11 / 17
3
しおりを挟む
xxxx年4月1日
気づけば僕はあの空き地で立ち尽くしていた。
手のひらには一枚の花びら。
今年も桜が僕を迎えてくれる。
あの桜はなんだか僕をずっと待っている気がした。
咲良はまだ来ていない。
待っているこの時間がもどかしい。
僕は桜の木の影に腰掛けた。
頭上で枝がひらひら風になびいて、花びらを空へ連れていく。
薄い青空に流れていく桃色の花びら。
僕はただそれを眺めていた。
1つ、綺麗にまっすぐ流れていった。
2つ、ひらひら左右に揺れながらも流れていった。
3つ、急に落ちそうになって、それでもなんとか流れてった。
4つ、風が止んで、地面に落ちてった。
僕は地面に落ちた花びらを優しく拾い上げる。
土が少し付いて萎れた花びら。
それを見た僕の頭に誰かの記憶が過ぎった。
僕は少しの間、そのまま時を過ごしたと思う。
そして、僕は思い立ったように立ち上がった。
ぎゅっと花びらを握りしめ、僕は歩き始める。
地面を踏みしめる力が徐々に強まっていく。
何かに導かれるように本能的に体が惹き付けられる。
頭の中にはずっと誰かの記憶が焼き付いていた。
その記憶に縋るように。
その記憶を求めるように。
いつも何かが足りていなかった。
足りないものを隠すように蓋をしていた。
でも、今はただそれに触れたいと思っている僕がいる。
導かれるまま家に帰ると、家にはほとんど何も残っていない。
電気もつかない小さな部屋は、何ひとつとして人が暮らしていた痕跡を残してくれない。
何も無い。
それが何故か、変に心地良かった。
僕は迷うことなく、ベランダに向かった。
ベランダの脇で忘れ去られていた小さな植木鉢。
そこには弱々しくも、一輪の花が咲いていた。
僕は植木鉢のそばにかがみ込み、そっとその花に触れ、優しく花の茎を折った。
おもむろに鼻に近づけると、なんだか懐かしい匂いがした。
春の終わり、一人海辺を歩く僕。
ツンと鼻を指す匂いに、何故か惹かれたあの日。
白く開いた花びらが大好きだったワンピースに重なる。
僕の頬から流れた涙。その涙はまるで雨粒のようにまたひとつ、またひとつとこぼれ落ちる。
僕はようやく違和感の正体に気づいた。
そして、それを待っていたかのように、僕の世界は反転する。
気づけば僕はあの空き地で立ち尽くしていた。
手のひらには一枚の花びら。
今年も桜が僕を迎えてくれる。
あの桜はなんだか僕をずっと待っている気がした。
咲良はまだ来ていない。
待っているこの時間がもどかしい。
僕は桜の木の影に腰掛けた。
頭上で枝がひらひら風になびいて、花びらを空へ連れていく。
薄い青空に流れていく桃色の花びら。
僕はただそれを眺めていた。
1つ、綺麗にまっすぐ流れていった。
2つ、ひらひら左右に揺れながらも流れていった。
3つ、急に落ちそうになって、それでもなんとか流れてった。
4つ、風が止んで、地面に落ちてった。
僕は地面に落ちた花びらを優しく拾い上げる。
土が少し付いて萎れた花びら。
それを見た僕の頭に誰かの記憶が過ぎった。
僕は少しの間、そのまま時を過ごしたと思う。
そして、僕は思い立ったように立ち上がった。
ぎゅっと花びらを握りしめ、僕は歩き始める。
地面を踏みしめる力が徐々に強まっていく。
何かに導かれるように本能的に体が惹き付けられる。
頭の中にはずっと誰かの記憶が焼き付いていた。
その記憶に縋るように。
その記憶を求めるように。
いつも何かが足りていなかった。
足りないものを隠すように蓋をしていた。
でも、今はただそれに触れたいと思っている僕がいる。
導かれるまま家に帰ると、家にはほとんど何も残っていない。
電気もつかない小さな部屋は、何ひとつとして人が暮らしていた痕跡を残してくれない。
何も無い。
それが何故か、変に心地良かった。
僕は迷うことなく、ベランダに向かった。
ベランダの脇で忘れ去られていた小さな植木鉢。
そこには弱々しくも、一輪の花が咲いていた。
僕は植木鉢のそばにかがみ込み、そっとその花に触れ、優しく花の茎を折った。
おもむろに鼻に近づけると、なんだか懐かしい匂いがした。
春の終わり、一人海辺を歩く僕。
ツンと鼻を指す匂いに、何故か惹かれたあの日。
白く開いた花びらが大好きだったワンピースに重なる。
僕の頬から流れた涙。その涙はまるで雨粒のようにまたひとつ、またひとつとこぼれ落ちる。
僕はようやく違和感の正体に気づいた。
そして、それを待っていたかのように、僕の世界は反転する。
0
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。
そこで待っていたのは、最悪の出来事――
けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。
でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
不実なあなたに感謝を
黒木メイ
恋愛
王太子妃であるベアトリーチェと踊るのは最初のダンスのみ。落ち人のアンナとは望まれるまま何度も踊るのに。王太子であるマルコが誰に好意を寄せているかははたから見れば一目瞭然だ。けれど、マルコが心から愛しているのはベアトリーチェだけだった。そのことに気づいていながらも受け入れられないベアトリーチェ。そんな時、マルコとアンナがとうとう一線を越えたことを知る。――――不実なあなたを恨んだ回数は数知れず。けれど、今では感謝すらしている。愚かなあなたのおかげで『幸せ』を取り戻すことができたのだから。
※異世界転移をしている登場人物がいますが主人公ではないためタグを外しています。
※曖昧設定。
※一旦完結。
※性描写は匂わせ程度。
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載予定。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる