惰眠童子と呼ばれた鬼

那月

文字の大きさ
206 / 218
永遠の鬼ごっこ

2P

しおりを挟む

 そんなこと、千年もの年月を生きた俺にはわかりきっている。だからこそ、信じて約束を交わしたのだ。


 この俺が珍しく、信じるに値する人間だと見込んだから。不和歌磨呂という1人の人間の男を信じてみたいと思ったのだ。


「はぁ……はぁ……ふっ、滑稽だ」


 自分の姿が滑稽すぎて、約束した湖に到着した途端に笑いがこぼれた。笑いで体が震える。歌磨呂は、まだ来ていないのか?


 今は何時だ?時計なんて持っていないからな。急かされたせいで少し早すぎたか。息を整え、周りを見渡す。歌磨呂はまだ来ていないよう……いや、いた。


 湖の、ちょうど俺がいる場所の反対側にいる。地面に手を突いてうずくまっている。


「おい、どうした!?しっかりしろ歌磨呂っ」


 俺は迂回するのももどかしく、足だけ鬼化してまっすぐ湖面を走り彼の元へと向かった。水面を走ることなど、その気になればわけない。


「と、きひ、さ…………あ、蒼輝さん……私……」


 苦しそうに荒い呼吸を繰り返し、額にはいくつもの汗粒が浮かんでいる。抱き上げると、半分ほどかすんだ歌麿呂の目が俺を求める。


 一瞬、腕に抱えた歌磨呂の目が赤く染まって見えた。酒呑童子の目に見えた。かなり顔色が悪い、ガタガタ震えて怯えている。


 なるほど、そういうことか。体の内側から蝕まれる感覚は、それは恐ろしいものだろう。


「酒呑童子。俺は歌磨呂の話を聞きに来たのだ、もう少しだけ待ってやれよ。無理をすれば体が壊れるぞ」


「あ……」


 歌磨呂の中の酒呑童子が彼を殺そうとしていた。自力で、目覚めてしまおうとしていた。嬉しいことだが、まだ早い。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】悪の尋問令嬢、″捨てられ王子″の妻になる。

Y(ワイ)
ファンタジー
尋問を生業にする侯爵家に婿入りしたのは、恋愛戦略に敗れた腹黒王子。 白い結婚から始まる、腹黒VS腹黒の執着恋愛コメディ(シリアス有り)です。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界転生してしまった。どうせ死ぬのに。

あんど もあ
ファンタジー
好きな人と結婚して初めてのクリスマスに事故で亡くなった私。異世界に転生したけど、どうせ死ぬなら幸せになんてなりたくない。そう思って生きてきたのだけど……。

処理中です...