21 / 34
21.(ネイサン視点)
しおりを挟む
ルイーズに学園で公に謝罪をして、謹慎の身分になってからもう2週間になろうとしていた。謹慎中の身の上であるから、僕は宮廷の部屋から出ずに、室内で本を読んだり勉強をして過ごしていた。
――1人でゆっくりと考える時間ができると、なおさらルイーズのことが頭に浮かんだ。
どうして僕は。
そんな問いかけは無意味とわかっていても、何度も自分に問いかけた。
「ルイーズは……、どうしてるか何か聞いているか?」
朝、身支度に部屋を訪れた侍従にそう聞くと、彼は「いえ、特には」と首を振った。
「本当に、何も聞いていない?」
しつこくしてしまっていると思いながらも、重ねて聞いた。
侍従は言いにくそうに口をつぐんで、回答しなかった。
「何か聞いていたら、教えて欲しい」
主人から3回も聞かれれば、答えざるおえないのがわかっていて、そう聞いてしまった。
「ルイーズ様に……リアム王子が婚約の申し出をしているとか……、一緒にいらっしゃる姿をよくお見かけすると聞いています」
彼は僕の服にブラシをかけながら、重たい口を開いた。
リアム王子……、僕がルイーズを学園のホールで問い詰めた時に、間に入って彼女を助けたのは彼だったな……。
未だにあの時のことをはっきり思い出そうとすると頭痛がする。
僕は頭を押さえて俯いた。
「リアム様、大丈夫ですか!?」
侍従が慌てたように背中を支えた。
「ああ、……問題ない。教えてくれて、ありがとう」
そう答えて、彼を下がらせると、一人椅子に座って頭を抱えた。
僕とルイーズの婚約は、ルイーズの父親からの強い申し出もあり、正式に白紙に戻された。だから、彼女に誰が婚約の話をしようが自由で、元婚約者の僕が立ち入れる話ではない。
「仕方ない……、自分のせいだ……」
僕は頭を抱えたままソファに寄り掛かった。
モニカが僕の心を操っていたという……魔法の指輪……、それを彼女に渡したという占い師というのを父上に捜してもらっているが、未だに手がかり一つない。モニカは友人から良く当たる占い師がいると言われて城下町へ行ったと言っていた。今のところ、その占い師に占ってもらったというのは、その友人とモニカ、それから平民クラスに通うモニカの別の友人の数人だった。
……つまり、学園の生徒に集中して声をかけている……?
「学園の関係者……なのか?」
僕は立ち上がって部屋を歩いて回った。
何のためにモニカにその指輪を渡したんだ……。
僕とルイーズの婚約破棄を狙っていた?
それで誰か得をする人間はいるか?
そのままモニカと僕が結婚などすることになっていれば、例えば商会の人間などは得をするかもしれないが……。
部屋を何度かぐるぐると回った後、机に座ると置きっぱなしの本を開いた。
書庫から持って来た『宝飾品図鑑』という本だ。
モニカが指にしていた指輪……、宝石ではない鈍い光の赤い石がはめ込まれた独特なデザインの物だった。あの指輪がどういったところで作られたものなのかがもしわかれば、何かの参考になるかもしれない。そう考えて、部屋にいる時間を使って僕も調べるようにしている。
ページをめくり、じっくりと描かれた絵と記憶の中の指輪のデザインを重ね合わせる。
これも違うな、これも……。
そうやってページをめくっていくうち、僕は1つのデザイン図に目を止めた。
この……植物の蔓が絡んだようなデザイン……似ていないか?
説明を読むと、『植物を模したデザインの装飾具が放浪民の間でよく見られる』と書いてあった。
はぁ、とため息を吐く。
だから……何だ。そのそも占い師というのは、放浪民がやっていることがほとんどだ。
だから、彼らが持っている指輪のデザインが放浪民の間でよく見られると言っても……。
そこで僕はふと、考え込んだ。
放浪民……、確かリアム王子の母親は……貴族などではなく、放浪民出身だったと聞くが……。
そもそもルイーズとリアム王子はもともと接点がなかったはずなのに、いきなり婚約話を持ち掛けるというのは急すぎるし……。ルイーズとの婚約を破棄させるために、モニカにその指輪を渡した……なんてことは。
僕はその考えを振り払うように頭を振った。
いや、それだけで、留学に来ている隣国の王子を疑うことは、行きすぎだ。
それに、もしリアム王子がそんな指輪を持っていたのだとすれば、自分でその指輪の力をルイーズに使った方が早いじゃないか。
そう考えながらも、頭によぎったその考えを払拭できないでいた。
――1人でゆっくりと考える時間ができると、なおさらルイーズのことが頭に浮かんだ。
どうして僕は。
そんな問いかけは無意味とわかっていても、何度も自分に問いかけた。
「ルイーズは……、どうしてるか何か聞いているか?」
朝、身支度に部屋を訪れた侍従にそう聞くと、彼は「いえ、特には」と首を振った。
「本当に、何も聞いていない?」
しつこくしてしまっていると思いながらも、重ねて聞いた。
侍従は言いにくそうに口をつぐんで、回答しなかった。
「何か聞いていたら、教えて欲しい」
主人から3回も聞かれれば、答えざるおえないのがわかっていて、そう聞いてしまった。
「ルイーズ様に……リアム王子が婚約の申し出をしているとか……、一緒にいらっしゃる姿をよくお見かけすると聞いています」
彼は僕の服にブラシをかけながら、重たい口を開いた。
リアム王子……、僕がルイーズを学園のホールで問い詰めた時に、間に入って彼女を助けたのは彼だったな……。
未だにあの時のことをはっきり思い出そうとすると頭痛がする。
僕は頭を押さえて俯いた。
「リアム様、大丈夫ですか!?」
侍従が慌てたように背中を支えた。
「ああ、……問題ない。教えてくれて、ありがとう」
そう答えて、彼を下がらせると、一人椅子に座って頭を抱えた。
僕とルイーズの婚約は、ルイーズの父親からの強い申し出もあり、正式に白紙に戻された。だから、彼女に誰が婚約の話をしようが自由で、元婚約者の僕が立ち入れる話ではない。
「仕方ない……、自分のせいだ……」
僕は頭を抱えたままソファに寄り掛かった。
モニカが僕の心を操っていたという……魔法の指輪……、それを彼女に渡したという占い師というのを父上に捜してもらっているが、未だに手がかり一つない。モニカは友人から良く当たる占い師がいると言われて城下町へ行ったと言っていた。今のところ、その占い師に占ってもらったというのは、その友人とモニカ、それから平民クラスに通うモニカの別の友人の数人だった。
……つまり、学園の生徒に集中して声をかけている……?
