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8.元聖女はエルフの森に着きました。
第213話
「――魔族の隠れ里の、族長」
お父さんがその魔族のおじいさんに向かってそう呟きます。
――魔族の隠れ里の族長――、お母さんは族長の娘って言っていたから――、私のお祖父さん?
「お前は、マイグリン!」
魔族の族長さんがお父さんに目を留めて、さっきの泣きそうな声から一転、警戒したような声でお父さんの名前を叫びました。
「お前がなぜここに! ユリアを里から連れ出し、殺したお前がなぜ!!」
魔族の族長さんの叫び声とともに、大きな炎の柱が立ち上がって、近くにそびえたっていた悠久の大木を包みました。――あれって、エルフの族長さんの本体ですよね。大木が燃える中、族長さんに操られていたエルフの人たちは皆頭を抱えるように地面に座り込みます。
火の粉が舞う中、お父さんが叫び返します。
「違う! ユリアを殺したのはお前たち自身だ……。レイラを産んで、弱っているところにお前たちの追っ手が来た――お前たちは俺を殺そうとし、俺を助けるためにユリアがその追っ手を殺した……、それまで彼女は誰も殺したことなどなかったのに」
「何を言うか!!」
魔族の隠れ里の族長――私のお祖父さんの声とともに火はどんどん森の中を広がっていきます。怒りとか恨みとかそんな気持ちを全部巻き取るように。
――さっき炎と竜巻を鎮めたばかりなのに、また火が――。
頭ががんがんと痛くなりました。
何度鎮めたって、また争いごとが、何度も何度も起こって終わりが見えないです……。
お父さんが怒りのこもった声で応じます。
「ユリアがレイラに魔族の隠れ里の入り口を示す石を託したのは……、いつか、魔族の家族と会える日が来ると信じていたからだ。それなのにあんた達は……あんたたちのせいでユリアは死んだんだ!」
お祖父さんは私を見つめました。
「レイラ、レイラというのか……私の孫娘」
そして、語り掛けるように言葉を続けます。
「レイラ、魔族は滅びなくてはいけない……。私たちは人を、他種族を喰らい、恨みを集め、どこにいても追われる身になってしまった。これ以上家族を他の者から奪われないためには、隠れ、ひっそりと消えていくのが一番だ。一緒に隠れ里へ帰ろう」
「レイラ! 話を聞く必要はない!」
――お父さんに言われなくたって、話なんか聞きませんよ!
そもそも、この人が私のお祖父さんだとしても、今会ったばかりの人に、なんで、いろいろ言われなきゃいけないんですか。私はお祖父さんに向かって叫びました。
「私の生き方を勝手に決めないでください! 私は、冒険者になったんです。これからも自分の意思で自分の生き方を決めていきます!!!」
大司教様も、このお祖父さんもどうして私の生き方に口を出してくるんでしょう。
私は、自分自身で、自分の生き方を決めますよ!
私のこれからは、私のものです!
再度手を組み、森を包む炎の海が鎮まるように祈りました。
――目を開けると、炎で半分が焼かれた悠久の大木からエルフの族長さんがふらふらと出てきました。魔族の人たちは驚いたように私を見つめています。
「レイラ――魔族の血を引くお前が祈りの力を使ったのか――?」
呆然と呟くお祖父さんの前に立つと、私は頭を下げました。
「はじめまして。レイラです。あなたは、私のお祖父さんで、いいんですよね」
ばたばたばたばたみんな揉めていて、——挨拶だって、まだきちんとできていませんでしたもんね。
「——そう、そうだ」
「私は、祈りの力が使えます。——キアーラという国の大神殿で、聖女の役職も務めていました」
「聖女——? キアーラとは、光の女神の神官たちの国か?」
お祖父さんは目を見開きました。
キアーラって、そんな昔からある国なんですかね。
まあ、それは置いておいて。
「私は、お父さんやお母さんと離れ離れになって、売られた結果、長い間ずっと狭い部屋で一人ぼっちで美味しい物も食べられないし可愛い物も持てないし、延々祈りをすることになってしまったんですよ」
魔族の人がお父さんとお母さんを追いかけて、エルフの里の人がお父さんを助けてくれなかった結果ですよね。何だか話していたら悲しいのと怒りで涙が出てきました。
「あなたたちがお父さんやお母さんを追いかけまわさず、エルフの里の人が助けてくれたら、私、お父さんと一緒に、もしかしたらお母さんも一緒にいられたかもしれないのに」
「——レイ、ラ」
お祖父さんは、困惑したような表情で私を見つめました。
「とは言っても、もう、それはそれで、変えようがないですし、これ以上文句を言うつもりはありません。それで何か変わるわけじゃないですから」
言いたいことはたくさんありますけれど。
「——確かに、私には魔族の血が流れているかもしれません。だけど、それが何ですか? 私はステファンやライガ……冒険者ギルドの皆ともお友達になれました。お父さんとも会って、お父さんもお母さんも私のことを大事に思っていてくれたこともわかりました。魔族の血があっても私は私です。今私はそれなりに幸せです」
私はお祖父さんとエルフの族長さんを見つめて強く言いました。
「これ以上、私を、すごく昔の、私が知らない争いごとに巻き込まないでください! 私のこれからの邪魔をしないで!」
お父さんがその魔族のおじいさんに向かってそう呟きます。
――魔族の隠れ里の族長――、お母さんは族長の娘って言っていたから――、私のお祖父さん?
