花喰みアソラ

那月

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本日は閉店なり

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 絶対に嘘を吐かない、思いやりを大事に生きるって決めたの。嘘を吐いて、言葉のナイフで切りつけた時の痛みはよく知っているから。


 傷つけた側も傷つけられた側もずっと痛くて苦しいのは、アソラさんにもわかるでしょう?


「………………そっか、わかった。花と水しか受け付けない俺の体が、まだ食べ物を受け入れてくれるのか挑戦してみるよ。ありがとう」


 うつむかなかった。目を反らさなかった。瞬きをすればこぼれちゃうってくらい涙を溜めて、もうヤバいって時に彼はニコッと微笑んだ。


 ティッシュじゃなく、指で涙を拭ってくれた手が頬に触れまた見つめられる。


「君は本当に、他の人とは違う不思議な人だ。踏まれても、根がしっかりと張っているから時間をかけてでも起き上がる雑草みたい」


 あたしは雑草ですか。何か可愛い、綺麗なお花に例えられるのかと思ったら雑草って。すっかり涙が引いちゃったわ。


 雑草は強いのよね。土がないわずかな隙間やコンクリートのひび割れの中でも、どんな環境でも生えてきて根っこさえ生きていれば必ず復活する。


 しぶといってこと?諦めが悪くて前向きって意味なら嬉しいわ。素直に、ありがと。


 それからあたしが晩御飯を食べている間、アソラさんはゆっくりゆっくり時間をかけて食べる練習をしてくれていたわ。


 酷く小さな一口で、何十回もかけて咀嚼して。途中で本来の晩御飯であるお花を食べて、安心する味に顔がほころんじゃってた。


 結局彼はそんなに食べられなくて。少ししか入れていなかったのにその半分も食べられずに「ごめんね」って残した。


 もちろん咎めたりなんかしないわ。これからは晩御飯の時に食べる練習をするって言ってくれた。だけど、なぜかあたしの手料理の時だけ。


 す、すごいプレッシャーなんだけど。慣れてきたらお菓子でも作ってみようかしら?


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