「学園の関係者……なのか?」
僕は立ち上がって部屋を歩いて回った。
何のためにモニカにその指輪を渡したんだ……。
僕とルイーズの婚約破棄を狙っていた?
それで誰か得をする人間はいるか?
そのままモニカと僕が結婚などすることになっていれば、例えば商会の人間などは得をするかもしれないが……。
部屋を何度かぐるぐると回った後、机に座ると置きっぱなしの本を開いた。
書庫から持って来た『宝飾品図鑑』という本だ。
モニカが指にしていた指輪……、宝石ではない鈍い光の赤い石がはめ込まれた独特なデザインの物だった。あの指輪がどういったところで作られたものなのかがもしわかれば、何かの参考になるかもしれない。そう考えて、部屋にいる時間を使って僕も調べるようにしている。
ページをめくり、じっくりと描かれた絵と記憶の中の指輪のデザインを重ね合わせる。
これも違うな、これも……。
そうやってページをめくっていくうち、僕は1つのデザイン図に目を止めた。
この……植物の蔓が絡んだようなデザイン……似ていないか?
説明を読むと、『植物を模したデザインの装飾具が放浪民の間でよく見られる』と書いてあった。
はぁ、とため息を吐く。
だから……何だ。そのそも占い師というのは、放浪民がやっていることがほとんどだ。
だから、彼らが持っている指輪のデザインが放浪民の間でよく見られると言っても……。
そこで僕はふと、考え込んだ。
放浪民……、確かリアム王子の母親は……貴族などではなく、放浪民出身だったと聞くが……。
そもそもルイーズとリアム王子はもともと接点がなかったはずなのに、いきなり婚約話を持ち掛けるというのは急すぎるし……。ルイーズとの婚約を破棄させるために、モニカにその指輪を渡した……なんてことは。
僕はその考えを振り払うように頭を振った。
いや、それだけで、留学に来ている隣国の王子を疑うことは、行きすぎだ。
それに、もしリアム王子がそんな指輪を持っていたのだとすれば、自分でその指輪の力をルイーズに使った方が早いじゃないか。
そう考えながらも、頭によぎったその考えを払拭できないでいた。
22
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。
かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。
謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇!
※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
婚約破棄された公爵令嬢ですが、王太子を破滅させたあと静かに幸せになります
ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エレナは、
誕生日の舞踏会で突然、婚約破棄を宣言される。
「地味で役に立たない」と嘲笑され、
平民の少女を新たな婚約者に選ぶ王太子。
家族にも見放され、エレナは王都を追われることに――。
しかし彼女は、ただの“癒しの令嬢”ではなかった。
静かに力を蓄え、事実と証拠だけで王太子の虚飾を暴き、
自らの手で破滅へと導いていく。
復讐の果てに選んだのは、
誰かに与えられる地位でも、名誉でもない。
自分で選び取る、穏やかな幸せ。
これは、
婚約破棄された公爵令嬢が
王太子を終わらせたあと、
本当の人生を歩き出す物語。
-
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、
冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまう
リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、
悪役令嬢として断罪された少女が、
「誰かの物語の脇役」ではなく、
自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、
彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
四の五の言わず離婚届にサインをしてくれません?
白雲八鈴
恋愛
アルディーラ公爵夫人であるミレーネは、他の人からみれば羨ましいと思える立場にいた。
王妹の母譲りの美人の顔立ち、公爵夫人として注目を集める立場、そして領地の運営は革命と言えるほど領地に潤いを与えていた。
だが、そんなミレーネの心の中にあるのは『早く離婚したい』だった。
順風満帆と言えるミレーネは何が不満なのか。その原因は何か。何故離婚できないのか。
そこから始まる物語である。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる