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三上黒鴇
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しおりを挟む沙雪の肩を抱いていると小紅にもわかった、彼女の想いが。強く、熱い。熱い。かなり、熱い?
小紅のように武器を手に戦うことはできなくても行動で、想いをぶつける声で、言葉で戦う。これが三上沙雪の戦い。
「白鴇様。私を殺すということはこの子も殺すことになるのよ?私と白鴇様の赤ちゃん。ゆくゆくは、あなたの後を継いで城主になる子よ」
えっ?
小紅、黒鷹、白鴇の目が、沙雪が撫でる彼女の腹部に釘付け。もしかして、妊娠しているのか?盲目の上、妊婦なのに外壁を登ってきたと?
黒鷹は思った。「沙雪ちゃんって、こんな子だったなぁ」と。何事にもまっすぐで正義感が強くて、誰かさんと同じで諦めが悪い。
白鴇と沙雪が夫婦になってそれなりの歳月が流れている、子供ができても全くおかしくはない。が、今か?
少し冷静になったか?白鴇はちょっと仏頂面で沙雪を見て、黒鷹に視線を移す。そして、顔を背けた。
「…………さ……沙雪ちゃんには関係ない、兄弟喧嘩だし……」
耳が赤い!?まさか照れているのか!?一瞬前までは黒鷹をいたぶり殺そうと狂気に満ちていたのに、今では背けた顔を真っ赤にして声を震わせているだと?
あぁ、狂気と復讐心が真の愛に負けたのか。女ってすごいな。
いや、というよりも白鴇が最初から今までずっと沙雪のことが好き。純粋に子供の頃から好きで、今では妻として愛しているから。
狂気と復讐心に押し潰され消えかけていた愛を、沙雪が呼び覚ました。
そして、白鴇はもうじき父親になる。黒鷹は叔父さんか。生まれようとする新しい命を、白鴇は奪うことができない。その予想は当たった。
白鴇がまだ人間なら。きっと頭の中はグッチャグチャ。黒鷹への復讐心は消えていないけれど、しっかり憎悪は生きているんだけれど。でも、愛する妻との子供ができた、それはしっかり嬉しい。
だから、色々考えて考えて。考えすぎて、顔を真っ赤にさせて目がグルグル回っている。
「へぇ、白にもそういう想いが残ってたんだ。よかった。お兄さんは安心したよ。だから、これ以上心配かけないようにこれで最後にしよう。おいで、白鴇」
ニヤつくな、黒鷹。子供の頃、白鴇がどれほど沙雪のことを好きだったのか1番よく知っているからこそ、黒鷹は嬉しい。
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