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新選組
6P
しおりを挟む山崎を油断させるためではない。そのあまりにも見慣れない自然な笑顔に、山崎は一旦跳び下がって顔をひきつらせた。
そこへすかさず鳶が何かを投げつけながら飛び込む。小さな爆弾か?
ギョッとさらに飛び下がって両腕を盾に身構える山崎。小さな爆弾が破裂し、鳶はどこからか取り出した布を思いっきりはためかせて破裂したものを風で飛ばす。
火薬が詰まった、俗にいう爆弾ではなくあるものが詰め込まれた特製爆弾。
中から飛び出したあるものは鳶が起こした風により山崎に襲いかかる。細かい砂か?正体不明、ほとんど見えないくらいの粒子が山崎を不安にさせた。
「何だこれ、うっ……ゴホッ!ゴホッゴホッゴホッ!っくっしょい!ふぇ……っくしょい!っくっしょい!ゴホッ、ゴホッゴホッゴホッ!うえっずずっ……」
もしかしたらヤバい薬かもしれない。そんなものを使うような奴らではないとはわかっていても、得体の知れない飛散物を吸い込まないようにするのは無理だった。
背後も確認せずかなり飛び下がったので大きな岩に逃げ場を奪われ、がっつりあるものを吸い込んだ。
途端に、咳とくしゃみを連発。じんわり涙がにじんで、鼻水ももうズルズル。そう、小紅が好きなアレだ。
「コショウ、恐るべし」
なんて鳶が呟いたのも、決戦の最中だというのに目を反らしたくなるほど汚い顔をさらしている山崎には聞こえない。
実は鳶は決戦前、小紅から新選組の勝手場にコショウを仕掛けていた話を聞いていた。簡単で効果は抜群。命を奪いこそしないが、しばらくの自由を奪える。そして何より、面白い。
が、これは鳶も計算外だろう。鳶がコショウ爆弾を投げたのと同時に、山崎は跳び下がりながらクナイを数本投げていた。
そのうちの1本が鳶の脇腹に命中、深々と突き刺さって流れ出る血が彼の足元に真っ赤な池を作り始めている。
肩を負傷しているのにこの命中率。それも、鳶への異常な執着ゆえのことか。
脇腹からクナイを抜くと、そこから滝のように真っ赤な血が噴き出た。しかしわずかにうめき声を上げるだけで、鳶は耐える。まっすぐ彼を見つめる。
「山崎丞。俺は、お前が好きだ」
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