【完結】追放された元聖女は、冒険者として自由に生活します!

夏灯みかん

文字の大きさ
113 / 217
5.元聖女は自分のことを知る決心をしました。

第112話

しおりを挟む

「ライガ、ステファンっ――大丈夫!?」

 私は倒れこんでいる二人の近くに駆け寄った。

「――だ、いじょうぶ……だよ」

 ステファンは仰向けに倒れたまま小さい声で呟いた。
 ――ライガから返事はない。
 ライガは銀髪の人間の姿に戻ってうつ伏せに倒れ込んでいた。狼の毛皮がなくなると、傷だらけなのがよく分かって、私は思わず口を押さえてから背中に恐る恐る触れた。

「ライガ?」

 動かないけど温かかった。
 ――良かった、生きてる――。
 私はその場にぺたんと座り込んだ。

「――獣人系は、麻痺、効きやすいから――、意識ないだけ、だいじょうぶ、レイラ、先にテオドールさん、治してくれ、ると……」

 後ろからステファンの声が聞こえて、私は頷くと、階段にもたれかかるように寄り掛かっているテオドールさんのもとに行って、麻痺を解いた。

「――ありがとうございます。ナターシャ達もお願いします」
 
 テオドールさんはゆっくり立ち上がると、そう言い残して、石畳の上でライガと同じように人間の姿に戻って動かなくなっているベルリクさんのところへ駆け寄った。

「あっ、テオドールさん――ステファン、回復……」

 ステファンはライガに噛みつかれた肩から血がすっごい出てたから、早く治さないと……。

「すいません、後で! こいつを死なせるわけにいかないのでっ。レイラは麻痺の解除を!」

 テオドールさんはベルリクさんに触れると「生きてます」と息を吐いて、回復魔法をかけはじめた。
 
「――そいつが首謀者か?」
 
 サミュエルさんたち黒いローブの魔法使いさんたちがテオドールさんに確認する。
 テオドールさんは頷いた。

「ええ。こいつと、その後ろに倒れてる二人――連れて行けば十分でしょう」

 私はもう一度、頬を両手で叩いて立ち上がると、ナターシャさん、ノアくんともう一人の男の子、ステファン、ライガの麻痺を解いた。

「いや……、こんな痛いの……久しぶりだ……」

 ステファンは苦笑しながら血で真っ赤に染まった自分の肩に手を当てて、魔法で傷口を塞いだ。

「だ、大丈夫?」

「――これくらい、血止めれば、別に大丈夫だよ」

 ステファンは笑って立ち上がると、地面に横たわったままのライガに近づいて、回復魔法をかけた。

「ったく、痛かったじゃないか」

 麻痺は解除したはずなのに、ライガは意識を失って倒れたままだ。

「――――ライガ、も大丈夫?」

「大丈夫、大丈夫。麻痺が効きすぎただけだろ、すぐ元に戻るよ」

 ステファンはライガの腕を自分の肩に回して、身体を持ち上げようとして、「痛っ」と声を上げてうずくまった。塞いだはずの傷口がまた開きかけてる。
 その様子を見ていたテオドールさんが慌てて駆けてくる。

「――ステファン、ライガは私が運びますから! 傷口もちょっと待ってください、今、回復してあげますからね。順番が遅くなってすいません」

 ステファンは一瞬困惑したような顔をして、それから笑顔で首を振った。

「いえ――、自分で回復できますから――、テオドールさんも回復魔法そんなに使って大丈夫で」

「黙って回復されときな!」

 ナターシャさんの鋭い声がステファンの言葉を遮る。
 
「――ありがとう、ステファン、アンタが割り込まなかったら大事な首謀者が死んでたよ。アタシ――、冷静じゃなくなってて、何でか、止められなかったから――。アンタ連れてきて正解だったよ、ほんと、頼りになる」

 「だからさ」とナターシャさんはステファンの肩を叩いた。

「アンタもアタシたちを頼ってよ」

 ステファンは少し黙ってから、ライガを地面に下ろして、テオドールさんに向き直った。

「――お願いします」

「――伊達に毎日子どもたち担いでないですからね。ライガくらい持てますよ」

 テオドールさんはステファンの傷口に手を当てながら笑った。
 
 ――ステファン、いつも余裕そうっていうか――自分で全部できるから、こういうふうに誰かに傷を治してもらったりとかしてるの初めて見るなぁ……。

 そんなふうに様子を見ていた私の髪をナターシャさんがくしゃっと撫でた。
 私ははっとして、顔を上げる。

「レイラもありがとう。おかげで全員、麻痺で大人しくさせられた」

「いえ……」

 私は複雑な思いで頷くと、視線を石畳に向けた。
 ――だって、ライガが暴れたのはきっと私のせいだし――。
 結果として、ステファンも無事で、ライガも無事で良かったけど――。
 そもそもライガは気絶したままだし……。目を覚ましても、またあんな風になったりしないよね……?

