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最初の酒は甘かった
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しおりを挟む3本の赤い線を胸に刻まれた原田。その胸を押さえていた真っ赤な手で槍を握り締めると、突っ込んでくる彼よりも早く走り一気に距離を詰め槍を思い切り振り下ろす。
ダンッ!と大きく足を踏み出して勢いを殺し、大きく上半身を反らして後ろに飛び避ける。
桜鬼の反応は早く槍は彼にかすりもしなかった。しかし、振り下ろされた槍はそのままの勢いで地面に深く突き刺さった。
そしてグッと体重をかけると原田は槍を軸に跳び上がった。高く高く。槍よりも高く、逆さまになって、桜鬼を飛び越える。
普通の槍使いにはできない身のこなし。開いた口が塞がらない桜鬼を逆さまに見下ろす原田は彼の背後に足先が触れた瞬間、槍を抜きながら素早く一閃。
ヒュンッ!と、空気が鳴った。すぐあとにガキィンッ!と金属がぶつかる音が響き原田の表情が曇る。
「俺の新技にも対応できるのかよ。ほんっとお前って、背中に目がついてるんじゃないか?」
「くっ……そんなわけないでしょ。でも、後ろは見えているような気がするよ。だって僕の目は、2つだけじゃないからね」
原田の思わぬ新技に驚きのあまり口をポカンと開けていた桜鬼だったが。さすがは元鬼面団、目を離さず冷静に反応。
振り返りながら彼の着地点に踏み込んで、槍を受け止めてみせた。が、わずかな遅れで惜しくも槍は左肩、鎖骨のあたりにめり込む。
槍の刃の半分ほどを肩に埋めた状態で留めている鉤爪はカタカタ震え、桜鬼の額に玉のような汗が浮かぶ。
力勝負だ。原田は上から体重をかけて槍を押し込み、桜鬼は両手の鉤爪で何とか押し返そうともがく。
押して押されて、桜鬼の左肩が何度も押し付けられるたびに血しぶきをあげる。もう、左半身は血まみれだ。
「うぅっ……ぐ、うぅぅっ…………僕は、まだ終わるわけにはいかないんだ。やっと見つけたんだ、俺の生き甲斐のために……ッ!!」
斬られるのを覚悟で、原田のすねを蹴った。肩から脇のあたりまでをザックリ斬られ、蹴った反動で後ろによろめく桜鬼。
失血しすぎだ。目がかすんできて、苦しそうに荒い呼吸を繰り返すあたりもう長くはもたない。
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