惰眠童子と呼ばれた鬼

那月

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ヤモリは家守

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 間一髪で小娘と冷蔵庫の間に滑り込み、突き出した右手で冷蔵庫を支えた。つもりだったが、とっさのことに力が入りすぎた。


 俺の右腕は瞬間に鬼化し、冷蔵庫の真ん中あたりまでめり込んでしまっている。まさか、爆発するか?


 少々ビリビリ痺れるが揺れが収まってくると冷蔵庫を元の位置に戻し、完全に使い物にならなくなったのを確認する。あぁ、中のものもほとんどがお陀仏だな。


 かなりのボロ家で天井が崩れてきたが、小娘に直撃させまいと俺の体の下に押し込んで庇ってやった。全ては約束のため。あぁ、ボロい着物がさらにボロボロだ。


 キツネは…………あぁ、大丈夫だな。キツネが強く握りすぎてテーブルの足がいささかかわいそうなことにはなっているが、無傷。


 グズグズ泣くな、男だろうが。だがまぁ、怪我がなくてよかったな。キツネはほら、俺の大事な下僕なのでな。使い物にならなくなっては新しい下僕を見つけなくてはならないだろう?


 至極面倒くさい。それに、キツネが俺にかまってほしさに色々な献上ものを持ってきたり、困り果てて泣きついて来たら。完全に無視または冷たくしてイジメ尽くす楽しみがなくなる。


 冷蔵庫から右腕を抜いて小娘の無事を確認していると、ワナワナと震える茶色い目が合った。


 左腕で抱いている、ガタガタと震える肩から微細な振動が伝わってきてこそばゆい。どうした、どこか痛むのか?


「安心しろ。約束を交わした以上、この1週間は何があっても守ってやる。身を挺してでも、な。そのために本物の鬼の俺を選んだんだろう?」


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