9 / 18
異界召喚編
第八話 邂逅
しおりを挟む
爆音が鳴った。それは着地音。
轟音を立てて女神ヒーラは地面に着地した。地面は抉れひび割れる。
王都ラディアの王宮の前へと着地した女神は優雅に振る舞う。
「さて、いきますか」
女神ヒーラがそういうと、見えない世界から急に熾天使王、セラフィムキングが現れる。
ジキジキジキ…と、電気のようなものを纏いながら唐突に現れた熾天使の王は女神を見る。
「透明化を解除してよかったのか?」
「ええ。どうやら人がいないようなのでね」
女神ヒーラは華麗に歩き出す。
「…ふむ」
一歩踏み出すたと、その大地は神聖なオーラに包まれる。
治神。名の如く治癒の神。
こと治癒に関しては叶うものなしではないだろうか。
「…」
そうして、それに続くように熾天使王も歩き出す。…が、少し歩いたところで羽を広げ羽ばたく。
彼が足を踏み出すたびに、そこは焦げたようにやけてしまう。
なので、普段は飛行して移動している。
背中にある四つの羽を使い、ふわりと舞う。
「……」
そこから、王の謁見の間まで行くのは容易かった。
「…全くな。王であるこの俺が王の間にいくなど…滑稽な話ではないか」
「そうかしらね?…まぁそうかもしれないわ…とはいえ、あと少しなのだから…多少は我慢しなさい」
「はぁ…まぁ、種族のランクとしては神族の方が高いのだがな。俺は自分より弱いやつの命令を聞くのは嫌いなんだ」
「…あ?」
治神が苛立つ。
すると、そこに力場が発生したように、周りのものが崩れだした。それは、彼女を怒らせた、という合図。
「…という冗談だ」
「…」
スッ、と周囲への破壊は止む。感情の起伏でさえ周囲の環境を変え得る、それが神族。
「…」
二人は王宮内の廊下を歩いていて不思議に思う。
「こんなに人がいないものなのか?」
「…さぁ?私は人族のことあんま良くわからないからね…」
「そうか」
そうして話し合っている中で、二人は謁見の間へとたどり着いた。
「ここか」
「…えぇ…!サリヴァ…いるわね?」
すると、王の椅子の後ろから人影が現れる。
「えぇ、治神様、熾天使王様」
現国王のサリヴァが現れた。
「ふん、女神の眼」
「…?」
女神が何かを使用する。
それは、神族限定の術。
女神の眼
その効力は、その特定の物、人、生き物に対して、あらゆることを見抜く…というもの。
「…本物みたいね。」
「わたしが裏切るはずありません!」
「えぇ、わかっています。ですが、一応…ね?」
多少は用心のある女神。
「…?ところで熾天使王様は?」
「あぁ、彼は今、あることをしているから」
「…はぁ?」
「で、用意は出来ているわね。」
「ええ、もちろん」
…用意されたもの。それは──
「生贄、五十人!!」
奴隷ではあるが、生贄約五十人。
「た、助けてくれえぇェっ!」
「いやぁぁあ”ぁぁあ!」
女神は奴隷達の悲鳴の横で歓喜に打ち震える。彼らの悲鳴は全て無視される。
「あぁん、何を言ってるんですか貴方方は。貴方達は本来、感謝するべきなのですよ?」
「感謝……?感謝だと?ふざけ──」
「静かにしなさい」
女神の魔法──静寂によって音は消える。
「よくやりました。では、もうさっさと始めてしまいましょう」
女神が禁止極限術の儀式を開始した。
治神は己の腕を斬りつけ、出血させる。
その血をどこからか、取り出したグラスへと注ぐ。
そして、またどこかから取り出した葉っぱのようなものを握り、そこから出た、青色の液をグラスへと注ぐ。
そして、また女神ヒーラは次から次へと。
取り出しては注ぐ。
そして、時が進み…
「では、最終工程を執り行います」
パシンと両の掌を合わせて、女神ヒーラは詠唱を開始する。
この詠唱こそが、禁止極限術の最終工程。
その時、五十人の命が必要なのだ。
「……?」
その刹那。一瞬間。
バンバンバンバン、と、鉄砲が撃たれたような音がした。
「──」
「攻め入れぇぇえええええェェエエ!!!!!!」
それは、人間の声。
そして、王の謁見の間へと侵略し──
「…熾天使王…発動しなさい」
「了解」
──。
その時。
光の矢のような、いや、光の塔のようなものが王の謁見の間を覆うように展開された。
