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おばあちゃんとおじいちゃん 夫婦ってなんだ?
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おじいちゃんが要介護4に認定された。
自力での生活が困難で、トイレや食事、着替えさえも家族の支えが必要。
成人男性を家族でお風呂に入れるのは到底無理でデイサービスにお願いする。
デイサービスに行く日は朝から忙しい。
朝食、薬、着替えと持ち物チェック。
おじいちゃんの着替えをおばあちゃんが手伝う。
今日も今日とておばあちゃんの怒鳴り声。
「早くして!靴下くらい自分で履けるでしょ!」
いやいや無理でしょ。車椅子だし体は自力で起こせないし。
「いい加減にしてよ!自分の事くらいちゃんとやって!」
いやいや駄目でしょ。
要介護4だよ。
おばあちゃんって人の心無いの?
おじいちゃんは無言で罵声を受け止めている。
おじいちゃんは苦労人だ。
家族を支える為ずっと働きづくめだった。
船大工から始まり型枠大工を75歳迄、危険と隣り合わせの仕事をしてきた。
働く事しか知らないような人。
反対におばあちゃんは専業主婦の苦労知らず。
働いた事も無い。
世の中の専業主婦の全てが苦労知らずと言っているわけでは無い。我が家のおばあちゃん限定だ。
おじいちゃんが稼いだお金で趣味の編み物教室へ毎日出かけ、休日には友人と旅行やランチに忙しい。
おじいちゃんは何も言わない。
ひたすら働いた。
ある時おじいちゃんの気晴らし兼ねて温泉旅行へ親戚一同集まって行こうと従兄弟から誘いがきた。
おじいちゃんは無類のお風呂好きで、とても喜んだ。
しかしそこでおばあちゃんの心無い一言。
「あんた足が悪くてちゃんと歩けないのに温泉なんか行って転んだらどうするの!皆に迷惑かかるでしょ!」
は?何言ってんだ?このばばぁ・・・
「ちょっとちょっとおばあちゃん」
耐えきれず声をかける。
「何?」
振り返ったおばあちゃんの眉間には三本の縦ジワ。
「それは大丈夫でしょ?息子も一緒だし・・・」
「じゃあ、転んだらどうするの!?危ないからおじいちゃんはやめとけばいいのに!」
え?
おじいちゃんはやめとけばいいのに?
って言った?
は?
自分は行くって事?
「えっと・・・おじいちゃんは、ってどうゆうこと?」
「だから、悪いけどおじいちゃんはお留守番してもらって、折角親戚が呼んでくれたんだから私だけでもしょうがないから行ってくるって事」
開いた口がふさがらない。
「おばあさんの好きにすればええ・・・」
おじいちゃんが珍しく放った一言に諦めが見えた。
おじいちゃんは何でおばあちゃんと長年連れ添ってるの?
こんな人に?
思いやりの欠片もない人に?
わからない・・・。
夫婦の事は夫婦にしかわからない絆があるのか?
っていうか、わかりたくも無い。
ある日ポツリとおじいちゃんが言った。
「あんたに俺の面倒を最後迄みて欲しいのぉ・・・」
おじいちゃんが夜中オネショをして、取り換えている最中の出来事。
おばあちゃんはオネショに怒って何もしない。
「朝迄ほっとけばいい!どうせまた何回もオネショするんだから!」
と言い別室に移動し寝てしまった。
「わかったよ。大丈夫だからいつでもこの携帯で呼んでね」
「ありがとうねぇありがとうねぇ」
最初で最後のおじいちゃんのお願いだった。
おじいちゃんの死期が近付いていた。
誰の眼にも明らかだ。
病室で家族皆順番におじいちゃんの手を握っておじいちゃんを呼ぶ。
「おじいちゃんおじいちゃん頑張って・・・」
ふと、おじいちゃんのベッドの真横に座っていたおばあちゃんが一言呟いた。
「ねぇねぇ、おじいちゃんもう長くないぞ、ねぇ?もう死ぬねぇ」
おばあちゃんのは得意気に微笑えみ、言った。
寄り添っていた息子の怒鳴り声が病棟に鳴り響く。
おばあちゃんはそれをぽかんと不思議そうに聞いていた。
「おじいちゃん・・・また一緒に遊んで」
孫娘がおじいちゃんの耳元で呟いた。
自力での生活が困難で、トイレや食事、着替えさえも家族の支えが必要。
成人男性を家族でお風呂に入れるのは到底無理でデイサービスにお願いする。
デイサービスに行く日は朝から忙しい。
朝食、薬、着替えと持ち物チェック。
おじいちゃんの着替えをおばあちゃんが手伝う。
今日も今日とておばあちゃんの怒鳴り声。
「早くして!靴下くらい自分で履けるでしょ!」
いやいや無理でしょ。車椅子だし体は自力で起こせないし。
「いい加減にしてよ!自分の事くらいちゃんとやって!」
いやいや駄目でしょ。
要介護4だよ。
おばあちゃんって人の心無いの?
