男装王女と、冷酷皇子の攻防 設定集

𝑹𝑼𝑲𝑨

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エーテル側妃の話

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ーーー決して幸せとは言えない











公爵家の唯一の娘として生きた十数年

一国の側妃として生きて十数年






周りからかけられる過度な期待

応え続けなくてはいけない立場

全てを完璧にこなさなければならない環境







''失敗''なんてことは許されない

常に成功することを前提に生きていかなくてはいけない




さもなくば_____________きっと……………………見捨てられてしまうから










ーーーーーーー











「まぁエーテル様。まだ幼いのにも関わらず、もうこんなにも難しい本を読んでいらっしゃるの?」


あの言葉を言ったのは誰だったか





「エーテル公女様はやはり天才だ…!」


「流石、神の使徒と呼ばれるローゼンバルト公爵のご息女なだけありますね!」







………あぁ五月蝿い



…………好きで読んでいると思っているの?

貴方達が私に期待してくるから見ている・・・・のよ


どちらかと言うと、こんなつまらない本より恋愛小説の方が好みなの











でも貴方達は私がそれらを読むのを許さないでしょう?



……………………









「エーテル。お前はローゼンバルト家の誇りだ。常に気高く生きなさい」


「そうよエーテル。自分勝手に生きるなんて許されないの。常に人々の模範でありなさい。全てはローゼンバルト家の為に生きるのよ。自分の幸せを考えてはいけないわ」


「エーテルお嬢様が正しい道を歩まれることをわたくし共は望んでおります。全てはローゼンバルト家の為に」











久しぶりに口をきいたかと思えばまたその話ですか?



『ローゼンバルト家の為に』

という言葉を一体何度聞かされたことでしょう











私の幸せは願って頂けないのですか?




……………………







「ローゼンバルト公爵家令嬢…………いや、エーテル嬢。どうか私の妃になってくれないだろうか」



「…………………………えぇ」














あの選択は周りへ復讐するためだった









唯一の後継者


誰かを婿として迎えなければならなかった身で、

私は一国の王の側妃になった




そうすれば公爵家の権威を落とすことが出来たから




公爵家の唯一の娘があろうことか側妃の一人になるだなんて

とんだ笑い話でしょう?














でも今思い返せば、どれだけ浅はかな考えだったかよく分かる




復讐は出来た

満足もした



でも幸せになれたのかと問われたら、____





……………………









子供が産まれた







可愛い双子だった



クシアとイアン


美しい黒みがかった銀髪を持った娘と、美しい黒髪を持った息子




黒髪はローゼンバルト家の象徴だったが、今更気にしない


2人はローゼンバルトの血筋を持っているのか疑うほど心優しい子達だった






クシアは心優しくて、色々なことに関心を持つ子だった
幼い頃から城外の様子を気にしていたくらいだ


ある程度大きくなると、慈善活動など王女として出来ることをどんどんこなしていった



イアンは注意深く、思慮深い性格を持っていた

双子の姉であるクシアが行っていく事業を手伝って助言をしたり、姉の手が回らない所をしっかり支えていた







まだ周りの同年代の子供達は、遊び回って、悪いことをして、徐々に成長を重ねていた時期にも関わらず




彼らはそれ以上に大人びていた








彼らは私の自慢だった


愛する私の子供達






ようやく幸せになれたと感じていた



''これ以上の幸せはない''と







ーーーー










『今度はこの前得た利益で孤児院と、病院を建てようと思うの!』


『え』


『きーっと、気に入ってくれるわ!!』


『……父上がなんて言うか…………』


『別にお金はせびってないし。大丈夫でしょ』


『ふふ、いいじゃないの。孤児院はまだまだ足りないし、病院も必要だわ。陛下も許してくれるはずよ』




(……………幸せね。本当に穏やかだわ…………。穏やか過ぎて……)




ーー本当に穏やかで気持ちのいい日だった




『…………でも最近機嫌が悪いんだ。誰かを探してるみたいで…』


『ふぅ~ん』


『真面目に聞いてる、クシア?』


『この紅茶美味しいわ!孤児院に持って行きましょう』


『怒られても知らないからな』






バァン!






重厚な部屋の扉が突然開いて、優しいお茶会が中断する








『おいっ!なんだ、これは!!!!!!』


『『『へ、陛下!?』』』



(……………………嫌な予感がするわ)




『私がこうして働いている時に…………のうのうと茶を飲んでいるのか!!!!!』


『も、申し訳ありません、陛下。今すぐ片付けます。さぁあなた達早く片しなさい』


『は、はい…母上。』

『……分かりましたお母様』


(…………普段ならわざわざ別宮に来ることなどないというのに)












『おい、クシア』





心が凍ってしまったかと思った

人から出たとは思えない程の冷たい声

それが今、愛する娘に向けられている





『………如何致しましたか』


『お前………………ベゼル領の病院を勝手に改装したようだな?』






ベゼル領は国王の叔父、ナリ公爵家が管轄している地域だ


現当主ルストン・ナリ公爵により、不正な税の徴収が行われかなり治安が悪く貧困者が続出していることで有名だった



クシアは以前ベゼル領を訪れ、そこで見たあまりの酷い状態を嘆いて
孤児が行先を失わないよう孤児院を作らせたり
衛生環境を整えるために病院を積極的に建てていた



(陛下に不満を漏らされたのね)

