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三上黒鴇
13P
しおりを挟むやられたらやり返す、同じ方法で。これだけは昔から変わらない、子供のままの白鴇。
しかし、そう簡単にやられないのが黒鴇。「そう来ると思ってた、よ!」と迫りくる足を夜鷹の刀で受け止め、和鷹の刀でその足を深く斬りつける。
ザシュッ!と血しぶきが舞い、たまらず白鴇は叫び下がる。今度は黒鴇の番。
踏み込み、一気に2つの刃を振り下ろす。その時、咳き込んだ。「ゴホッゴホッ!」と、これくらいならよかったのに。
着物の袖で口元を押さえなければならないほど激しく咳き込む彼はひとまず下がり、この隙にと飛び込んできた白鴇を迎え撃つ。
飛び出し、全力で振り下ろされる刀を2本の刀で受け止める。が、受け止めきれない。
白鴇の刀が肩に埋まったままで耐える黒鴇は、まだ咳が続く。歯を食いしばり、押し戻そうと腕に力をこめれば胸が苦しい。
「く、うぅぅ……が、あぁぁああぁぁぁッ!!」
何とかギリギリ、肩の肉を削ぎながらも横へ流すと床を蹴り、白鴇の右側へ回る。上からと下から、同時に振り上げ振り下ろす。
「あぁぁっ!!うっ……く、はぁっ……」
すかさず逆手に持ち替えた刀を背後に突き出すが、下からの刀に阻まれて失敗。背中を大きく斬りつけられた白鴇は床に倒れた。
起き上がろうとするも、横を向くので精一杯。力尽きて、笑った。
「あは、は……やっぱり兄さん、強いね…………負けちゃった。もう動けないや。だから、兄さんの勝ち」
右肩を貫かれ、足と背中を大きく斬りつけられ、他にもアチコチやられている。よくここまで動けたものだ。
刀から手を離した白鴇は傍らに立つ兄を見上げた。兄を慕う弟のまなざし。殺意も復讐心も狂気も、もうない。
和鷹の刀を握る兄の手に触れようと手を伸ばしたところで、白鴇の顔にポタポタと赤い雨が降った。
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