「テオ、ライガ頼んだ。あの熊男はアタシが担ぐ。仲間っぽい二人は――アンタたち担げる?」

 ナターシャさんは意識を失って倒れたままのベルリクさんを背中に担ぐと、サミュエルさんたち魔法使いさんたちに問いかけた。

「――――がんばるよ」

 苦笑したサミュエルさんが、獣人の人を担ごうとしたところに、ノアくんが割り込んだ。

「母さん、こいつは俺とそいつで持ってく。こいつ、俺のこと袋に詰めたやつだ!」

 魔法使いから獣人さんを奪い取るようにノアくんはその人を背中に担いだ。
 足の方をもう一人の獣人の男の子が持つ。

 ――小柄でも、力持ちだ。

「――アンタたち――助かるよ。……ノア、本当によく、頑張ったね。格好良かったよ」

 ナターシャさんはノアくんの髪の毛もくしゃっと撫でて笑った。ノアくんはいつもみたいに言い返すことなく、瞳に涙を溜めて頷いた。

 それからナターシャさんは広場の隅で倒れている、司会をしてた狼の獣人さんを足で揺さぶった。「うぅ」と小さな声が漏れる。

「アタシたちは冒険者ギルドだ。アンタたちのボスはもらってくよ。罪状は獣人の子どもの誘拐だ。今回はこの3人だけで免じてあげるから、これ以上同じことはするんじゃないよ。殴り合いたいなら自分たちだけで勝手にやってな」

 それから私たちに呼びかけた。

「このまま、さっさと森を出よう」

 それから、サミュエルさんに低い声で囁いた。

「――この熊男、レイヴィス商会と繋がってるって言ってた」

「――レイヴィス商会!? あの?」

 サミュエルさんはあんぐり口を開けて、呟いた。
 『レイヴィス』――ライガとベルリクさんが戦ってる最中に言っていた人の名前だ。

「――裏社会で有名な、密売人だよ。獣人やら何やら手広く取り扱ってて。ここ数年は魔物や魔術素材を高額で違法に売りさばいててる。魔術師ギルドにとってもお尋ね者なんだよ。——ライガを売ってた奴でもある」

 私が首を傾げているとステファンが補足してくれた。

「大手柄になるよ、ナターシャ……」

 サミュエルさんはそう呟いた。
しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

転生幼女は追放先で総愛され生活を満喫中。前世で私を虐げていた姉が異世界から召喚されたので、聖女見習いは不要のようです。

桜城恋詠
ファンタジー
 聖女見習いのロルティ(6)は、五月雨瑠衣としての前世の記憶を思い出す。  異世界から召喚された聖女が、自身を虐げてきた前世の姉だと気づいたからだ。  彼女は神官に聖女は2人もいらないと教会から追放。  迷いの森に捨てられるが――そこで重傷のアンゴラウサギと生き別れた実父に出会う。 「絶対、誰にも渡さない」 「君を深く愛している」 「あなたは私の、最愛の娘よ」  公爵家の娘になった幼子は腹違いの兄と血の繋がった父と母、2匹のもふもふにたくさんの愛を注がれて暮らす。  そんな中、養父や前世の姉から命を奪われそうになって……?  命乞いをしたって、もう遅い。  あなたたちは絶対に、許さないんだから! ☆ ☆ ☆ ★ベリーズカフェ(別タイトル)・小説家になろう(同タイトル)掲載した作品を加筆修正したものになります。 こちらはトゥルーエンドとなり、内容が異なります。 ※9/28 誤字修正