自分の管理する土地に手を加えられたことが気に入らなかったのだろう

公爵ともあろう人が、小さな領地ひとつまとめられないのかと責められることを恐れたようだ






『…ナリ公爵に何度も連絡致しました』


『何度も連絡した…………だと?』


『あの病院は……衛生管理が整っておりませんでした。死者も出ているとか………ですので、わたくしが自費で対応したまでです』







『ナリ公爵は私の叔父だぞ!!!!私の顔が丸つぶれではないか!!!』


『………関係ありません。人々を助けることに悪いことなどありますか?』


(あぁ…………ダメよ!!!!そんなことを言ってしまえば………!)




『…く、クシア!あぁ………申し訳ありません陛下。後でしっかりと言い聞かせておきます………。まだ小さく、前も後ろも分からぬ子供です。どうかご慈悲を………』






『クシア…前へ来なさい』


(あぁ……………お願い。叩かないで………)


国王の前では非力だった










グサッ




守れなかった






『がはっ………』









『………え?』



突然娘が地面に倒れた

突然のことで暫く受け入れられなかった




ただ今日もいつものように頬を叩かれるだけかと思っていたの



それが今どうだろう


愛する娘はドレスを真っ赤に染め上げ、悶え苦しんでいる




『く、クシアッ!!!!!!は、早く医者を……』



『土に埋めろ』


『お……………おどうざま…』


『…………な、なんてこと!!あぁクシア!!!』


『あの世で悔いるがいい』









ーーーーーーーー









「……………エーテル側妃様。クシア殿下ですが………王様の命により、この度王族の籍を外されることになりました。
お体も王族が代々入ることになっている墓地に入れられないそうです…………」


「………………そう」




…………………………………どうして


あの子は正しいことをした

あの子が行動を起こしたおかげで多くの人々が命を救われた




………どうして?








………私の人生では一体何が許されているのだろう





欲しいものは何でも手に入っていたはずなのに

皆から愛されていたはずなのに




いつも足りないと思うのは








きっと私が籠の中の鳥だったから




籠の中には令嬢として、国の妃として与えられたものが用意されている

自分でそれらを選ぶことが出来るけれど、

結局は用意されていない物は手に入れられないということ







自分の道を歩んでいたと思ったら、それも全て用意されていたのよ









今になって、自分が籠の中で、

全てを与えられている人生を送ってきていたことに気がつくなんて


愛する娘を失って気がつくなんて……………










…………………きっと、賢い娘は気づいていた

……愛するクシアは気づいていた




私たちに本当の・・・自由など、手に入らないということを





慈善活動をしていたのも、

あの子はきっと、自由に生きながらも・・・・・・・・・貧しい日々を送る者たちが単純に気になっていたんだわ






…………娘はもう戻っては来ない


あんなに近くにいたイアンも姉が亡くなって以来、疎遠になった




私には一体何が残るのかしら………










私は…………どうすれば………








ーーーーーーーーーー






「あの」



あぁ………そうだ

つい考え込んで、訪問者がいることを忘れていた

………話しかけられても答えはしないけれど





今日は新しい王室の子供が………

下から声がかかり視線をそちらへ向ける








同時に、
目を見開いた



呼吸も忘れた




目の前のこの少女は、
あまりにもクシアに似ていたから





この少女の髪色は白銀で、声も全く違うというのに






「突然の訪問………申し訳ありません。………その…侍従より………エーテル側妃様のご息女が以前第3王女の座を賜っていたと聞きまして……。…後から聞いてもご不快かと思いましたので、自らお伝えに参りまひ……ました。」







「……………わたけ………わたくし、この度第3王女の座を賜わりました、リリアーヌ・イノセンス・エピスィミアでふ…です。どうぞ良くしてくださると嬉しい……です。エーテル側妃様」









……………クシア


私の愛する娘




私のことを心配してくれていたというの?

お前を………貴女を失い、心を失っていた、この頼りない母を





イノセンス…………貴女はまた私の元に………無実・・を証明するためにやって来たのね









……………………………そう

…………………そうなのね





…………私は………






ーーーーー













「………………リリアーヌ王女様。その………エーテル側妃様は、心の病を患っておいでですので、お返事は頂けないかと………」


「…………………リリアーヌ」
「?!」





「はい」

「…………貴女の名はリリアーヌと言うのね」


「………そ、そうです」





「……………良い名だわ。…………………リリと呼んでいいかしら」

「勿論です」


「……………ふふっ…ありがとう、リリ。……………娘の……クシアのことは貴女は気にしなくていいのよ。不快に感じていないわ」


「それは………良かったです」




「ねぇリリ」


「はい」


「……………貴女…………私の養子にならない?」









今度は私が…………








「…………………………………………んえ?」


守ってあげるわ、リリアーヌ





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