忘れちゃったけど。
晴明様の存在はその、願いが叶った結果なんだと思うの。長く強く想っていたから、主にあたしがとても強く欲していたから。
それに、ナナシ君の純粋で強い想いがあったから気づき、晴明様は力を貸すことができた。
もしもあたしやマクベスが晴明様を拒否――あたしは絶対にないけどね!――して、ナナシ君が戦意喪失でもしたらきっと、晴明様はたちまち消失してしまう。そんな気がするわ。
「倒せるの?」
ナナシ君は振り返らない。その言葉が自分に向けられたものじゃないってわかっているから。
「愚問だよナツメ、私を誰だと思っている?……私は、約束は違えん。必ずまた地獄に連れて行ってやる。全ての地獄巡りがまだ途中だからな」
ナナシ君の中の晴明様が見える。左手は略式の印を結んで、右手はナナシ君の手に重ねて刀を握っている。
あたしの目をまっすぐ見つめて意地悪そうに、けれど怒りを含んだ決意の黒い瞳がニッと笑った。
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