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ネイサン様やモニカが学園に来なくなってから一週間、私は毎日ローラを交えてリアムと昼食をとり、放課後はしばらく二人で語らい、私の屋敷まで送ってもらうという生活をしていた。
家に帰れば、お母様は「リアム様とどんな話をしたのか」と詳しく聞こうとしてくる。
話しているのは世間話……その日学園であったことや、私が世話をしている花の事や、そんな他愛なことばかりだったけれど。
今日は週末だったから、いつものようにリアムの馬車に乗せてもらって家についたところ、お母様が彼を引き留めた。
「リアム様、ぜひうちで夕食をご一緒しませんか?」
「お母さま、それは……」
家での夕食に異性を招くとなると、親が公に関係を認めた――つまり、婚約したというような意味合いになってしまう。
確かに、婚約の話を考えてくれとは言われたけれど、今のところ、まずはお友達からということだけど……。
リアムは笑顔で「喜んで」と答えたので、私は慌ててしまった。
「そんな、こんな急なお誘いで申し訳ないです」
「いや、嬉しいよ。屋敷に戻っても叔父上は週末は特に不在が多くて、叔母とだけ食べるのも気まずいし」
「……そう?」
それなら、一緒に食べたほうが良いかしら、そう思いながら玄関を入ると、お母様が「数日前から準備していたから、安心おし」と耳打ちした。
……その言葉通り、夕食はお客様を歓迎するいつもより大分豪華なものだった。
***
お父様が帰って来てから、私たちは食卓を一緒に囲んだ。
「本当に美味しかったです」
食後のお茶を飲みながら、リアムの言葉にお父様もお母様も嬉しそうに笑ったその時……、
「旦那様、玄関に……」
執事が耳打ちをすると、お父様は血相を変えて椅子から立ち上がった。
「ちょっと失礼、食後のお茶を続けていてくれ」
そう言って執事とともにそそくさと去って行く。
私たちは何があったのかしらと顔を見合わせた。
そして、しばらくすると……、私の名前を誰かが大きな声で言っているような声が聞こえて来た。この声は……! 思わず立ち上がると、玄関ホールへ走った。
「ルイーズ!」
後ろからリアムがついてくる。
玄関には、確かにお父様と対峙するネイサン様がいた。
「ネイサン様?」
何でこんな時間に、私の家に直接ネイサン様が……、それに……。
表情が動かせなくなる。……モニカも一緒……!? それだけではなく……、モニカの父親と思われる男の人も一緒にいた。
いったい、何事だろう。
「ルイ―ズ!」
私に気づいたネイサン様が名前を呼んだ。
……どんな顔で私に会いに来たのかしら。
学園のホールで見つめられた時は、私を恨むような暗い目をしていたわ。
恐る恐るネイサン様の瞳を見た私は、戸惑ってしまった。
――依然と変わらない、澄んだ青い瞳で私を見ていたから。
「……」
何と言っていいかわからず立ちすくんでいると、
「ネイサン様! お引き取り下さい! ルイーズに謝罪したければ、まず国王陛下を通して、然るべき方法でしていただきたい!」
お父様が大きい声でそう言って、ネイサン様を玄関の外に追い出してしまった。
「リアム様、お見苦しいものをお見せしました。ルイーズ、食卓へ戻ろう。まだデザートがあったはず」
お父様は大きく息を吐くと、私たちに向き直って、何事もなかったかのように笑った。
だけど、私は、聞かざるおえなかった。
「お父様……、ネイサン様は何を言いに来たんですか?」
今さら、何を言いに?
「……モニカの言っていた、お前に関することは、でっちあげだったと。謝罪をしたいと言ってきた」
お父様は大きなため息交じりにそう答えて、表情を厳しくした。
「今さら虫の良い。きちんと、公に謝罪させるから安心しなさい」
「学園のホールで君を責めたてたんだ。きちんと、皆の揃っている場で彼は謝るべきなんだよ」
リアムも私の肩に手を置いてそう言った。
家に帰れば、お母様は「リアム様とどんな話をしたのか」と詳しく聞こうとしてくる。
話しているのは世間話……その日学園であったことや、私が世話をしている花の事や、そんな他愛なことばかりだったけれど。
今日は週末だったから、いつものようにリアムの馬車に乗せてもらって家についたところ、お母様が彼を引き留めた。
「リアム様、ぜひうちで夕食をご一緒しませんか?」
「お母さま、それは……」
家での夕食に異性を招くとなると、親が公に関係を認めた――つまり、婚約したというような意味合いになってしまう。
確かに、婚約の話を考えてくれとは言われたけれど、今のところ、まずはお友達からということだけど……。
リアムは笑顔で「喜んで」と答えたので、私は慌ててしまった。
「そんな、こんな急なお誘いで申し訳ないです」
「いや、嬉しいよ。屋敷に戻っても叔父上は週末は特に不在が多くて、叔母とだけ食べるのも気まずいし」
「……そう?」
それなら、一緒に食べたほうが良いかしら、そう思いながら玄関を入ると、お母様が「数日前から準備していたから、安心おし」と耳打ちした。
……その言葉通り、夕食はお客様を歓迎するいつもより大分豪華なものだった。
***
お父様が帰って来てから、私たちは食卓を一緒に囲んだ。
「本当に美味しかったです」
食後のお茶を飲みながら、リアムの言葉にお父様もお母様も嬉しそうに笑ったその時……、
「旦那様、玄関に……」
執事が耳打ちをすると、お父様は血相を変えて椅子から立ち上がった。
「ちょっと失礼、食後のお茶を続けていてくれ」
そう言って執事とともにそそくさと去って行く。
私たちは何があったのかしらと顔を見合わせた。
そして、しばらくすると……、私の名前を誰かが大きな声で言っているような声が聞こえて来た。この声は……! 思わず立ち上がると、玄関ホールへ走った。
「ルイーズ!」
後ろからリアムがついてくる。
玄関には、確かにお父様と対峙するネイサン様がいた。
「ネイサン様?」
何でこんな時間に、私の家に直接ネイサン様が……、それに……。
表情が動かせなくなる。……モニカも一緒……!? それだけではなく……、モニカの父親と思われる男の人も一緒にいた。
いったい、何事だろう。
「ルイ―ズ!」
私に気づいたネイサン様が名前を呼んだ。
……どんな顔で私に会いに来たのかしら。
学園のホールで見つめられた時は、私を恨むような暗い目をしていたわ。
恐る恐るネイサン様の瞳を見た私は、戸惑ってしまった。
――依然と変わらない、澄んだ青い瞳で私を見ていたから。
「……」
何と言っていいかわからず立ちすくんでいると、
「ネイサン様! お引き取り下さい! ルイーズに謝罪したければ、まず国王陛下を通して、然るべき方法でしていただきたい!」
お父様が大きい声でそう言って、ネイサン様を玄関の外に追い出してしまった。
「リアム様、お見苦しいものをお見せしました。ルイーズ、食卓へ戻ろう。まだデザートがあったはず」
お父様は大きく息を吐くと、私たちに向き直って、何事もなかったかのように笑った。
だけど、私は、聞かざるおえなかった。
「お父様……、ネイサン様は何を言いに来たんですか?」
今さら、何を言いに?
「……モニカの言っていた、お前に関することは、でっちあげだったと。謝罪をしたいと言ってきた」
お父様は大きなため息交じりにそう答えて、表情を厳しくした。
「今さら虫の良い。きちんと、公に謝罪させるから安心しなさい」
「学園のホールで君を責めたてたんだ。きちんと、皆の揃っている場で彼は謝るべきなんだよ」
リアムも私の肩に手を置いてそう言った。
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