50 / 386
つながり
9P
しおりを挟む深い空色の瞳に、今にも泣きだしてしまいそうな小紅が映っている。唇を噛みしめ、黒鷹の無言がより一層小紅の体全体を小刻みに震えさせる。
「っ…………自分でも、今の私がどれだけ不審なのかよくわかります。このお屋敷の敷居を跨がせたくない、近づけさせたくないと。しかし、それでも私はここにいなければいけないのです」
「だから、その理由を――兄上っ!」
「話させてやれ。僕の命がきけないんなら出て行ってもらうよ」
小紅の“話さなければならないこと”は終わった。ここからは小紅が“話したいこと”だ。
イライラの限界が見え始めた和鷹を制した黒鷹は目を細め、和鷹の口を手で覆った。思っていることは皆同じ。小紅の意思は固い。これではきりがない、と。
桜鬼でさえ飽きてきたのか、猫に夢中になっているし。物腰が柔らかなのにわずかに怒気を孕んだ黒鷹の言葉は、鋭い目は和鷹だけでなく他の4人にも向けられている。
桜鬼は猫から手を離し、高遠は不機嫌に前を向き、鳶と雪は姿勢を正す。和鷹は再度黒鷹に睨みつけられ、睨み返すと「ふんっ」と顔を背けて黙った。
小紅が敵だとして。武芸もできそうにない女だから、この人数を相手に1人で暴れることもないだろう。そう思っているのか?
確かにそうだろうが、それにしては油断しすぎているというか肩入れしすぎているというか。
まさか一目惚れ!?いや、それはさすがにあり得ないか。女に興味がないというわけでもないが。黒鷹は惚れた女であっても容赦はしない。
そんな黒鷹がここまで小紅の話を聞こうとするのは、何か深い考えがあってのこと。実の弟でさえ理解できない、深い深い考え。
「どうしてもお会いしたかったのです。夜鷹様が長年一緒に暮らしてきた、悪名高くも幸せそうなご家族であるあなた方に」
「それは、血のつながった娘なのに共に暮らすことを許されなかったために僕達への復讐心が生まれた、とも聞こえるけど?」
小紅個人の胸の内を語る。夜鷹と黒鷹達への思い。黒鷹はそれらの思いを聞き受け止めながら、そのさらに奥にあるものを引き出そうと小紅を見つめる。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる