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ねこねここねこねこ
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しおりを挟むが、獰猛な山猫ではない猫丸では力が足りない。歯形がついただけで、足をつかまれた猫丸はさっきのヒスイと呼ばれた猫のように地面に叩きつけられる。
とっさに受け身をとっても、怪力の松原はもう容赦ない。うつぶせに、胸を打ち付けた猫丸の口から血が飛び出す。
自分の口から飛び出した赤い塊を見た猫丸の体が、引っ張り上げられる。かと思えばまたすぐに地面に叩きつけられ、今度は背中を強打。どこか、体の中で嫌な音が響いた。
哀れみの目だ。松原は猫丸がまだ子供だからと、殺しはせずに動けなくして捕らえることを選んだ。だって今の猫丸では到底かなうはずがない。
辛く苦しい戦いは早く終わらせてあげよう。松原にとっては息子も同然の猫丸に、同情した。
「かはっ!ゲホッゲホッゲホッゲホッ!う、くっ……丸は、負けないのにゃ。絶対に、負けないのにゃーっ!」
「うおっ!この小さな体のどこにこんな力が、いやはや恐れ入る……」
さらにもう1度叩きつけようと足をつかんだまま振り上げる。その松原の腹に、振り上げられながらも爪をズブッと突き立てて上へ引っ掻く。
もう片方の手で薙刀の柄をつかむと猫丸は、逆さまのまま薙刀の刃を誘導して肩を斬りつけた。
決して負けられない。たとえ山猫の時の力が出せなくても、猫丸ならやれると頭領は託した。相手が新選組で怪力の1位2位を争う松原でも、猫丸なら勝てると信じているから。
その期待に猫丸は応えたい。頭領の黒鷹のために。一生懸命に戦っている他の仲間達のために。そして、自分自身のために。
野生の時の、山猫状態は猫丸にとって最強の武器。動きは格段に速くなって、力も断然強くなって、全ての感覚が研ぎ澄まされる。
その力が強大すぎて、ふだん勝手に暴走しないようにと鳶と黒鷹が制御をかけた。まだ子供の猫丸には制御できないからと。その小さな体が壊れてしまわないように。
猫丸自身もそう思っている。だが、本当にこのままでいいのか?変わるなら今じゃないのか?
強くなりたい。子供だからというのを言い訳にしないで、高遠のように貪欲に力を求めたい。桜鬼のように、もう1人の自分をものにしたい。
松原に勝つために?それもある。しかし、自分のために。猫丸が一人前の猫丸に生まれ変わるために、温かな幸せのために、変わりたい。
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