「お前は、マイグリン!」
魔族の族長さんがお父さんに目を留めて、さっきの泣きそうな声から一転、警戒したような声でお父さんの名前を叫びました。
「お前がなぜここに! ユリアを里から連れ出し、殺したお前がなぜ!!」
魔族の族長さんの叫び声とともに、大きな炎の柱が立ち上がって、近くにそびえたっていた悠久の大木を包みました。――あれって、エルフの族長さんの本体ですよね。大木が燃える中、族長さんに操られていたエルフの人たちは皆頭を抱えるように地面に座り込みます。
火の粉が舞う中、お父さんが叫び返します。
「違う! ユリアを殺したのはお前たち自身だ……。レイラを産んで、弱っているところにお前たちの追っ手が来た――お前たちは俺を殺そうとし、俺を助けるためにユリアがその追っ手を殺した……、それまで彼女は誰も殺したことなどなかったのに」
「何を言うか!!」
魔族の隠れ里の族長――私のお祖父さんの声とともに火はどんどん森の中を広がっていきます。怒りとか恨みとかそんな気持ちを全部巻き取るように。
――さっき炎と竜巻を鎮めたばかりなのに、また火が――。
頭ががんがんと痛くなりました。
何度鎮めたって、また争いごとが、何度も何度も起こって終わりが見えないです……。
お父さんが怒りのこもった声で応じます。
「ユリアがレイラに魔族の隠れ里の入り口を示す石を託したのは……、いつか、魔族の家族と会える日が来ると信じていたからだ。それなのにあんた達は……あんたたちのせいでユリアは死んだんだ!」
お祖父さんは私を見つめました。
「レイラ、レイラというのか……私の孫娘」
そして、語り掛けるように言葉を続けます。
「レイラ、魔族は滅びなくてはいけない……。私たちは人を、他種族を喰らい、恨みを集め、どこにいても追われる身になってしまった。これ以上家族を他の者から奪われないためには、隠れ、ひっそりと消えていくのが一番だ。一緒に隠れ里へ帰ろう」
「レイラ! 話を聞く必要はない!」
――お父さんに言われなくたって、話なんか聞きませんよ!
そもそも、この人が私のお祖父さんだとしても、今会ったばかりの人に、なんで、いろいろ言われなきゃいけないんですか。私はお祖父さんに向かって叫びました。
「私の生き方を勝手に決めないでください! 私は、冒険者になったんです。これからも自分の意思で自分の生き方を決めていきます!!!」
大司教様も、このお祖父さんもどうして私の生き方に口を出してくるんでしょう。
私は、自分自身で、自分の生き方を決めますよ!
私のこれからは、私のものです!
再度手を組み、森を包む炎の海が鎮まるように祈りました。
――目を開けると、炎で半分が焼かれた悠久の大木からエルフの族長さんがふらふらと出てきました。魔族の人たちは驚いたように私を見つめています。
「レイラ――魔族の血を引くお前が祈りの力を使ったのか――?」
呆然と呟くお祖父さんの前に立つと、私は頭を下げました。
「はじめまして。レイラです。あなたは、私のお祖父さんで、いいんですよね」
ばたばたばたばたみんな揉めていて、——挨拶だって、まだきちんとできていませんでしたもんね。
「——そう、そうだ」
「私は、祈りの力が使えます。——キアーラという国の大神殿で、聖女の役職も務めていました」
「聖女——? キアーラとは、光の女神の神官たちの国か?」
お祖父さんは目を見開きました。
キアーラって、そんな昔からある国なんですかね。
まあ、それは置いておいて。
「私は、お父さんやお母さんと離れ離れになって、売られた結果、長い間ずっと狭い部屋で一人ぼっちで美味しい物も食べられないし可愛い物も持てないし、延々祈りをすることになってしまったんですよ」
魔族の人がお父さんとお母さんを追いかけて、エルフの里の人がお父さんを助けてくれなかった結果ですよね。何だか話していたら悲しいのと怒りで涙が出てきました。
「あなたたちがお父さんやお母さんを追いかけまわさず、エルフの里の人が助けてくれたら、私、お父さんと一緒に、もしかしたらお母さんも一緒にいられたかもしれないのに」
「——レイ、ラ」
お祖父さんは、困惑したような表情で私を見つめました。
「とは言っても、もう、それはそれで、変えようがないですし、これ以上文句を言うつもりはありません。それで何か変わるわけじゃないですから」
言いたいことはたくさんありますけれど。
「——確かに、私には魔族の血が流れているかもしれません。だけど、それが何ですか? 私はステファンやライガ……冒険者ギルドの皆ともお友達になれました。お父さんとも会って、お父さんもお母さんも私のことを大事に思っていてくれたこともわかりました。魔族の血があっても私は私です。今私はそれなりに幸せです」
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