二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ
ファンタジー
「ディーナ。お前には今日で、俺たちのパーティーを抜けてもらう。異論は受け付けない」  勇者ラジアスはそう言い、私をパーティーから追放した。……異論がないわけではなかったが、もうずっと前に僧侶と戦士がパーティーを離脱し、必死になって彼らの抜けた穴を埋めていた私としては、自分から頭を下げてまでパーティーに残りたいとは思わなかった。  ほとんど喧嘩別れのような形で勇者パーティーを脱退した私は、故郷には帰らず、戦闘もこなせる武闘派聖女としての力を活かし、賞金首狩りをして生活費を稼いでいた。  そんなある日のこと。  何気なく見た新聞の一面に、驚くべき記事が載っていた。 『勇者パーティー、またも敗走! 魔王軍四天王の前に、なすすべなし!』  どうやら、私がいなくなった後の勇者パーティーは、うまく機能していないらしい。最新の回復職である『ヒーラー』を仲間に加えるって言ってたから、心配ないと思ってたのに。  ……あれ、もしかして『ヒーラー』って、完全に回復に特化した職業で、聖女みたいに、防御の結界を張ることはできないのかしら?  私がその可能性に思い至った頃。  勇者ラジアスもまた、自分の判断が間違っていたことに気がついた。  そして勇者ラジアスは、再び私の前に姿を現したのだった……

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

追放された魔女は、実は聖女でした。聖なる加護がなくなった国は、もうおしまいのようです【第一部完】

小平ニコ
ファンタジー
人里離れた森の奥で、ずっと魔法の研究をしていたラディアは、ある日突然、軍隊を率いてやって来た王太子デルロックに『邪悪な魔女』呼ばわりされ、国を追放される。 魔法の天才であるラディアは、その気になれば軍隊を蹴散らすこともできたが、争いを好まず、物や場所にまったく執着しない性格なので、素直に国を出て、『せっかくだから』と、旅をすることにした。 『邪悪な魔女』を追い払い、国民たちから喝采を浴びるデルロックだったが、彼は知らなかった。魔女だと思っていたラディアが、本人も気づかぬうちに、災いから国を守っていた聖女であることを……

【完結】海外在住だったので、異世界転移なんてなんともありません

ソニエッタ
ファンタジー
言葉が通じない? それ、日常でした。 文化が違う? 慣れてます。 命の危機? まあ、それはちょっと驚きましたけど。 NGO調整員として、砂漠の難民キャンプから、宗教対立がくすぶる交渉の現場まで――。 いろんな修羅場をくぐってきた私が、今度は魔族の村に“神託の者”として召喚されました。 スーツケース一つで、どこにでも行ける体質なんです。 今回の目的地が、たまたま魔王のいる世界だっただけ。 「聖剣? 魔法? それよりまず、水と食糧と、宗教的禁忌の確認ですね」 ちょっとズレてて、でもやたらと現場慣れしてる。 そんな“救世主”、エミリの異世界ロジカル生活、はじまります。

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

婚約破棄された公爵令嬢は冤罪で地下牢へ、前世の記憶を思い出したので、スキル引きこもりを使って王子たちに復讐します!

山田 バルス
ファンタジー
王宮大広間は春の祝宴で黄金色に輝き、各地の貴族たちの笑い声と音楽で満ちていた。しかしその中心で、空気を切り裂くように響いたのは、第1王子アルベルトの声だった。 「ローゼ・フォン・エルンスト! おまえとの婚約は、今日をもって破棄する!」 周囲の視線が一斉にローゼに注がれ、彼女は凍りついた。「……は?」唇からもれる言葉は震え、理解できないまま広間のざわめきが広がっていく。幼い頃から王子の隣で育ち、未来の王妃として教育を受けてきたローゼ――その誇り高き公爵令嬢が、今まさに公開の場で突き放されたのだ。 アルベルトは勝ち誇る笑みを浮かべ、隣に立つ淡いピンク髪の少女ミーアを差し置き、「おれはこの天使を選ぶ」と宣言した。ミーアは目を潤ませ、か細い声で応じる。取り巻きの貴族たちも次々にローゼの罪を指摘し、アーサーやマッスルといった証人が証言を加えることで、非難の声は広間を震わせた。 ローゼは必死に抗う。「わたしは何もしていない……」だが、王子の視線と群衆の圧力の前に言葉は届かない。アルベルトは公然と彼女を罪人扱いし、地下牢への収監を命じる。近衛兵に両腕を拘束され、引きずられるローゼ。広間には王子を讃える喝采と、哀れむ視線だけが残った。 その孤立無援の絶望の中で、ローゼの胸にかすかな光がともる。それは前世の記憶――ブラック企業で心身をすり減らし、引きこもりとなった過去の記憶だった。地下牢という絶望的な空間が、彼女の心に小さな希望を芽生えさせる。 そして――スキル《引きこもり》が発動する兆しを見せた。絶望の牢獄は、ローゼにとって新たな力を得る場となる。《マイルーム》が呼び出され、誰にも侵入されない自分だけの聖域が生まれる。泣き崩れる心に、未来への決意が灯る。ここから、ローゼの再起と逆転の物語が始まるのだった。

処理中です...