パァァと強い光を放つそれは、日中であるにもかかわらず、一際輝いていた。
「…さて、防御完了だ」
「ふふふ…ふ」
女神ヒーラは、いや、治神は、ニィィィと微笑む。
その顔を歪めて。
「馬鹿な人間たちね…私達を止めようとしている事なんて漏れているに決まっているのに……」
──その魔法は、光柱の天盤と呼ばれる最高位の魔法である。
並の防御力ではなく、大砲による砲撃では傷一つつかないだろう。
◇
その数刻前。
人族側は、対天使と対神族にたいするチームを編成していた。
熾天使王が召喚する天使たちは犯罪者四人組に任せるとして。
対熾天使は、最高位騎士たちに。
対女神は、ブラッドと反耳長族のアルペで、相対する。
「…で、今日がその日な訳だが」
「…」
王宮前に集合した皆は、そのあまりの静かさに驚いていた。
普段は人通りも多く、喧騒的であるが、全員避難している現在は──
「…少し寂しいっすねー」
「…あぁ…」
最高位騎士たちがそのような話をしていた。
「…では、今から作戦決行の位置へとつく。いいな?」
「「おう」」
「…ま、お前たちが重要なんだが」
「…ヒヒ、俺達っすか?」
「…あぁ。要だろうな…ふふ」
作戦の狼煙を上げるのは、犯罪者のうち三人。
コジロウ、アラ、ニーヤの三人。
そして、声を上げて侵略の合図をするのは──
「セイヤ、頼むぞ」
「うっす」
女神たちが、到着するのを目撃。
そして、ブラッドの盗音で、女神たちの会話を聞き取る。
──そして、あるタイミングで──
「攻め入れぇぇぇぇええええ!!!」
セイヤが合図をする。
そして。
そして、
「ふふふ」
そして。
ブラッドの予想通り、案の定女神が微笑んだ。
「馬鹿な人間たちね、私達を止めようとしている事なんて漏れているに決まっているのにね」
「──あぁ、そうだな」
透明化解除。
魔法──、使用。
「悪の鼓動」
「……!?」
「ふむ…」
──焦る女神と動揺しない熾天使。
(なるほど、面白い)
──戦の始まりである。
轟音を立てて女神ヒーラは地面に着地した。地面は抉れひび割れる。
王都ラディアの王宮の前へと着地した女神は優雅に振る舞う。
「さて、いきますか」
女神ヒーラがそういうと、見えない世界から急に熾天使王、セラフィムキングが現れる。
ジキジキジキ…と、電気のようなものを纏いながら唐突に現れた熾天使の王は女神を見る。
「透明化を解除してよかったのか?」
「ええ。どうやら人がいないようなのでね」
女神ヒーラは華麗に歩き出す。
「…ふむ」
一歩踏み出すたと、その大地は神聖なオーラに包まれる。
治神。名の如く治癒の神。
こと治癒に関しては叶うものなしではないだろうか。
「…」
そうして、それに続くように熾天使王も歩き出す。…が、少し歩いたところで羽を広げ羽ばたく。
彼が足を踏み出すたびに、そこは焦げたようにやけてしまう。
なので、普段は飛行して移動している。
背中にある四つの羽を使い、ふわりと舞う。
「……」
そこから、王の謁見の間まで行くのは容易かった。
「…全くな。王であるこの俺が王の間にいくなど…滑稽な話ではないか」
「そうかしらね?…まぁそうかもしれないわ…とはいえ、あと少しなのだから…多少は我慢しなさい」
「はぁ…まぁ、種族のランクとしては神族の方が高いのだがな。俺は自分より弱いやつの命令を聞くのは嫌いなんだ」
「…あ?」
治神が苛立つ。
すると、そこに力場が発生したように、周りのものが崩れだした。それは、彼女を怒らせた、という合図。
「…という冗談だ」
「…」
スッ、と周囲への破壊は止む。感情の起伏でさえ周囲の環境を変え得る、それが神族。
「…」
二人は王宮内の廊下を歩いていて不思議に思う。
「こんなに人がいないものなのか?」
「…さぁ?私は人族のことあんま良くわからないからね…」
「そうか」
そうして話し合っている中で、二人は謁見の間へとたどり着いた。
「ここか」
「…えぇ…!サリヴァ…いるわね?」
すると、王の椅子の後ろから人影が現れる。
「えぇ、治神様、熾天使王様」
現国王のサリヴァが現れた。
「ふん、女神の眼」
「…?」
女神が何かを使用する。
それは、神族限定の術。
女神の眼
