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悪鬼羅刹
9P
しおりを挟むでもまた元の鬼斬り丸に戻ったわ。新品同様の、綺麗な鬼斬り丸。いや違う。白銀に輝いちゃってる?
「はぁ。譲渡は完了したな。これからはマクベスが“式神ナツメ”の主だよ。私は死んだ身。式神の死を直す力は残っていない。だからマクベスに譲渡し、ナツメを直させた。理解したか?」
そんなにすぐ理解できるわけないでしょ。マクベスだって放心状態だし。
怪我くらいならすぐに治るけれど、瀕死の重傷ともなればそうもいかない。主である晴明様の力でなんとか治っていたんだけど、酒吞童子と茨木童子との戦いで晴明様はあたしの中から抜けていた。
だからあたしは死にかけていた。死んで、新しい体に転生するはずだった。
晴明様がマクベスに握らせていたのはあたしの本当の本体。式神としての依り代、人の形をした紙切れ。
晴明様は“式神ナツメ”の主を自分からマクベスに譲渡し、あたしの修復をマクベスの力を使ってできるようにしたのね。
やり方はどうであれ、あたしとマクベスの絆の強さをよく理解しているからこの方法を選んだ。
おかげであたしは一旦元の紙切れに戻り、また鬼斬り丸として――新生ナツメとして生まれ変わった。オッケー。マクベス、そろそろ理解しなさいよ。
手の中に確かにある鬼斬り丸を見つめ、隣で立って見下ろしている晴明様を見つめ、また鬼斬り丸を見つめる。もう1度、恐る恐る晴明様をジィーっと見つめてコテンと首を傾げたから。
あまりにも理解が遅いから人間の姿に戻って思いっきりビンタしてやったわ。
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