花喰みアソラ

那月

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本日は閉店なり

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 目元の力が抜けて伸ばされた手があたしの頭を撫で、あたしは我慢の限界で顔が崩れた。同時に折れちゃったの。引き分け。


 お互いに驚いて、アソラさんは立ち上がってアタフタ。まさか泣かれると思わなかった?あたしも頭を撫でられるとは思ってもみなかったわよ。


「ミサキさんが食べさせてくれたら、食べられるかもしれないね」


 シュッシュッシュッと手早くティッシュを取って、けれどまるで腫れ物に触るみたいに優しく丁寧に涙を拭ってくれるアソラさん。


 グズグズが治まると、そう言ってあたしの手に触れて悪戯っぽく笑った。え?冗談、本気どっち?


 あたしの手は無意識に動いて、ゴボウの煮物をお箸でつかむと彼の口元へ。少し渋ったものの、苦笑を浮かべて彼は口を開けた。


「柔らかいね。きっと美味しいんだろうけど、ごめん。やっぱり味はわからない。でも嬉しいよ、ありがとう」


 あたし、放心状態。ごめんなさい、思考がついて来れてないみたい。まず、あたしが彼に食べさせてあげたってことがビックリなんだけど。


 彼の指先が触れて熱くなっている手で、お箸をゆっくり動かして彼が食べる。柔らかく微笑んでくれた瞬間、胸の奥が温かくなった。


 そこで我に返って、ボボボボッとめまいがするほど顔を中心に熱くなっているの。わぁぁぁ、すっごい恥ずかしいことしてる!


 言葉を紡ぐことも声を出すこともできなくて。アソラさんはお箸をあたしから受け取ると、今度は自分でにんじんを口に運ぶ。


 何度も噛んで、ゴックン。柔らかく煮込んであるのはわかるんだけど、これも味はわからないって首を横に振る。


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