その効力は、その特定の物、人、生き物に対して、あらゆることを見抜く…というもの。
「…本物みたいね。」
「わたしが裏切るはずありません!」
「えぇ、わかっています。ですが、一応…ね?」
多少は用心のある女神。
「…?ところで熾天使王様は?」
「あぁ、彼は今、あることをしているから」
「…はぁ?」
「で、用意は出来ているわね。」
「ええ、もちろん」
…用意されたもの。それは──
「生贄、五十人!!」
奴隷ではあるが、生贄約五十人。
「た、助けてくれえぇェっ!」
「いやぁぁあ”ぁぁあ!」
女神は奴隷達の悲鳴の横で歓喜に打ち震える。彼らの悲鳴は全て無視される。
「あぁん、何を言ってるんですか貴方方は。貴方達は本来、感謝するべきなのですよ?」
「感謝……?感謝だと?ふざけ──」
「静かにしなさい」
女神の魔法──静寂によって音は消える。
「よくやりました。では、もうさっさと始めてしまいましょう」
女神が禁止極限術の儀式を開始した。
治神は己の腕を斬りつけ、出血させる。
その血をどこからか、取り出したグラスへと注ぐ。
そして、またどこかから取り出した葉っぱのようなものを握り、そこから出た、青色の液をグラスへと注ぐ。
そして、また女神ヒーラは次から次へと。
取り出しては注ぐ。
そして、時が進み…
「では、最終工程を執り行います」
パシンと両の掌を合わせて、女神ヒーラは詠唱を開始する。
この詠唱こそが、禁止極限術の最終工程。
その時、五十人の命が必要なのだ。
「……?」
その刹那。一瞬間。
バンバンバンバン、と、鉄砲が撃たれたような音がした。
「──」
「攻め入れぇぇえええええェェエエ!!!!!!」
それは、人間の声。
そして、王の謁見の間へと侵略し──
「…熾天使王…発動しなさい」
「了解」
──。
その時。
光の矢のような、いや、光の塔のようなものが王の謁見の間を覆うように展開された。
パァァと強い光を放つそれは、日中であるにもかかわらず、一際輝いていた。
「…さて、防御完了だ」
「ふふふ…ふ」
女神ヒーラは、いや、治神は、ニィィィと微笑む。
その顔を歪めて。
「馬鹿な人間たちね…私達を止めようとしている事なんて漏れているに決まっているのに……」
──その魔法は、光柱の天盤と呼ばれる最高位の魔法である。
並の防御力ではなく、大砲による砲撃では傷一つつかないだろう。
◇
その数刻前。
人族側は、対天使と対神族にたいするチームを編成していた。
熾天使王が召喚する天使たちは犯罪者四人組に任せるとして。
対熾天使は、最高位騎士たちに。
対女神は、ブラッドと反耳長族のアルペで、相対する。
「…で、今日がその日な訳だが」
「…」
王宮前に集合した皆は、そのあまりの静かさに驚いていた。
普段は人通りも多く、喧騒的であるが、全員避難している現在は──
「…少し寂しいっすねー」
「…あぁ…」
最高位騎士たちがそのような話をしていた。
「…では、今から作戦決行の位置へとつく。いいな?」
「「おう」」
「…ま、お前たちが重要なんだが」
「…ヒヒ、俺達っすか?」
「…あぁ。要だろうな…ふふ」
作戦の狼煙を上げるのは、犯罪者のうち三人。
コジロウ、アラ、ニーヤの三人。
そして、声を上げて侵略の合図をするのは──
「セイヤ、頼むぞ」
「うっす」
女神たちが、到着するのを目撃。
そして、ブラッドの盗音で、女神たちの会話を聞き取る。
──そして、あるタイミングで──
「攻め入れぇぇぇぇええええ!!!」
セイヤが合図をする。
そして。
そして、
「ふふふ」
そして。
ブラッドの予想通り、案の定女神が微笑んだ。
「馬鹿な人間たちね、私達を止めようとしている事なんて漏れているに決まっているのにね」
「──あぁ、そうだな」
透明化解除。
魔法──、使用。
「悪の鼓動」
「……!?」
「ふむ…」
──焦る女神と動揺しない熾天使。
(なるほど、面白い)
──戦の始まりである。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
9
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる