【完結】婚約破棄された公爵令嬢は山で修行中の魔法使い(隣国王子)と出会い、魔物を食べ、婚約しました。

夏芽みかん

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「城下町ですか……」

「そうそう。魔法薬の納品にね。ソフィアの師匠の調整がつくまで数日はかかるだろうし、暇だろう?」

 そう言われれば、それもそうだ。
 ここにいても、何をすればいいかもわからないし……。
 それに、できればお金を作っておきたいと思った。
 家から持って来たアクセサリー……追剥の人から取り返したものがいくつかあるんだったわ。城下町だったらそれをお金に換えられないかしら。
 食堂でご飯も食べてみたいし……。

「……お金を作りたいんですけど……、城下町で宝石なんかを換金できるところとか……知ってますか?」

「もちろん。案内するよ。じゃあ決まりだね」

 レオは爽やかに笑うと、「明日、早朝に出るから部屋まで迎えに行くよ」と言った。

 ***

 ――翌日。

「おはよう!」

 本当に早朝――日が昇る前くらいにレオが部屋をノックした。
 慌ててローブを着こみ、出迎えるとレオはローブじゃなくて普通の服装をしていた。

「これから馬車を出すよ。昼頃には城下町に着くはずだ」

 レオが馬車を動かすらしい。乗合馬車と違って一直線に行くから早いよ、と手綱を握りながら笑って言った。私はその隣に座らせてもらった。

 荷台には瓶詰めの薬がたくさん置いてある。ラベルにはレオの名前が印字してある。

「認定魔法使いになると、自分名義の薬なんかを売れるようになる。俺はもう何年も前に試験に通ってるから」

 得意げにそう言う彼に、私は別のことを聞いてみた。

「――黒いローブは着てないんですね」

 ライアンは始終黒ローブだったし、研究所の中ではみんな黒ローブだったから、ずっとあれを着ているものだと思ってたけれど。

「せっかく街に出るのに着ないよ。……しかも女の子と行くのに」

「そうなんですね。ライアンはずっと黒ローブしか着ていなかったから」

 山の中だからまぁ服装は気にしなくていいのかもしれないけど。
 黒ローブ一枚で通してたわね……。

「……あいつね、それしか持ってないからなぁ。恰好、気にしないんだよね。王子のくせに」

 レオは少し不服そうにそう言うと、私に言った。

「ソフィアも、街で服屋に寄るといいよ。服屋が並んでる通りもあるんだぜ。俺のツケで買えるし」

「服屋さん……寄りたいです」

 そう呟いた。山の中じゃ、私もずっとライアンに借りたズボン姿だったものね……。
 動きやすくてあれはあれで良かったけれど……。
 普通のドレス姿もライアンに見せたいかも……と思った自分に気がついて、私はため息を吐いた。

 アリスとの婚約話は進んでいるのかしら。
 山籠もりしていたくらいだし、まだ直接顔合わせなんかはしていないだろうけど。
 私、ローレンス家の人間だって言ってしまったし、さすがに姉だって気づくわよね。
 やっぱり、ライアンもアリスを見たら私と比べて綺麗だなって思うんでしょうね……。
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