惰眠童子と呼ばれた鬼

那月

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親友と金魚のフン

15P

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 いつもつき合わされ振り回される。と、他の鬼は陰で言っていた。今は、俺という新しい玩具を見つけて楽しんでいる子供。


 飽きれば捨てられる。ということはないが、せいぜい気をつけろよと茨木童子は言っていた。


 茨木童子は酒呑童子と1番付き合いが長く、完全に従者のような腐れ縁の関係になっている。賢く口では勝る。が、それでも疲れるらしい。


 今は俺がいるから休息をとるために、しばらく遠くへ旅に出ている。悪く言えば、俺は生贄だな。


「まぁ、私は君達が悪さをしないのなら良き友でいたいと思っているから。そこは、信じてね」


「信じてほしかったらあと50年は、俺を放っておいてくれ。眠い」


「おじいさんになっちゃうよ。下手したら死んじゃってるよ。私達人間は君達鬼と違って、とても寿命が短いのだからね」


「時久、引いてるぜ」


「おっと。ん、うっ、重い……」


 グイグイッと、竿が持って行かれそうになる。それほど大物だというわけではないだろうが、右へ左へ動き回ってなかなか引き上げられない。


 酒呑童子と朔に応援される中、踏ん張っても振り回されて徐々に川の方へと足が進んでいく。


 と、急に竿が軽くなった。針が外れたとか糸が切れたとかではない。横から酒呑童子が右手で俺の竿をつかみ、引っ張ったんだ。


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