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想い
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しおりを挟む「僕も紅ちゃんが好きだよ。大好き。絶対に、桜鬼以上に愛してるって胸を張って言えるね。病のことがあるから誰も好きになっちゃいけないって思って、わざと君に嫌われようと色々嫌がらせもしたのに。全然離れないんだもん。むしろ逆効果だったみたいだし?クスッゴホッ!ゴホッゴホッ!」
笑った途端、こみあげてきた咳に顔を背ける。いいところだったのに。
なかなか治まらない咳に伸ばされた小紅の手が黒鷹の背をさする。明らかに、初めて会った当時よりも咳が辛そうだ。
「はぁっ……ゴホッゴホッ、ゴホッゴフッ!うっ、く……っ」
告白の時くらいはと我慢しようとしたんだな。堪えきれずにしゃがみ込み、胸と口を手で押さえて激しく咳き込む。ツウと、指の隙間に赤いものが見えた。
「はぁっはぁっ、はぁっ…………大丈夫、もう、治まったから。わかるよね、日に日に弱っていく……こんな僕でも、本当にいいの?」
息をのんだ、けれど取り乱すことなく手拭いで黒鷹の赤く染まった口元と手の平を拭く小紅。泣きそうな笑顔で「もちろんです。ずっと、私がお支えしていきます」と答えた。
小紅の想いは強く熱い。諦めさせることなんてできないと、受け入れた。フッと笑った黒鷹は顔を上げ、小紅の背に手を回すと顔を近づける。
「こんな気持ちになったのは初めてだ。ワクワクする。もう絶対、離さないから。だから、覚悟してね……」
咳の苦しさと熱の上昇により夜空色の目に涙が浮かぶ。喜びと、安堵と、これからを想っての不安の混じった涙。でもきっと、小紅がいれば。
見つめ合い、小紅が「はい」と答えればあとはお互いに目を閉じる。
初めての接吻は、血の味がした。
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