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28.誘い

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「王子……見えない……」

 私は呆然と呟いた。髪はぼさぼさだったし、髭は生えてるし、服もボロボロだし。私の知っている王子はツェペリのジョセフ様だけだけれど、ジョセフ様はいつもキラキラしてるようなイメージだわ。

「だよね。しかし、あいつは我が国ルーべニアの第三王子だ」

 レオは面白そうに言った。
 ……第三王子……って、アリスと婚約のお話が進んでるとかいうような人じゃなかったかしら。私は完全に固まった。

「大丈夫?」と顔を覗き込まれて、「……世間は狭いですね」と小声で返事をした。

「最初に聞いた時は俺もびっくりしたよ。弟弟子が王族なんて。ですますつけて話してたな最初は」

 私は手元の料理を一気に食べて心を落ち着けてから聞いた。

「――ルーべニアでは、王族の方も皆さんに混ざって一緒に修行をするんですね」

 随分と風通しが良いというか……気さくというか……。
 「いいや」とレオは首を振る。

「王族や貴族が魔法の訓練をしたい場合は、たいてい魔法使いを直接師として雇うことがほとんどだ。ライアンはちょっと特殊だよ。上の王子と母親が違うからか色々あって小さい頃にここに放り込まれたらしい」

「……そうなんですか」

 私は肘をついて、テーブルを見つめた。

「正式な魔法使いになるのって……、難しいんですね。ライアンが試験が大変って言ってましたけど。自分は魔力量がないから……とか。何ていうか……王子でも、そのあたり厳しいんですね……」

 公平というか何というか。

「――あいつはなぁ、実はすごいんだ。魔力量がないから、色んな魔法陣思いついて、それを補ってる。今までは魔法陣ってあまり使われてなかったんだ」

「そうなんですか」

「魔力があれば、そのまま魔法を発動させた方が早いし楽だからね。……だけど、魔法陣を使うと、魔力が少ない者でも、大きい効果の魔法が使える。……だけど、ここの上の魔法使いたちはあんまりそれを喜んでなくて、それに王族が正式な魔法使いになるのも嫌みたいでね。だから、ライアンを合格させたくないんだよ。だから試験で魔法陣禁止とかいろいろ厳しくしてて」
 
 レオはため息を吐いた。

「認定試験が受けれるのは3回まで。ライアンは2回落ちてるから、今回が最後だ。受かってくれればいいと思ってるけど」

「レオは……ライアンと仲が良いんですね」

 本気で心配しているようなその様子に思わず嬉しくなってそう言うと、彼は頭を掻いた。

「そうかな。――あいつの話ばっかりだな。ところでソフィア」

 レオは私に向き直ると、仕切り直しのような笑顔で言った。

「明日城下町まで出るんだけど、君も一緒に行かない?」
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