おじいちゃんは無言で罵声を受け止めている。
おじいちゃんは苦労人だ。
家族を支える為ずっと働きづくめだった。
船大工から始まり型枠大工を75歳迄、危険と隣り合わせの仕事をしてきた。
働く事しか知らないような人。
反対におばあちゃんは専業主婦の苦労知らず。
働いた事も無い。
世の中の専業主婦の全てが苦労知らずと言っているわけでは無い。我が家のおばあちゃん限定だ。
おじいちゃんが稼いだお金で趣味の編み物教室へ毎日出かけ、休日には友人と旅行やランチに忙しい。
おじいちゃんは何も言わない。
ひたすら働いた。
ある時おじいちゃんの気晴らし兼ねて温泉旅行へ親戚一同集まって行こうと従兄弟から誘いがきた。
おじいちゃんは無類のお風呂好きで、とても喜んだ。
しかしそこでおばあちゃんの心無い一言。
「あんた足が悪くてちゃんと歩けないのに温泉なんか行って転んだらどうするの!皆に迷惑かかるでしょ!」
は?何言ってんだ?このばばぁ・・・
「ちょっとちょっとおばあちゃん」
耐えきれず声をかける。
「何?」
振り返ったおばあちゃんの眉間には三本の縦ジワ。
「それは大丈夫でしょ?息子も一緒だし・・・」
「じゃあ、転んだらどうするの!?危ないからおじいちゃんはやめとけばいいのに!」
え?
おじいちゃんはやめとけばいいのに?
って言った?
は?
自分は行くって事?
「えっと・・・おじいちゃんは、ってどうゆうこと?」
「だから、悪いけどおじいちゃんはお留守番してもらって、折角親戚が呼んでくれたんだから私だけでもしょうがないから行ってくるって事」
開いた口がふさがらない。
「おばあさんの好きにすればええ・・・」
おじいちゃんが珍しく放った一言に諦めが見えた。
おじいちゃんは何でおばあちゃんと長年連れ添ってるの?
こんな人に?
思いやりの欠片もない人に?
わからない・・・。
夫婦の事は夫婦にしかわからない絆があるのか?
っていうか、わかりたくも無い。
ある日ポツリとおじいちゃんが言った。
「あんたに俺の面倒を最後迄みて欲しいのぉ・・・」
おじいちゃんが夜中オネショをして、取り換えている最中の出来事。
おばあちゃんはオネショに怒って何もしない。
「朝迄ほっとけばいい!どうせまた何回もオネショするんだから!」
と言い別室に移動し寝てしまった。
「わかったよ。大丈夫だからいつでもこの携帯で呼んでね」
「ありがとうねぇありがとうねぇ」
最初で最後のおじいちゃんのお願いだった。
おじいちゃんの死期が近付いていた。
誰の眼にも明らかだ。
病室で家族皆順番におじいちゃんの手を握っておじいちゃんを呼ぶ。
「おじいちゃんおじいちゃん頑張って・・・」
ふと、おじいちゃんのベッドの真横に座っていたおばあちゃんが一言呟いた。
「ねぇねぇ、おじいちゃんもう長くないぞ、ねぇ?もう死ぬねぇ」
おばあちゃんのは得意気に微笑えみ、言った。
寄り添っていた息子の怒鳴り声が病棟に鳴り響く。
おばあちゃんはそれをぽかんと不思議そうに聞いていた。
「おじいちゃん・・・また一緒に遊んで」
孫娘がおじいちゃんの耳元で呟いた。
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